執筆:外為どっとコム総合研究所 中村 勉
X(Twitter):@gaitamesk_naka
日々、為替情報発信中!
目次
豪CPIに注目!下がり過ぎると…?
先週の振り返り
先週の豪ドル/円は93.10円前後で、NZドル/円は86.11円前後で週初を迎えました。
21日には中国人民銀行が最優遇貸出金利の指標となる1年物ローンプライムレート(LPR)の引き下げを発表しましたが市場予想よりも小幅な利下げとなり、住宅ローン金利の基準となる5年物LPRは市場予想(0.15%利下げ)に反して据え置きとなりました。市場はこれを中国の景気を支えるには不十分と受け止めたことで、人民元売りが先行しました。豪州やニュージーランド(NZ)はともに中国と交易関係が強いことから、この動きに追随し、豪ドル/円は92.83円前後、NZドル/円は85.77円前後まで下落しともに今週の安値を記録しました。その後は市場の注目がジャクソンホール会議でのパウエル議長の講演に移る中で、欧米の購買担当者景気指数(PMI)が悪化していたことから消去法的に豪ドルが買われる場面もあり、常時とは少し違った動きも見られました(執筆時)。
豪州の消費意欲は堅調さを示すか?
今週8月28日に豪7月小売売上高が発表されます。豪州では5月に大規模なオンラインセールイベントや、母の日の影響から小売売上高が前月から大きな伸びを見せ、その反動で6月の小売売上高は大きく低下したと見られています。28日の7月分では豪州の購買意欲が減退していないかの確認作業になります。他方で、8月3日に発表された豪四半期小売売上高を見ると、2022年第4四半期から3四半期連続で実質の売上数量が減少していました。これは高金利やインフレの影響で、豪州の家計が購入する物品量を減らしていることを示しています。
月次の小売売上高の名目金額を見ると、多少の上下はありますが平均してみると2022年9月から351億豪ドル台での推移が続いているといえます。小売売上高の名目金額が増加を示し、「豪州の家計購買意欲は高金利やインフレに関わらず強い」という印象を市場に与えることが出来れば、豪ドルにとって一定の支援材料となりそうです。
【豪月次小売売上高(金額、前月比)推移】
豪月次CPIは下がり過ぎに注意!
豪州の消費者物価指数(CPI)は月次、四半期ともに2022年12月をピークに低下傾向にあります。豪準備銀行(RBA)が8月4日に公表した金融政策報告の中で、RBAは2023年末のインフレ予想を前年比+4.25%としていました。8月30日には豪7月月次CPIが発表されます。執筆時時点での市場予想は、6月の+5.4%から若干低下して+5.3%となっています。市場予想を大幅に下回り、RBAの年末予想値に近付いてしまった場合、「RBAが見通しを下方修正するとともに利下げ時期も早まるのではないか?」という思惑が台頭する可能性があります。
※市場予想の基となるエコノミスト予想数が執筆時時点では普段の半分程度しか出ていないため、今後発表日が近づくにつれて予想が変わる可能性があります。
【豪月次、四半期CPIの推移】
豪ドル/円のテクニカル分析
豪ドル/円は執筆時時点で、①転換線が基準線の下、②ローソク足が雲の下、③遅行線がローソク足の下、と3役逆転で売りのシグナルが点灯しています。目先の下値目途は91円台後半になります。この水準には200日移動平均線(91.90円前後※25日時点)や7/28安値の91.80円前後があります。ここを下抜けると90.00円を目指す動きになりそうです。上値に関しては、まずは早期に雲の中に戻れるかが焦点となりそうです。なかなか戻れずにいると、雲下限が上値目途として強く意識されそうです。特に週後半には雲上限が切り下がってきて雲が93.97円前後~94.07円前後と非常に薄くなります。薄い雲は抜けやすいとも言えますが、上限、下限が接近する分だけレジスタンス(サポート)ポイントとして普段よりも強く意識されそうです。早期に雲の中に戻ることが出来れば、8/10高値の94.94円前後までも上昇もあり得そうです。ここを上抜けることが出来た場合、7/31の95.86円前後、7/5高値の96.83円前後と約1円刻みの上値目途が意識されそうです。
【豪ドル/円 日足・一目均衡表、200日移動平均線】
予想レンジ:AUD/JPY:90.00-95.00、NZD/JPY:84.00-87.50
8/28 週のイベント:
08/28 (月) 10:30 豪 7月小売売上高
08/30 (水) 07:45 NZ 7月住宅建設許可件数
08/30 (水) 10:30 豪 7月住宅建設許可件数
08/30 (水) 10:30 豪 7月消費者物価指数(CPI)
08/31 (木) 10:00 NZ 8月ANZ企業信頼感
08/31 (木) 10:30 中国 8月製造業購買担当者景気指数(PMI)
08/31 (木) 10:30 豪 4-6月期四半期民間設備投資
09/01 (金) 10:45 中国 8月Caixin製造業購買担当者景気指数(PMI)
一言コメント:
毎営業日お昼の時間(12時~)に『ドル円 昼ライブ』という番組をYoutubeで生配信しています。こちらは外為どっとコム 公式FX初心者ch - YouTubeで見られます(アーカイブもあり)ので、ぜひご覧ください。
先日、久々に他のセミナーがあるため「昼ライブ」がお休みの日がありました。普段はお昼を外に食べに行かれないのですが、今回は行ける!ということで、社内でおススメのご飯屋さんをリサーチして行ったのですが、まさかの夏季休暇中でした…楽しみは次回に取っておきます。
中村 勉(なかむら・つとむ)
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー(株)へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
本サイトに掲載する情報には充分に注意を払っていますが、その内容について保証するものではありません。また本サービスは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであって、投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資方針や時期選択等の最終決定はご自身で判断されますようお願いいたします。なお、本サービスの閲覧によって生じたいかなる損害につきましても、株式会社外為どっとコムは一切の責任を負いかねますことをご了承ください。