執筆:外為どっとコム総合研究所 中村 勉
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今週の振り返り
今週の豪ドル/円は97.37円前後、ニュージーランド(NZ)ドル/円は88.38円前後で週初を迎えました。2日は豪10月小売売上高や中国11月財新製造業購買担当者景気指数(PMI)が予想を上回ったことで、豪ドル/円は買いで反応し98.01円前後まで上昇する場面も見られました。4日には豪7-9月期国内総生産(GDP)が発表され、市場予想(前期比+0.5%)を下回る+0.3%となり、コロナ禍だった2020年10-12月期以来の低成長となったことから豪ドル売りが強まり、豪ドル/円は一時95.91円前後まで下落しました。ただ、市場の注目が米国と日本の金融政策に向いていたこともあり、豪州や中国の経済指標への反応は限定的となり、週半ば以降は96円台を中心とした動きとなりました(執筆時)。
RBAは声明や総裁発言に注目
来週は10日に豪準備銀行(RBA)が金融政策会合(理事会)を開催します。政策金利の市場予想は4.35%の据え置きとなっています。豪州のインフレ(消費者物価指数・CPI)は月次ベースでみると、最新の10月分が前年比+2.1%で予想(+2.3%)に反して、前月から横ばいとなりました。ただ、豪州のインフレ率が低下している理由は豪政府による電気代補助によるものが大きいです。その証拠に、コアインフレ率として見られるCPIトリム平均の10月分は前月比+3.5%で9月(+3.2%)から加速しています。11月のRBA理事会の議事要旨では、「利下げの正当化には、複数回の四半期CPIの好結果を確認する必要がある」、「消費の弱さなど、利下げが正当化されるシナリオを検討」などと記してありました。2日に発表された豪10月小売売上高は前月比+0.6%と市場予想の+0.4%を上回る強い結果でした。コアインフレ率は上昇、消費も堅調さを維持していることから、RBAの利下げは当分先となりそうです。なお、短期金利市場では今回RBAが利下げをする可能性を6%程度しか織り込んでいません。
今回のRBA理事会で警戒したいのはむしろ利上げについてでしょう。11月のRBA議事録には「政策が想定ほど制限的でない場合、利上げの可能性を警告」とも記してありました。前述の通り、月次ベースとはいえCPIトリム平均は反発、個人消費(小売売上高)は予想以上の伸びを示したとあっては、RBAが「期待したほど経済が冷まされきれていない」と判断してもおかしくないと考えています。追加利上げの可能性を高めるような声明内容やブロック総裁の発言内容には注意しておきましょう。
豪ドル/円のテクニカル分析
豪ドル/円は日足、週足の一目均衡表でともに、①転換線が基準線の下、②ローソク足が雲の下、③遅行線がローソク足の下となり、三役逆転(売りシグナル)が点灯しています。そのため、テクニカル的には豪ドル/円が売られやすい状況は続きそうです。目先の下値目途は心理的な節目となる95円前後になりそうです。その下の水準では9/11安値の93.60円前後が意識されそうです。一方で上値は一目均衡表の転換線や雲(来週は97円台半ば~98円手前)がレジスタンスとなりそうです。
【豪ドル/円 日足・一目均衡表】
予想レンジ:AUD/JPY:93.50-98.00、NZD/JPY:86.00-89.50
12/9週のイベント:
12/09 (月) 10:30 中国 11月消費者物価指数(CPI)
12/09 (月) 10:30 中国 11月生産者物価指数(PPI)
12/10 (火) 未定 中国 11月貿易収支
12/10 (火) 09:30 豪 11月NAB企業景況感指数
12/10 (火) 12:30 豪準備銀行(RBA)、政策金利発表
12/11 (水) 06:45 NZ 7-9月期四半期製造業売上高
12/12 (木) 09:30 豪 11月新規雇用者数
12/12 (木) 09:30 豪 11月失業率
一言コメント:
12月に入りました。街にはクリスマスツリーが登場するなど、クリスマス、そして年末ムードが漂い始めています。ただ、外国為替市場では来週、再来週はビッグイベントが控えていますのでムードに流されて気を緩めないようにしましょう。
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中村 勉(なかむら・つとむ)
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー(株)へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
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