このレポートの概要:米国株式市場と外国為替市場の最新動向と分析
金融マーケットで永く情報発信を行っている田嶋智太郎氏が、米国株式市場の最新動向を詳しく解説します。
今週こそ「戻り一巡」となる可能性
先週12日に米中両国が関税の大幅な引き下げで合意したと伝わってから、早くも1週間が経過しようとしている。誰もが予想していなかった“衝撃”の一報を受け、米株市場では主要3指数がいずれも大きなギャップ(窓)を伴って上昇。その結果、S&P500種は200日移動平均線(200日線)や当面の上値の壁として意識されていた5800ポイント処を一気に上抜け、先週末16日まで5日続伸となった。筆者は、米トリプル安からのアンワインドの動きが先週にも「そろそろ一巡」と想定していたが、それは今週に持ち越される格好になったと考えている。
なおも不透明感が色濃い状態は変わらず
S&P500種は、すでに2月高値から4月安値までの下げに対する78.6%戻しの節目水準をも上回る状況となっているが、米ハイテク大手7社(マグニフィセント・セブン)の売上高の伸びが鈍化傾向にあることや、全体に収益の伸びが減速し始めていることなどを勘案すると、このまま全値戻しから最高値更新という展開を想定するのは些か無理があるように思われてならない。中国の関税率が大幅に引き下げられたとはいえ、いまだ30%という高い税率が残っていることも事実。トランプ米大統領は貿易相手国に対する関税率を「向こう2~3週間以内に決定する」と述べているが、少なくともそれが明らかになるまで先行き不透明感がなおも色濃い状態は続く。
日経平均株価にも目先の高値警戒感
トランプ米大統領が仕掛けた関税戦争が足元で沈静化しつつあることに異論を挟む余地はない。ただ、対中貿易摩擦の緩和を受けて、市場に過度なまでのリスク選好ムードが漂っていることもまた事実であると言えよう。
日経平均株価が一時的にも3万8000円台を回復し、市場に安堵感が広がっているのは歓迎すべきことだが、足元の騰落レシオ(25日移動平均)は130%超の水準と過熱感を帯びてきており、そろそろ一旦調整の局面を迎えてもおかしくはない。少々まとまった調整を交える場面があれば、同時にドル/円にも一定の下値リスクが生じよう。
「日銀年内利上げ」の確率予想値は急上昇
先週12日、ドル/円は米中協議の結果を受けて一時的にも148.65円まで上値を伸ばす場面があった。ドルをショートしていた向きが不意を突かれた格好となり、慌てて買い戻す動きがドルを大きく押し上げたものと見られる。しかし、13日以降は3営業日連続で陰線を描く格好となり、週末16日には一時145円を割り込む場面もあった。
一つに大きかったのは、日銀が13日に公表した前回の金融政策決定会合の『主な意見』において「実質金利が大幅なマイナスで、利上げしていく方針は不変」との指摘を紹介したこと。「米国の政策転換次第で追加的な利上げを行う」との見解まで盛り込まれていたことがわかり、俄かに市場では「日銀年内利上げ」の確率予想値が急上昇している。日経平均株価の大幅な戻りも、それ自体が追加利上げを正当化することにつながる。
なおも燻る「ドル離れ」への警戒
テクニカルの観点からも、ドル/円には上値の強い抵抗が感じられる。先週見られた一時的な急騰場面でも200日線が位置するところには遠く及ばず、足元は一目均衡表(日足)の「雲」下限水準がレジスタンスとして機能している。目先は、重要な節目として意識されやすい146円処や日足の「転換線」が位置するところ(現在は145.50円処)をクリアに下抜けるかどうかを見定めたい。仮に下抜けると、次は144円処の節目が再び視野に入ってくると見ておきたい。
今週は20〜22日の主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議において日米財務相会談の開催が検討されており、市場では「円安是正」に向けた何らかの働きかけもあり得るものと警戒されている。おそらく、それは杞憂に終わるものと思われるが、市場には円買いショットを放つ準備を余念なくしている向きもあろう。米中協議の進展に伴うリスク選好ムードの広がりが一巡すると、なおも燻る「ドル離れ」への警戒が再度強まる可能性もないとは言えまい。
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田嶋智太郎氏
経済アナリスト 慶應義塾大学を卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券を経て、経済アナリストに転身。現場体験と綿密な取材活動をもとに、金融・経済全般から戦略的な企業経営、個人の資産掲載まで幅広い範囲を分析・研究。 WEBサイトで経済・経営のコラム執筆を担当し、株式・外為・商品などの投資ストラテジストとしても高い評価を得ている。 また、「上昇する米国経済に乗って儲ける法」など書籍も手掛けるほか、日経CNBCレギュラーコメンテーターも務める。
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