
作成日:2026年3月4日 11時00分
ファンダメンタルズ分析:焦点は閉鎖期間とIEAの動き
需給より「戦争プレミアム」の爆発が主因
週明け3月2日(日本時間)、外為どっとコムが提供するCFD口座『CFDネクスト』のWTI原油は週末終値67.417ドルから大きく窓を空けてスタートすると、そのまま急伸しました。上昇の勢いは続き、3月4日には一時78.027ドルまで上値を伸ばしています。
今回の原油価格急騰の本質は、需要の拡大ではなく、イランへの攻撃開始に伴う「戦争プレミアム(有事の上乗せ)」の爆発的な織り込みにあります。単なる懸念の段階を超え、実際に軍事行動が始まったことで、タンカーの航行回避や戦争リスク保険の引受停止といった「物理的な供給途絶」が現実味を帯びています。ホルムズ海峡が公式に封鎖されていなくとも、海運各社が安全を確保できないと判断すれば、物流は止まります。つまり、「実質的な封鎖」に近い供給ショックを市場が先取りし、価格を強力に押し上げている構図です。
今週の3つの焦点
1. ホルムズ海峡の「実質的な封鎖」リスク
イランによる物理的なホルムズ海峡封鎖がなくとも、海運各社が「危険すぎて通れない」と判断すれば、物流は止まります。すでに保険料は急騰しており、一部で運航停止の動きも見られます。
今週の焦点は、大手海運会社が「航行の完全回避(実質封鎖)」に踏み切るか、それとも米軍の護衛等により「限定的な航行」が維持されるかです。前者となれば、供給ショックは計り知れません。
なお、米国のトランプ大統領は3日、自身のSNSで「米海軍がホルムズ海峡を通過するタンカーを護衛し、世界のエネルギーの流通を保証する」と表明しており、実際に護衛体制が整えば供給途絶リスクを一定程度抑制する一方、米国・イラン対立の長期化観測を通じて戦争プレミアムを下支えする要因ともなり得ます。
2. 米国・イスラエルによるイランへの攻撃期間と「イランの報復」
米国・イスラエル側の作戦期間だけでなく、現在は「イランがどのような報復に出るか」が最大の懸念材料です。
市場は、事態が数日で収束する「限定的な衝突」で終わるのか、それともイランが周辺国の石油施設を狙うような「報復の連鎖」に発展するのかを注視しています。今週中に外交的な仲介や沈静化のサインが出なければ、リスクプレミアム(有事の上乗せ価格)は剥落せず、高止まりが続くでしょう。
3. 供給サイドの切り札「IEAの備蓄放出」
OPECプラスによる増産は政治的に期待しづらい状況です。そのため、市場が唯一の「即効性のある鎮静剤」として期待しているのが、IEA(国際エネルギー機関)による協調備蓄放出です。
実際に放出が決定されれば、需給の緩和効果以上に「世界が結束して価格を抑える」という強いメッセージとなり、パニック的な買いを落ち着かせる効果が期待できます。
テクニカル分析:過熱感あり、窓埋め下落の警戒を
WTI原油 日足チャート

対象:当社CFD WTI原油(日足)/10日移動平均/RSI(9日)
日足の形状
週明け3月2日(日本時間)の取引再開後、WTI原油は週末終値67.417ドルから大きく上にギャップを空けて始まり、その後も買いが加速。3月4日には一時78.027ドルまで急騰しました。しかし高値圏では利益確定売りが優勢となり、足元では75ドル台まで押し戻されています。この動きは、米国とイスラエルによるイラン攻撃やホルムズ海峡の実質的な封鎖リスクを背景に、パニック的な買いが先行した後、過熱感を警戒した売りが出たことを示しています。
依然として地政学リスクによるリスクプレミアムは残るものの、チャート上は上昇の勢いが一服し、上値の重さと調整圧力が意識される展開となっています。
RSI(9日)
相対力指数(RSI)は、直近の値動きが「買われすぎ」か「売られすぎ」かを判断するためのテクニカル指標です。一般的にRSIが70を超えると買われすぎ、30を下回ると売られすぎとされますが、80を超える水準は「異常な過熱状態」とみなされます。
