執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
目次
- ▼8月21日週のユーロ/円、ポンド/円は失速
- ▼ユーロ/円、投資家マインドの維持がカギ
- △▼【ユーロ/円チャート 日足】
- ▼ポンド/円、年内利上げ期待残る
- △▼【ポンド/円チャート 日足】
- 8/28 週のイベント
- 一言コメント
執筆日時 2023年8月25日 14時00分
米国の次は中国のランディングを注視へ
8月21日週のユーロ/円、ポンド/円は失速
前半こそ円安地合いを受けて、ユーロ/円は159.489円、ポンド/円は186.765円までの戻りを試しました。しかし、欧州の製造業・サービス業PMIIが軒並み悪化すると、成長への懸念からユーロ/円は156.866円、ポンド/円は183.373円まで押し戻されました。その後、景気減速がかえって当局の利上げ姿勢を後退させるとの思いが投資家センチメントをつなぎ止めた部分もあり、同水準からは下げ渋る格好となりましたが、ポンド/円は戻り売りフローもあってか、183.358円までわずかにレンジ下限を切り下げました。(各レート水準は執筆時点のもの)
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※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
ユーロ/円、投資家マインドの維持がカギ
ドイツ・ユーロ圏の8月サービス部門購買担当者景気指数(PMI、速報値)が節目の50を割り込み、利上げによる成長減速懸念が広がりました。もっとも、上でも述べたように株式市場が利下げを先取りする格好で底堅く推移しているうちは、投資家マインドの悪化も限定されると見られ、ユーロの大崩れも起きにくいと考えます。ただ、来週発表される消費者マインドやインフレ指標を通じて、利上げの継続性が強まる一方、景気減速見通しがさらに進めば、何とか持ち堪えている投資家心理が悪化して、株安を伴ってユーロ下落が加速する展開もあるでしょう。また、ドイツと中国の関係悪化が意識される中、米経済のソフトランディングから、中国経済のハードランディングへの投資家の視線も変化し始めており、中国経済の動向にも気を配りたいです。
ユーロ/円は目先、156.788円付近の50日移動平均線や155.440円レベルの日足一目均衡表・基準線付近がサポートラインと見られるものの、同水準を下抜けるようなら、152.853円の100日移動平均線まで次のサポートレベルが下がります。各支持線の上側では超短期で買いを検討してみるのは一考ですが、支持線を明確に割り込んだ場合は、売りに転じて回転を利かせたいです。逆に上方向は心理的節目の160.000円が抵抗帯になりそうです。
【ユーロ/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:EUR/JPY:154.500-160.000
ポンド/円、年内利上げ期待残る
英国もユーロ圏と同様に製造業・サービス業PMIの鈍化が示され、市場では7-9月期の成長率がマイナスに落ち込むとの観測も出ています。インフレとの闘いが長期化する中で、景気後退リスクが意識されるのはある意味仕方がないものの、足許、英経済が予想よりも健闘していることを示す指標が並んでいただけに、今回の指標への失望はそれなりに大きくなったようです。ポンドは、目先、上値の重さが意識されやすい展開が見込まれます。ただ、引き続き年内の利上げ継続シナリオは残っており、金利の先高観測からポンドの下値もある程度限られるのではないかと考えています。
テクニカル的にはポンド/円は方向性が見出しづらくなっています。183.45円付近(執筆時点)を推移する21日移動平均線を筆頭に、日足一目基準線、同雲の上限と181.00円付近まで複数の支持線が観測されており、サポート力は比較的厚めと感じられます。下方向は、一目基準線付近まで下げる場面では買い拾いたいです。
【ポンド/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:GBP/JPY:181.000-187.000
8/28 週のイベント
8/29(火) 15:00 ドイツ 9月GFK消費者信頼感調査
8/30(水) 17:30 イギリス 7月消費者信用残高
8/30(水) 18:00 ユーロ 8月消費者信頼感(確定値)
8/30(水) 21:00 ドイツ 8月消費者物価指数(CPI、速報値)
8/31(木) 16:55 ドイツ 8月失業率
8/31(木) 18:00 ユーロ 7月失業率
8/31(木) 18:00 ユーロ 8月消費者物価指数(HICP、速報値)
8/31(木) 20:30 ユーロ ECB議事要旨
9/1(金) 17:00 ユーロ 8月製造業購買担当者景気指数(PMI、改定値)
9/1(金) 17:30 イギリス 8月製造業購買担当者景気指数(PMI、改定値)
一言コメント
海外通信社によれば、ドイツ政府が中国投資に与える企業への保証規模が急減しているという。重要技術の流出につながる恐れがありことが理由と言う。BRICSでは存在感が増している中国だが、主要国では中国離れが緩やかに進むのでしょうか。
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