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FX「介入は需給改善で時期尚早。意外と強い米経済、意外と強くない米ドル。今週はCPIとFOMCへの前哨戦」

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総括

FX「介入は需給改善で時期尚早。意外と強い米経済、意外と強くない米ドル。今週はCPIとFOMCへの前哨戦」

ドル円=137-142、ユーロ円=147-152、ユーロドル=1.05-1.10

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨10位(11位)、株価3位(3位)、介入は需給改善で時期尚早。4月貿易収支は20か月ぶりに前年同月から赤字が改善、21か月ぶりに輸出の伸びが輸入の伸びを上回った」
 5月30日に財務相・日銀・金融庁の3者会談が行われ、「為替変動に適切な対応をする」と発言したことでドル円での円高が一時140円台から138円台へと進んだ。ただこの会議の目的は未曽有の米国デフォルト問題への対応で為替は主題ではなかったと思う。今年も円安が進んでいるが、去年はドルが強かった(12通貨中2位)が今年はそれほど強くはない(6位)。年初来のドル円の上昇も6.77%、昨年は140円で21.63%、150円で30.32%高だったから急激な変動でもない。米国財務省やG7に対して変動率では円買い介入への説得力がない。もちろんG7では介入は原則禁止で相場は市場に委ねるのが鉄則だ。

 さて需給も輸入の急激な伸びが治まってきたのでドル円の急騰もないだろう。4月貿易収支は4323億円の赤字であったが20か月ぶりに前年同月から赤字が改善した。また21か月ぶりに輸出の伸びが輸入の伸びを上回った。円が特に安いのはドルよりもメキシコペソ、ポンド、スイス、ユーロなどに対してだ。インフレがまだ収まっていない時期に、対円でそれらの国に対して円買い介入を行うことは容認されないだろう。
 需給ではなく、米国経済の意外な堅調さや日銀の金融緩和維持からという2番目の円安材料は円を全体的には押し下げていることはある。日本の1-3月期の企業の経常利益や設備投資の改善で日本株が押し上げられるならリスク選好の円安もある程度ある。

*米ドル「通貨6位(5位)、株価(NYダウ)18位(18位)、意外と強い米経済、意外と強くない米ドル。今週はCPIとFOMCへの前哨戦」
 年初、米国リセッション、株安も予想されていたことを思うと、米国も難題多い中、しっかり歩んでいる。「恐怖と欲望」指数は65で欲望の範疇、アトランタGDPナウは2.0%でリセッションの気配はない。
かといってドルは去年ほど強くはない。ロシアのウクライナ侵略で、資源価格が上昇し「もてる国」の米ドルが買われた2022年であったが、今年は資源価格の下落と共にドルは全体では12通貨中6位となっている。

 先週までのフェッドウオッチは当局の発言と経済指標で揺れて、6月FOMCでは利上げ予想から据え置き予想へ変換した。5月雇用統計は非農業部門雇用者数の伸びが予想を大幅に上回ったが、失業率が予想以上に上昇するなど強弱感が混在した。米景気の堅調さを裏付けつつもFRBの6月会合での利上げを裏付けるほどの内容ではないとの見方が優勢だ。基調としてはベージュブックで、4月と5月初旬の経済活動は全体としてほとんど変化が見られず、近い将来の企業見通しは以前よりやや悪化したとみられると指摘した。 労働市場については、ほとんどの地区で雇用が増加したものの、増加ペースはこれまでより緩やかだったと指摘。物価については、報告期間中に緩やかに上昇したが、多くの地区で上昇ペースが鈍化したとした。