今回のWTI原油のRSI(9日)は87.2と、極端な高水準に達しています。このような状態では、短期的な上昇エネルギーが枯渇しやすく、反落や調整局面に入るリスクが非常に高いと考えられます。実際、過去の相場でもRSIが80以上となった場合は、利益確定売りや急落が発生しやすい傾向が見られます。したがって、現在のWTI原油はテクニカル面から見ても「過熱感が強く、調整リスクが高い」局面であり、慎重なリスク管理が求められます。
移動平均線(10日)
短期トレンドを示す10日移動平均線(MA)は68.548ドル付近にあり、現在価格とは大きく乖離しています。一般的に、移動平均線からの乖離が拡大すると、相場は「平均線へ回帰する動き(調整)」が起こりやすくなります。今回のように急騰局面では、過熱感が冷める過程で、価格が移動平均線や直前の終値(67ドル台)付近まで引き寄せられるリスクが高まります。特に、短期的な売買が活発な原油市場では、乖離が大きいほど反動による価格調整が急速に進む可能性があるため、注意が必要です。
テクニカルの示唆
ファンダメンタルズ面では、中東情勢の激化による「戦争プレミアム」が依然として原油価格を押し上げる主因となっています。一方、チャート上では78ドル台への急伸によって過熱感が極限まで高まり、テクニカル指標(RSI)は87台と異常値を示しています。
10日移動平均線との乖離も大きく、短期的には「平均線への回帰(自律反落)」や、週末終値(67ドル台)への窓埋め(急落)といった調整リスクが高まっています。
このため、現状で新規に買いポジションを取る場合、リスクリワード(損失と利益のバランス)が非常に悪く、慎重なリスク管理が求められる局面です。
注目イベント(3月2日〜3月6日)
- 3月5日 0:30(日本時間)米国EIA週間石油在庫統計:混乱前の米国内需給の基礎体力を確認する材料です。
- 3月6日 22:30(日本時間)米国2月雇用統計:強い結果が出ると、金利観測やドル高を通じて原油の上値を抑える要因になり得ます。
- 3月6日 22:30(日本時間)米国1月小売売上高:結果が市場予想を上回る強い内容となれば、米景気の底堅さが意識され、利上げ観測やドル高を通じて原油相場の上値を抑える一方、需要面からは下支え要因としても意識される可能性があります。
- 随時:中東の物流制限や回避ルートの報道。制限の長期化や回避の拡大はプレミアムを残しやすくなります。
想定レンジと3つのシナリオ
- 上振れシナリオ(74.00〜80.00ドル):中東情勢の悪化やホルムズ海峡の混乱が長期化し、輸送リスクや有事プレミアムが再度強く織り込まれる場合、一時的に70ドル台後半まで上昇する可能性があります。
- 基本シナリオ(68.00〜74.00ドル):地政学リスクは残るものの、需給や在庫増加、米国経済指標の影響で、70ドルを挟んで上下する展開。ヘッドラインで乱高下しつつ、日柄調整で過熱感(RSI)を冷ます展開が想定されます。
- 下振れシナリオ(65.00〜68.00ドル):航行正常化や備蓄放出観測、需給緩和の材料が強まれば、戦争プレミアムが急速に剥落し、週明けギャップの埋め戻しで下落する展開も視野に入ります。
トレード戦略
今週のWTI原油市場は、依然として中東情勢の緊迫化による「上方向の地政学リスクプレミアム」と、テクニカル指標が示す「下方向の調整圧力」がぶつかり合い、方向感が出にくい展開が続いています。新規の買いは、70ドル台からの急落リスク(窓埋めや移動平均線への回帰)を前提に、ポジションサイズを抑えるか、RSIなど過熱感が落ち着くまで調整を待つ判断が合理的です。トレードを検討する場合は、70ドル付近での乱高下を前提に短期勝負に徹し、ストップロスをタイトに設定するのが基本線です。下落して10日MAや週末終値付近まで調整したところでの押し目買いはテクニカル上検討余地がありますが、中東情勢のヘッドラインで相場の前提が一瞬で崩れるリスクは常に考慮してください。
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