このレポートの概要:米国株式市場と外国為替市場の最新動向と分析
金融マーケットで永く情報発信を行っている田嶋智太郎氏が、米国株式市場の最新動向を詳しく解説します。
S&P500種は200日線との位置関係に注目
前回更新分の本欄で想定したとおり、先週の米株相場は戻り一巡から一旦調整の局面を迎えることとなった。S&P500種は、20日以降に4日続落となり、週末23日には節目の5800ポイントと200日移動平均線(200日線・現在は5773ポイントに位置)を試す動きを見せた。やはり、当面は「これらの重要な節目が下値サポートとして機能し続けるかどうか」が大きな焦点ということになろう。
仮に、これらの節目を下抜けた場合は、まず今月12日に開けた「窓」を埋めに行く、つまりは5700ポイント処を試す動きになると想定される。なお今後、少々まとまった調整を交えることとなるかは、今のところ上向きで推移している200日線が下向きに転じるかどうかを見定めることが重要となる。直近で下向きになったのは4月3日以降のことで、その後に大きく下押す動きとなったことは、まだ記憶に新しい。
米財政悪化懸念で“悪い金利上昇”が株価を圧迫
先週のS&P500種は、とくに21日の下げ(-1.61%)が目立った。この日は米30年債利回りが5.10%付近まで大きく上昇し、同時に米10年債利回りも急上昇している。米議会で減税を含む予算審議が進むなか、市場で米国の財政赤字や累積債務の膨張に対する懸念が高まっており、それは週を通じて市場のムードを重苦しいものとした。
週末にかけては税制改革法案が下院で可決し、上院に送付された。議会予算局によると同法案は、足元で膨大に積み上がった米財政赤字に約4兆ドルも上乗せすることになる可能性があるという。結果、いわゆる“悪い金利上昇”が示現し、それが米株価の上値に重荷になっていると同時に、あらためて米国離れ・ドル離れの動きを刺激している。
再登場した“関税ネタ”に市場は冷めた目線
さらに、週末にはトランプ米大統領がアップルへの25%超の関税を課す可能性を示唆したうえ、欧州連合(EU)に6月1日から50%の関税を課すことを表明。もはや“関税ネタは峠を越した”とのムードが拡がっていた市場にとっては少々ショッキングなニュースだったが、一頃ほど狼狽える様子もなく比較的冷静に受け止めているようでもある。
「どうせ、またトランプ流の脅しを一つの交渉戦術に用いようとしているのだろう」と見る向きが多く、もはや市場は冷めた目で事の成り行きを見定めようとしている。仮に、再び米・日の株価がショック安に見舞われた場合は、そこがチャンスになる可能性が高いと見る向きが多いため、むしろ短絡的なショック安は生じにくいものと思われる。
基調としてのドル安はまだ続く可能性
ただし、米財政悪化の可能性に対する懸念はそう簡単には緩みそうもない。少なくともドルの上値を買い上がることには慎重にならざるを得ないといったムードが漂っている模様で、基調としてのドル安はしばらく続くと見る向きも少なくない。頼りのベッセント米財務長官が「ドル安ではなく、他の通貨高が原因」などと述べているところが“寒い”わけで、本来はトランプ米大統領に対して「貴兄が行っていることは『メイク・アメリカ・グレート・アゲイン』の逆を行っている」と忠言する立場でなくてはならない。
どのみち、まだまだドル離れは進む可能性が高く、その実、足元のユーロ/ドルからは一定の強さも感じられる。EUに対する50%関税が示唆されたのにも拘らず、先週末23日のユーロ/ドルは1.136ドル台まで駆け上がって長めの陽線を描くに至った。
今週はあらためて日銀の出方に注目したい
逆に、先週末23日のドル/円は長めの陰線を描いて142円台半ばの水準まで値を下げている。結果、4月22日安値から5月12日高値までの上げに対する61.8%押しの水準を下抜けてきており、当面は76.4%押し=141.95円処が意識されやすくなるものと思われる。先週行われた日米財務相会談で為替水準について「まったく議論していない」と伝わり、一旦はドル/円が陽線を描いた(22日)のにも拘らず、結局は週末にかけてドル安・円高方向になびいたわけである。
今週は日銀金融研究所が主催する国際コンファランスが開催される。日銀の政策方針に関わる市場の思惑が強まりやすくなるものと心得ておきたい。
ドル円週足チャート
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田嶋智太郎氏
経済アナリスト 慶應義塾大学を卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券を経て、経済アナリストに転身。現場体験と綿密な取材活動をもとに、金融・経済全般から戦略的な企業経営、個人の資産掲載まで幅広い範囲を分析・研究。 WEBサイトで経済・経営のコラム執筆を担当し、株式・外為・商品などの投資ストラテジストとしても高い評価を得ている。 また、「上昇する米国経済に乗って儲ける法」など書籍も手掛けるほか、日経CNBCレギュラーコメンテーターも務める。
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