今週は5月ISM非製造業景況指数が手掛かりとなる。未曽有のデフォルトも危惧された米国債務上限問題は上限引き上げでの合意が見られ世界の市場に安ど感をもたらした。

*ユーロ「通貨5位(4位)、株価6位(5位)DAX)、利上げ観測は強いが、金利水準は低い。CPIの低い国もあり。ドイツはリセッション」
  去年の反動で、「持てる国」より円を除く「持たざる国」が強い傾向でユーロも上昇していたが、このところ弱い。先週は一時ドルに抜かれたこともあった。対円では強くボリバン中位を下回らず。対ドルでは漸くボリバン下限から反発したがまだ中位に届かないのが現状だ。
 ラガルドECB総裁は、ユーロ圏のインフレ率は依然として高すぎると指摘し、これまでの利上げの効果が出ていることを示す材料が増えていても一段の引き締めが必要との見解を示した。 
ただインフレは低下してきている。6月の消費者物価は前年比6.1%上昇と、前月の7.0%上昇から鈍化した。予想の6.3%上昇を下回った。またギリシャは3%、スペインは3.2%、ポルトガルは4%と物価がかなり低い国もある。金融引き締めへの意見相違も出てくるだろう。オランダ、独は6.1%、イタリアは7.2%とマチマチだ。
 またドイツはリセッションに陥ったし、最近発表の4月小売売上や5月景況感指数も悪化している。現在政策金利3.75%で、これは英中銀の4.5%、FRBの5.25%、RBAの3.85%と比べると低く、利上げを強調しても資金がユーロに流れるかは不透明だ。

*ポンド「通貨2位(3位)、株価16位(13位)、ユーロと比べればやや異質で強いポンド」
 通貨番付は2位と強い。ユーロと比べると経済指標(4月小売売上)が強くインフレ率が高い(4月8.7%)。英中銀は高止まりしているインフレを抑制するため、これまで考えられていたよりも金融引き締めをはるかに積極化する見通しだ(ロイター)。エコノミスト50人のうち48人が6月22日の金融政策委員会で政策金利を0.25%引き上げて4.75%にすると予想。2人は0.5%の利上げを見込んだ。 政策金利はその後、来年序盤まで5.00%に据え置かれる見込み。マン金融政策委員は基調的なインフレ率に対する取り組みは他の経済圏と比べて困難との見方を示した。英国の総合インフレ率とコアインフレ率とのギャップは米国やユーロ圏で見られるギャップよりも持続的とした。

 ムーディーズは、予想を上回るインフレと金利上昇が家計に打撃を与え、英国は今年「緩やかな景気後退」に向かうとの見方を示した。ムーディーズは、食品とエネルギーを除いた英国のコアインフレ率の上昇により「中銀が追加利上げする可能性が高まる」と述べた。ムーディーズは英中銀が今年少なくとも0.25%利上げし、政策金利を4.75%に引き上げると予想している。ムーディーズは「物価高と金融条件の引き締めの影響が引き続き経済に浸透しているため」、英国経済は2023年に0.1%縮小すると予想していると述べた。

  スナク英首相は6月7-8日に訪米、バイデン米大統領と会談する。経済関係の改善のほか、ウクライナに対する軍事支援を維持する方法などについて協議する。

*豪ドル「通貨8位(9位)、株価17位(15位)、政策金利は据え置き見通し強いが、状況は厳しい」
先週は週間2位と健闘した。豪RBAは、6月6日の政策金利決定では3.85%に据え置く見通しが多い。ただ状況はまだインフレが低下する状況ではない。ロウ総裁は最近の議会証言でインフレ抑制に向け引き続き取り組むと表明している。インフレの上振れリスクがあり、家計に厳しい状況が予想されるとし、インフレ率を目標水準に戻すため必要な措置は全て講じると表明した。インフレ期待が足元は安定しているが過信すべきではないと語り、インフレが根付けば金利や失業率の上昇を招くことになると警告した。 「インフレに対するリスクは上向きで、われわれはそれに留意する必要がある」と述べた。

