総括
「大統領弾劾と米の中国投資制限」
ドル円=105-110、ユーロ円=116-121 、ユーロドル=1.07-1.12
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨2位、株価13位、ドル円相場膠着の理由」
今年のドル円相場が小動きなのは、やはり貿易収支によるものだ。去年は赤字で1.1兆円、今年も8月までで赤字の1.3兆円と金額が小さい。赤字にしろ、黒字にしろ大きい年は10兆円以上あるので、1兆円は小さく、相場を大きく動かすエネルギーにはならない。投機筋がたまに大きな金額を振っても、売ったら買う、買ったら売るので市場の需給には影響を与えない。やはり輸出入の売り切り、買い切りの取引が相場のトレンドを作る。だが1兆円は小さすぎる。その中でも上半期はいつも通り円高に振れた。下半期、取りあえず秋は円安に振れやすくなる。
さて日銀はマイナス金利の深堀を示唆しているというが、2016年の1月のマイナス金利導入と同じく、マイナス金利の深堀は円高要因となろう。日本は預金100に対して貸し出しは60の国。マイナス金利は預金者の可処分所得を減らし消費を抑制するの輸入も増えなくなってしまう。日銀が成功している点はマイナス金利ではなく、ETFやJリートの購入だ。ただこれは一部の人しか恩恵を被らない。
今週は短観の発表がある。景況感を示す業況判断指数(DI)の予想は、大企業製造業でプラス2と、前回6月短観から5ポイントの低下を見込む。出口の見えない米中貿易摩擦を背景に生産と輸出が一段と低下。円高も拍車を掛け、3期連続の悪化が予想されている。
*米ドル 「通貨3位、株価(NYダウ)11位、弾劾と中国投資制限」
株安を招く2つの材料が出てきた。一つはウクライナに関わる米大統領の弾劾調査が始まり、渦中の民主党のバイデン候補よりウオーレン候補の支持率が高まれば、ウオーレン候補は富裕層増税策など左派的な政策を掲げているだけに株式市場に悪影響を与えること、また米中貿易戦争での追加関税に加え、投資にも戦線を拡大してきたことがある。米政権当局者らは米投資家のポートフォリオ投資による中国への資金流入を制限する方法について協議し始めた。早速、NY市場での中国銘柄の株価が下がり始めた。FRBでの金融政策で追加緩和に異論が出始めた事、米イラン問題などがある中でさらに混乱を招きそうだ。
一方、中国は約1週間の国慶節休暇に入り米国の混乱を様子見することとなる。米中通商協議再開は来週再開するが、さすがに中国も投資制限については妥協しないだろう。株価に影響すれば世界的なリスク回避となる可能性がある。米国もよいクリスマスを迎えられなくなってしまう。今週は雇用統計や貿易収支に注目したい。
*ユーロ 「通貨9位、株価9位(DAX)、ドラギ総裁が手詰まり感を吐露」
ドラギECB総裁は、ユーロ圏経済は回復のめどが立っておらず、製造業の長引く低迷は経済全般に悪影響を及ぼしかねないという認識を示した。 総裁は「製造業の新規輸出受注など先行指標を含め、最近の統計は経済が目先持ち直す確信的な兆候を示しておらず、成長見通しのリスクバランスは依然、下向きに傾いている」と表明した。 域内経済の要である非製造業は足元、底堅い動きを続けているものの、輸出関連部門の不振といつまでも無関係でいられるわけではないとし「製造業の低迷が長引けば長引くほど、他の分野にも影響を及ぼすリスクは高まる」と語った。 ECBの金融政策に手詰まり感もうかがえる中で、ドラギ総裁は政府の財政政策が一段と大きな役割を果たすべきと指摘。米国の連邦予算のような欧州の財政統合が景気循環の円滑化を進める上で有益になると述べた。「ECBは孤立して機能しておらず、他の経済政策も重要となる。すなわち金融政策の効果を高め、補完するような一体的な経済戦略が必要だ」と強調した。
総裁が指摘するように、ユーロ圏9月景況感指数は約5年ぶり低水準、ドイツ経済研究所は3Qの独GDPは前期比0.2%減と予測、ユーロ圏9月総合PMIは50.4に低下など弱い材料が続いた。今週は消費者物価の発表がある。
*ポンド 「通貨6位、株価12位、まとまらない英国。英中銀は利下げ示唆」
英最高裁がジョンソン首相の議会閉会を違法と判断したことを受けてポンドが一時買われたが、タカ派と見られていた英中銀のソーンダーズ委員がEU離脱を巡る高度の不確実性が根強いという可能性が高いシナリオにおいて、英中銀は利下げを迫られるとの見方を示したことで反落した。またジョンソン首相にはスコットランドから不信任案を提出するとも見られている。
ジョンソン首相は野党議員に政権を奪還するか、邪魔をせずにEU離脱を見守るかの二者択一であると迫った。労働党のコービン党首とスコットランド民族党ブラックフォード議員は、ジョンソン首相が合意なきEU離脱を排除した場合にのみ総選挙に同意すると述べた。
アイルランドのコーブニー外相はEU離脱合意を巡り、英EU双方にとって時間切れが迫っていると警告した。コーブニー外相は離脱交渉について、アイルランド国境問題の 「バックストップ(安全策)」をどう置き換えるかを巡って英国が出す「真剣な提案」に基づくものでなければならないと指摘。「現時点では依然として大きな隔たりがあり、時間切れが迫っている」と述べた。
また責任は英国側にあるとし、「離脱延期は合意なき離脱より望ましい」として、離脱延期を受け入れる考えを示した。英国では10月19日までに議会でEUとの離脱協定案が承認されず、合意なき離脱も認められなかった場合、ジョンソン首相に対し3カ月の離脱延期をEUに求めることを義務付ける法律が成立した。
