前編では、原油高と円安のダブルパンチの日本経済への影響・日銀の利上げリスクについて藤代宏一氏にうかがいました。後編では、FRBの金融政策、日銀の具体的な利上げタイミング、ドル円年後半の見通し、そして個人投資家へのメッセージをお届けします。
【必見!】藤代宏一氏の解説動画
FRBの利上げ論——「有事のドル買い」の本質
― 原油高・インフレ再燃を受け、FRBの利上げ論が一部で浮上しています。ドル円にはどう影響しますか?

「有事のドル買い」とよく言われますが、今回の文脈ではそれだけでなく、普通の意味でのドル買い圧力があると思っています。
アメリカは経済が強いため、原油高で価格転嫁が進みインフレになりやすい。その結果FRBが利上げに動くという連鎖が比較的起きやすい構造です。一方、日本では原油高が企業収益を圧迫し、賃金・消費を下押しすることで物価上昇が抑えられるため、原油高がそのまま利上げに結びつかない、むしろデフレ要因になる場合があります。
また、アメリカは世界最大の産油国でもあり、原油価格上昇への耐性もある。こうした構造的な差がドル高を支えています。
私のメインシナリオは「9月にもう1回利下げ、その後様子見」です。ただ、利下げ後に次の政策方向を考えると、再び利上げ議論が出てくる可能性があります。利上げ観測が高まるのは早くても今年後半終わりごろで、現時点では頭の片隅に置くレベルです。
FRBの利上げは株価にとってネガティブか
― 利上げ論は株式市場にとって本来マイナスでは?

必ずしもそうではありません。FRBが利上げできるということは、それだけ雇用情勢や経済が好調であるということを意味します。雇用が悪化している中で利上げというほど追い詰められた状況にはならないはずです。
年初の段階では利下げ2回が織り込まれていたため、その期待が剥落する中でPER(株価収益率)がかなり低下しました。逆に言えば、今は株価が横ばいのまま「PERという割高感の解消」が静かに進んでいた時期とも言えます。利下げ期待の剥落はすでにある程度消化されており、次に利上げ観測が本格化する時は景気がしっかりしている局面のはずです。2022年のような「景気も悪い、なのに利上げ」という最悪のシナリオとは異なります。
日銀の利上げタイミング
― 4月の利上げ確率が急低下しています。今後の日銀の動きをどう見ますか?
私は年初からずっと「次は7月」という見方を維持しています。
理由は2つあります。まず、原油高が日銀にとって「物価への影響を見極める時間」を与えてくれるため、利上げしない説明がつきやすい。次に、展望レポートが公表される月の方が政策変更を説明しやすく、日銀も動きやすい傾向があります。
7月に利上げした後は、12月か翌年1月に次の一手という流れが収まりのいいシナリオです。半年に1回というペースは市場参加者にとっても予測しやすく、日銀としても「コミュニケーションのしやすさ」という観点から選びやすい。
ドル円年後半の見通し
― 日銀が利上げすれば円高になるのでは?
そうシンプルには言えない部分があります。昨年(2025年)を振り返ると、日米の10年債金利差はほぼ一本調子で縮小したにもかかわらず、ドル円は年初の150円台から年末も157円台と、むしろ円安方向でした。
今後も同様のことが起きうる理由があります。日銀の利上げが進むほど、ターミナルレートまでの距離が短くなり、「打ち止め感」が意識されてきます。長期金利の観点では、利上げ余地の縮小がむしろ金利を落ち着かせる方向に働く可能性があります。
そうなると、為替市場での円高圧力も期待ほど大きくならないかもしれない。アメリカが再び利上げ方向に向かう中、日本がターミナルレートに近づいていくとすれば、むしろ日米金利差は再拡大する方向にすら動きかねません。
株高不況は今後も続く?
― ご著書のテーマ「株高不況」は今後も続くのでしょうか?

「株高不況の不況の方の度合い」は、だんだんと改善に向かうと見ています。
家計の資産配分が少しずつインフレ対応型に変わってきているからです。日銀の資金循環統計でも、家計が保有する株式の比率は少しずつ上昇しています。新NISAを通じた若い世代の投資参加も広がっています。
30年続いたデフレの後、インフレに転じてまだ3〜4年です。現金を持ち続けることがいかにリスクかに気づいていない家計がまだ多く、そうした層にとっては物価上昇が直撃しています。一方で株式を保有している方は、含み益を通じて生活実感も改善しつつある。
この流れが定着すれば、資産効果を通じた個人消費の拡大、企業収益の好循環という、現在のアメリカと似た構図が日本でも実現する可能性があります。
インタビューを終えて
「利上げはネガティブ」という単純な図式ではなく、雇用と景気の強さがあってこその利上げであれば株価にそこまで悪影響はない——という藤代氏の分析は、足元の不安心理に対する冷静な視点として重く響きます。ドル円については、日銀の利上げが進んでも円高が素直に進まない構造的な理由があり、年後半も引き続きドル高・円安バイアスが意識されそうです。インフレ時代の資産運用として、現金偏重からの脱却が求められている今、藤代氏のメッセージは個人投資家にとって大きな示唆を持っています。
動画視聴者限定!藤代宏一氏の書籍プレゼント📚
●動画を視聴された方限定!

外為どっとコムでFXの口座を新規開設し、アンケートに回答された方全員にもれなく藤代氏の書籍をプレゼント!この貴重な機会をお見逃しなく。
本キャンペーンの詳細については下記動画の概要欄をご確認ください。
株式会社第一ライフ資産運用経済研究所経済調査部 主席エコノミスト
藤代 宏一(ふじしろ・こういち)
・2005年 第一生命保険入社
・2008年 みずほ証券出向
・2010年 第一生命経済研究所出向を経て、内閣府経済財政分析担当へ出向
2年間経済財政白書の執筆、月例経済報告の作成を担当
・2012年 第一生命経済研究所に帰任
その後、第一生命保険より転籍
早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)
・参議院予算委員会調査室客員調査員(2018年)
・日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)
株式会社外為どっとコム総合研究所 シニア為替アナリスト神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
本サイトに掲載する情報には充分に注意を払っていますが、その内容について保証するものではありません。また本サービスは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであって、投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資方針や時期選択等の最終決定はご自身で判断されますようお願いいたします。なお、本サービスの閲覧によって生じたいかなる損害につきましても、株式会社外為どっとコムは一切の責任を負いかねますことをご了承ください。

