
更新日:2026年7月15日15時30分
低金利のスイスフラン(CHF)は、金利差を狙うキャリートレード(キャリー取引)の「調達通貨」として根強い人気があります。一方で、市場の混乱時には買われやすい「安全資産」としての側面も持つため、取引の際は組み合わせる通貨や市場環境の見極めが大切です。
この記事では、CHFキャリー取引のメリットを活かすためのポイントと、主要な通貨ペアの特徴を分かりやすく解説します。
なぜ今スイスフランなのか?キャリートレードの「調達通貨」として選ばれる理由
スイスフラン(CHF)は現在、キャリートレードの調達通貨(売る側の通貨)として高い関心を集めています。
※キャリートレードとは、金利が低い通貨で資金を借り入れ、それを金利の高い国の通貨に投資して「金利差(利ざや)」を得る投資手法です。
その背景にあるのが、スイス国立銀行(SNB)が維持している低金利政策です。SNBは政策金利を0%に据え置いており、スイス国内のインフレ率も低い水準で落ち着いています。早期の利上げ観測が後退している中、米ドルやユーロ、高金利通貨との金利差を利用したスワップポイント(金利差調整分)を狙いやすい環境が整っています。
さらに、SNBは急激なCHF高を抑えるため、必要に応じて外国為替市場へ介入する姿勢を示しています。このような金融政策や為替介入への警戒感も、CHFを調達通貨として活用する上でプラスの要因となっています。
一方で、CHFにはもう一つの特徴があります。それは、市場が不安定になった際に買われやすい「安全資産」としての顔です。株価の急落や地政学リスクの高まりをきっかけに、それまで売られていたCHFが一斉に買い戻される局面もあります。
つまり、CHFの特性を活かして上手にお付き合いするためには、以下の2つのポイントを見極めることが大切になります。
1.CHFを売って、どの通貨を買うか(運用通貨の選択)
2.どのような市場環境で取引を行うか(タイミングの選択)
CHFキャリートレードを成功に導く市場環境|低ボラティリティとリスクオンの好機
CHFを調達通貨とするキャリートレードは、株価や為替相場が安定し、市場の値動き(ボラティリティ)が穏やかな局面で特に力を発揮します。
投資家が前向きにリスクを取る「リスク選好(リスクオン)」の地合いでは、安全資産であるCHFを保有する優先度が下がり、低金利のCHFを売って高金利通貨で運用する流れがスムーズに継続しやすくなります。
逆に、市場の変動が大きくなった場合にはCHFが買い戻される傾向があるため、株式市場や為替相場全体が落ち着いているタイミングを見極めることが、より着実な運用につながります。
高金利スワップを賢く狙う!運用通貨(買う通貨)を選ぶ4つの評価基準
キャリートレードの成果を高めるためには、売る側のCHFだけでなく、買う側の「運用通貨」選びも重要なポイントです。
単に政策金利が高いという点だけでなく、以下の要素を総合的にバランスよく検討することで、より安定した運用が期待できます。
1.金利差とスワップポイント: 十分なインカムゲインを確保できるか
2.為替レートの安定性: 値動きが大きすぎないか
3.リスクとリターンのバランス: 運用通貨の下落リスクが、得られる金利収益の範囲内に収まりそうか
4.急変動への耐性: 市場がリスクオフに急速に傾いた際に、投資通貨安・CHF高をできるだけ避けられるポテンシャルがあるか
金利収益と為替変動のリスクを天秤にかけながら、ご自身のスタンスに合った組み合わせを見つけていきましょう。
各通貨ペアの特徴と付き合い方
USD/CHF(ドル/スイス)|高水準の米金利とドルの安定性を味方につける
USD/CHFの買い(米ドル買い・CHF売り)は、米国の高金利と、世界基軸通貨であるドルの高い流動性を活かせる、比較的取り組みやすい組み合わせです。
SNBが低金利を維持し、米国の高金利環境が続く限り、安定した金利差を味方にすることができます。米国の利下げ観測による一時的なドル安局面に留意しつつ、米金利が高水準で維持され、ドル相場が堅調な時期に真価を発揮するペアです。

EUR/CHF(ユーロ/スイス)|ECBの政策動向と値動きの安定性を重視
EUR/CHFの買い(ユーロ買い・CHF売り)は、高金利通貨ほどの大きな金利差はないものの、取引量が多く値動きが比較的穏やかなユーロの特性を活かした取引です。
急激な変動を抑えながら、着実に金利差を積み上げていきたい方に適しています。欧州中央銀行(ECB)の金融政策(利下げ観測など)の行方に注目しつつ、安定性を重視した運用に向いています。

CHF/JPY(スイス/円)|金利差よりもSNBと日銀の金融政策の行方に注目
CHF/JPYの売り(CHF売り・円買い)は、日本円も同様に低金利であるため、大きな金利差(スワップ)を狙う取引とは異なります。また、両通貨ともに市場の警戒時に買われやすい特性を持っています。
そのため、このペアはキャリートレードとしてではなく、SNBと日銀の金融政策の方向性の違いや、双方の通貨の強弱関係から生まれるトレンドを捉える取引として活用するのが効果的です。

CHF/TRY(スイス/トルコリラ)|圧倒的な金利差で最大のスワップポイントを狙う
CHF/TRYの売り(CHF売り・トルコリラ買い)は、スイスとトルコの大きな金利差を活かし、高いスワップポイントを狙える魅力的な組み合わせです。リラ相場が安定している時期には、非常に効率的な運用が期待できます。
トルコリラ特有の物価動向や為替変動リスクを考慮しつつ、適切なポジション管理を行うことで、金利差のメリットを追求することができます。

CHF/ZAR(スイス/南アランド)|資源国通貨の底堅さとリスク選好の波に乗る
CHF/ZARの売り(CHF売り・南アフリカランド買い)は、世界の株価や資源価格が堅調で、市場が活気づいている局面と非常に相性の良いペアです。
リスク選好のムードが高まる中では、南アフリカランドの金利の魅力が際立ちます。市場のセンチメントを把握しながら臨むことで、良好なパフォーマンスが期待できます。

【今後1カ月の見通し】SNBの低金利維持シナリオから探る、スイスフランの方向性
今後1カ月程度は、SNBの低金利政策と落ち着いたインフレ環境が継続することから、CHFはキャリートレードの調達通貨として引き続き売られやすい地合いが続くとみられます。
市場が落ち着きを保っていれば、USD/CHFやEUR/CHFの緩やかな上昇傾向、あるいはCHF/TRYやCHF/ZARの売りによる金利差取りの動きが活発化しやすいでしょう。
基本的なシナリオとしては、市場の安定(低ボラティリティ)を背景にした、緩やかで底堅いCHF安推移が想定されます。
まとめ|市場環境と最適な通貨ペアを見極め、CHFキャリー取引のメリットを最大化しよう
スイスフラン(CHF)は、その低金利環境と取引量の多さ、そしてSNBの政策スタンスから、キャリートレードの調達通貨として非常に優れたポテンシャルを持っています。
安全資産としての買い戻し局面に備えつつ、状況に応じた通貨ペア選びを行うことが成功の鍵となります。
安定性を重視するなら: USD/CHF や EUR/CHF
積極的な金利収益を狙うなら: CHF/TRY や CHF/ZAR
CHFがキャリー取引に向くかどうかを一律に判断するのではなく、相手通貨の強みや市場の風向きを感じ取りながら、最適な組み合わせでスイスフランキャリーのメリットを活かしていきましょう。
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