*豪ドル「通貨8位、株価6位、ロウ総裁発言で利下げ期待がやや後退」
ロウRBA総裁の発言で利下げ期待がやや後退した。金利先物市場が織り込む今週の0.25%利下げ確率は60%と、ロウ総裁発言前の74%から低下した。先週は4大銀行が揃って10月利下げを予想していた。
ロウ総裁は連続利下げに言及しつつ「追加の金融緩和が必要となる可能性がある」と述べ、「理事会では、再び兆候の評価をすることになる」とした。必要なら政策をさらに緩和する用意があるとし、低金利が長期間継続する必要があるとの見方を示した。状況次第で量的緩和を検討するとしながらも、可能性は依然として低いとの認識を示した。市場はRBAが10月に利下げを検討するという、より明確な裏付けを求めていたがそれは得られなかった
ロウ総裁は、低金利、政府の家計向け税還付、豪ドル安、資源セクターの見通し改善、インフラ投資の効果で経済が緩やかに回復することに期待を示した。向こう数四半期で、経済成長が緩やかに加速すると予想。ただ、勢いや持続力は、現段階では未知数との認識を示した。経済成長を阻害する要因としては、国内の深刻な干ばつや個人消費の低迷とともに、米中貿易戦争といった海外の不確実要因を挙げた。
*NZドル 「通貨11位、株価3位、政策金利据え置きでNZドル下落一服」
中銀は政策金利を1.0%に据え置いた。ただ、景気を支援し、インフレと雇用の目標を追求するため、さらなる財政・金融刺激策の余地があるとの見方を示した。中銀は声明で「8月会合以降の新たな情報は金融政策見通しの大幅な変更を正当化しないとの見解で金融政策委員会が一致した」と表明。世界的に長期金利が歴史的低水準付近にとどまっているとした上で、市場はNZの金利がより長期にわたって低くなると予想できると指摘した。中銀は今年の利下げがNZドルの押し下げにつながったと指摘。低金利は、インフレ率が目標範囲の中間の2%に上昇し、雇用が最大限持続可能な水準付近にとどまるために必要との見方を示した。また、経済を支援し、インフレ・雇用目標を維持するため、必要ならさらなる財政・金融刺激策を打ち出す余地があるとした。
オア中銀総裁は、非伝統的な金融政策が必要になる公算は小さいが、行動に備えることは重要だとの見解を示した。
9月の消費者信頼感指数は114となり8月の118から低下し過去4年で最低となった。
需給的には弱い。19年3月-6月は貿易黒字であったが、7月、8月は赤字に転じている。成長率は依然2.0%を超えていることもあり、株価を押し上げ年初来で約23%上昇している。
心配されるのは日米通商協議で打ち出された牛肉の輸入関税引き下げで米国からの牛肉輸入が増加し、NZからの輸入が減少すると見られていることや、乳業最大手フォンテラ社の2019年7月期の最終損益は6億500万NZドルの赤字となり過去最大の赤字に陥り、中国で運営する牧場やブラジルの乳製品生産事業の売却を検討すると予想されている。スイスのネスレや仏ダノンなどに対抗する世界企業への飛躍を目指したが、構想は道半ばで、待ったなしの改革を迫られている。
テクニカル分析
*ドル円=「再び20日線を上抜き雲上、週足は下ヒゲ」
日足、9月19日-24日の下降ラインを上抜く。9月26日-27日の上昇ラインがサポート。9月19日-27日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向き。ボリバン上位、5日線、20日線を上抜く。
週足、9月16日週の上ヒゲで下落も9月23日週は下ヒゲで打ち返した。8月26日週-9月23日週の上昇ラインがサポート。9月16日週-23日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、19年6月-7月の上昇ラインを下抜く。月のボリバン下限に到達してからは戻す。19年5月-8月の下降ラインが上値抵抗。16年6月-19年8月の上昇ラインがサポート。
年足、3年連続陰線。今年は陽線スタートであったが5月に陰転。15年‐17年の下降ラインが上値抵抗。16年-18年の上昇ラインを下抜く
*ユーロドル「一時ボリバン下限下抜く」
日足、一時ボリバン下限を下抜くも週末はバンド内へ戻る。9月26日-27日の下降ラインが上値抵抗。5日線下向き。
週足、一時ボリバン下限下抜く。9月16日週-23日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、8月は長い上ヒゲを残す陰線。今月上ヒゲが長くなっている。19年7月-8月の下降ラインが上値抵抗。17年1月-19年8月の上昇ラインを下抜く。ボリバン下限は1.07半ば。
年足、17年-18年の上昇ラインを下抜く。14年‐18年の下降ラインが上値抵抗。02年‐17年の上昇ラインがサポート
*ユーロ円=「一時ボリバン中位に達するも反落」
日足、9月3日-27日の上昇ラインがサポート。9月19日-27日の下降ラインが上値抵抗。一時ボリバン中位に達するも上抜けず。5日線下向き。雲下。
週足、9月2日週-9日週の上昇ラインを下抜く。9月16日週-23日週の下降ラインが上値抵抗。9月2日週-23日週の上昇ラインがサポート。
月足、ボリバン下限下抜きから戻す。19年7月-8月の下降ラインが上値抵抗。
年足、16年-17年の上昇ラインを下抜く。15年-18年の下降ラインが上値抵抗。12年‐16年の上昇ラインも下抜く。
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