執筆：外為どっとコム総合研究所 中村 勉
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目次
豪雇用統計は労働市場のひっ迫緩和を示すか？
今週の振り返り
前週末にイスラム組織ハマスがイスラエルに対して大規模な越境攻撃を実施した影響から、今週はリスク回避の円買い・ドル買いが先行。豪ドル/円は94.75円前後、NZドル/円は88.94円前後で前週末から下方向に窓を開けて週初を迎えました。しかし、中東情勢の悪化懸念により原油価格が大幅に上昇したことが資源国通貨である豪ドル、NZドルを支える一因となりました。また米国の金融当局者が相次いで追加利上げに関して慎重な姿勢を示したことにより、米長期金利利回りが低下。米ドルが広範に売られたことで豪ドル/円は95.83円前後、NZドル/円は89.93円前後まで上値を伸ばしました。週後半に入ると、米9月消費者物価指数（CPI）が市場予想を上回ったことで、週前半に低下していた米長期金利利回りが反発。この影響から豪ドル/円は94.46円前後、NZドル/円は88.48円前後まで下落しました（執筆時）。
豪雇用統計の注目点は？
来週は豪州で豪9月雇用統計の発表があります。豪州の労働市場では2020年の新型コロナパンデミック（2020年4～5月）で約87万件の雇用が失われました。その後の約3年間（2020年6月～2023年8月）で約200万件の雇用が創出されました。そのうちの約133万件は正規雇用者です。つまりこの間に創出された雇用の約7割は正規雇用だったわけです。しかし過去2カ月の豪雇用統計の結果を見ると、正規雇用者数が約1.6万人減少したのに対し、非常勤雇用者は約7.9万人増加していました。もちろん、単月で見ると正規雇用者数が減少に転じていた月はありましたが、2カ月連続で非常勤雇用者数が正規雇用者数を大幅に上回ったのは今回が初めてのことでした。
RBAは8月の理事会の議事要旨で「労働市場が転換点にあることを示す兆候がいくつか見られた」と示していました。来週の豪9月雇用統計でも非常勤雇用者数が増加を示し、正規雇用者数の増加幅が小幅（もしくは減少）であった場合、市場は豪州の労働市場のひっ迫解消が続いていると受け止めて、11月以降の追加利上げ観測がさらに後退することになりそうです。
中国経済の減速に警戒を
今週13日（金）に発表された中国9月CPIは前年比±0.0%となり予想（+0.2%）や前月（+0.1%）を下回りました。中国9月生産者物価指数（PPI）は前年比-2.5%で前月（-3.0%）からはマイナス幅が縮小しましたが、予想（-2.4%）には届きませんでした。PPIは昨年の10月から12カ月連続でマイナスとなりました。これらの結果を見てもわかる通り、中国の景気回復は堅調に進んでおらず、むしろデフレへの懸念が燻っている状態です。来週は18日に中国7-9月期国内総生産（GDP）が発表されます。市場は中国7-9月期GDPは前年比+4.5%となり4-6月期の+6.3%から減速することを予想しています。仮に市場予想を下回った場合、景気減速が意識されるほか、中国当局の掲げた2023年の成長目標（+5.1%）達成が難しくなってきます。中国の景気動向には引き続き注意が必要です。
豪ドル/円のテクニカル分析
豪ドル/円の上値は10/12高値の95.83円前後が目先の目途として意識されそうです。この96.00円手前は7月後半～8月序盤にも上値目途として意識されていました。その上の水準では9/29高値の96.92円前後や6/19日高値の97.68円前後（年初来高値）が次のポイントとなりそうです。一方で下値は、一目均衡表の雲下限が目先の下値目途となりそうです。そして10/3安値の93.04円前後がサポートとして意識されそうです。その下には200日移動平均線（200MA）があります。強いサポートとして意識されやすいですが、しっかりと下抜けした場合には売りが加速する可能性がありますので要注意です。
【豪ドル/円 日足・一目均衡表、200MA】
予想レンジ：AUD/JPY：92.50-97.00、NZD/JPY：86.50-90.00
10/16 週のイベント:
10/17 (火) 06:45 NZ 7-9月期四半期消費者物価（CPI）
10/17 (火) 09:30 豪 豪準備銀行（RBA）、金融政策会合議事要旨公表
10/18 (水) 11:00 中国 7-9月期四半期国内総生産（GDP）
10/18 (水) 11:00 中国 9月小売売上高
10/18 (水) 11:00 中国 9月鉱工業生産
10/19 (木) 09:30 豪 9月新規雇用者数
10/19 (木) 09:30 豪 9月失業率
10/20 (金) 06:45 NZ 9月貿易収支
一言コメント：
10月に入り急速に涼しくなってきました。朝5時前に家を出る私は肌寒いと感じる日もあります。つい2週間前まで半袖だったのに、もう1枚羽織るもののことを考えています。季節の移り変わりは早いですね。
外為どっとコム総合研究所 調査部 研究員中村 勉（なかむら・つとむ）
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー（株）へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から（株）外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
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