イスラエル・シリアの緊張は金(ゴールド)高に、ランドにも影響
南アフリカ・ランドの対ドル相場は、グローバルな為替市場におけるリスクセンチメント、そしてそれを大局的に反映して変動する安全通貨であるドルの名目実効為替レートと連動性が高い(第1図)。
第1図:南アフリカ・ランド対ドル相場とドル名目実効為替レート
4月3日発表の米3月ISM非製造業景気指数が市場予想比下振れるなど、4月第1週の米主要経済指標が強弱マチマチな内容となりドルが反落したことで、ランドは4月上旬にかけて反発に転じた。4月1日に起きたイスラエルによるシリアのイラン大使館攻撃により、南アフリカの主要輸出品目である金の価格に地政学リスクへの警戒から上昇圧力が強まったことも支援材料となった可能性がある(第2図)
第2図:南アフリカ・ランド対ドル相場と金価格
もっとも4月10日に発表された米3月消費者物価が市場予想を上回るなど、米国の根強いインフレ圧力を確認する結果となり、年内のFRBの利下げ開始がさらに後ずれするとの見方から米金利と共にドルが急上昇すると、ランドは下落に転じた。4月13日にはイランがイスラエルに対して報復攻撃を行うなど、紛争のエスカレートが警戒され金価格は上昇が続いたが、この局面では支援材料にならずランドは下落が続いた。
南アの経済指標は総じてマチマチな内容が続く中、4月30日~5月1日に次回FOMCを控え、当面は米国のインフレ・金融政策見通しと連動したグローバルな金融市場動向にランドも影響を受け易い状況が続きそうだ。尚、5月29日の南アフリカ総選挙では与党アフリカ民族会議(ANC)の苦戦が報じられており、先行き政治的不透明感が徐々にランドのリスク要因となって来る展開にも要注意だ。
南アフリカランド/円 週足チャート
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新興国通貨が高金利である理由について
新興国に分類される国々は概して政治リスクや財政リスクが先進国よりも高く、したがってその経済的信用度は相対的に低い水準にあります。こうした条件下では海外投資家の資金を呼び寄せられず、経済発展の支障となるため、金利を上げたり税金を安くしたりすることで、信用度の低さを補いうる投資環境を構築しようとします。そのため新興国通貨は一般に先進国通貨よりも高金利となる傾向にありますが、前述したように各種リスクが高い水準にあることから、長期的には先進国通貨に比べて価値が下がる(=通貨が下落する)条件を備えているともいえます。
橋本 将司(はしもと・まさし)氏
慶應義塾大学卒業後、三菱UFJ銀行に入行。国際通貨研究所研究員、グローバルマーケットリサーチ・シニアアナリスト、経済調査室ニューヨーク駐在などを歴任し、グローバルな為替市場やマクロ経済に加え、米国金融業界や金融規制など幅広い分野の調査業務に従事。現在国際通貨研究所において、為替市場や主要国の金融政策・マクロ経済動向の分析を担当。理論的な観点からの為替市場分析を得意とする。
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