 4月の消費者物価は前年比で6.8%上昇、3月の6.3%から加速し、予想の6.4%も上回った。自動車燃料や住居費の上昇を受けた。

賃金設定機関フェア・ワーク・コミッション(FWC)は、生活費高騰を受けて7月1日から最低賃金を5.75%引き上げると発表した。最低時給は21.38豪ドルから約22.61豪ドルに引き上げられる。今回の賃上げにより政策金利の最終到達点がさらに上向くリスクが高まったようだ。また5月の住宅価格は前月比1.2%上昇した。上昇は3カ月連続で、住宅市場は2月に底入れしたとみられている。1Q企業設備投資は前期比で実質2.4%増加し、7年ぶりの高水準となった。鉱業、製造業、運輸業の投資拡大が寄与した。景気は強くなっている。

*NZドル「通貨9位(9位)、株価12位(12位)、中銀のハト派発言続く。リセッション国」
 やや弱い。豪ドルほどの強さがなくなってきたのは、中銀のハト派声明が効いている。中銀は、政策金利が現水準の5.5%でピークを迎え、2024年半ばまで同水準にとどまると予想、オア中銀総裁は、金利上昇がすでに望ましい効果をもたらしている兆候があるとの認識を示した。予想より弱いGDPやインフレ率の低下に加え、国内経済の金利に敏感な部分の減速を示唆する指標など、期待していたことが既に一部実現したのは非常に喜ばしいとした。シルク総裁補は利上げを一時停止して状況の推移を観察することもできると発言、ホークスビー副総裁は、住宅ローン金利の現在の水準については中銀は「快適」だと述べた。

 中銀の元総裁補佐を務めたジョン氏は、銀行コストの上昇が見込まれており、環境がさらに厳しくなり、政策金利が早期に引き下げられる可能性が高まると述べた。
また中銀は住宅ローン対価値比率(LVR)制限を緩和する予定だ。住宅市場調整の影響と深刻さを軽減することを目的として行われる。
 経済指標では、5月の消費者信頼感指数は79.2で、前月の79.3ほぼ同水準。消費者が引き続き強いインフレ圧力にさらされており、数字は極めて低水準にとどまっている。

テクニカル分析

*ドル円「5日ぶり陽線で円安に意地。週足陰線も長い上ヒゲ」
日足、4連続陰線のあと5日ぶりに陽線。5月30日-6月2日の下降ラインが上値抵抗。6月1日-2日の上昇ラインがサポート。5日線下向き、20日線上向き。
週足、ボリバン2σ上限。雲中。5月22日週-29日週の上昇ラインがサポート。22年10月17日週-23年5月29日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、今年は月ごとに陰陽を変えていたが5月は4月に続き陽線に6月も陽線スタート。5か月移動平均線は上向く。4月-5月の上昇ラインがサポート。22年10月-23年5月の下降ライン上にあり。
年足、2023年はここまで陽線。2022年は大陽線に終わるも、長い上ヒゲで圧力を残した。21年-22年、12年-21年の上昇ラインがサポート。

*ユーロドル「5月31日の2σ下限から反発。4週連続陰線」
日足、5月31日の2σ下限から反発。雲の下。5日線、20日線下向き。6月1日-2日の上昇ラインがサポート。5月24日-6月2日の下降ラインが上値抵抗。
週足、4週連続陰線。ボリバン中位割り込む。3月13日週-5月29日週の上昇ラインがサポート。5月22日週-29日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線下向き。
月足、5月は3か月ぶりの陰線。ボリバン中位る。4月-5月の下降ラインが上値抵抗。3月-5月の上昇ラインがサポート。5か月線、20か月線下向き。
年足、年足陽転。20年‐21年の上昇ラインは下抜く。2022年は2年連続陰線もボリバン2σ下限到達し反発。下ヒゲが長く反発力あり。02年-22年の上昇ラインがサポート。21年‐22年の下降ラインが上値抵抗。

*ユーロ円「ボリバン中位から反発、5日線は下向き」
日足、ボリバン中位から反発。6月1日-2日の上昇ラインがサポート。5月29日-3月2日の下降ラインが上値抵抗。5日線下向き、20日線上向き。
週足、ボリバン上位。5月15日週-29日週の上昇ラインがサポート。5月1日週-29日週の下降ラインが上値抵抗。5週線下向く、20週線上向き。
月足、5月はボリバン2σ中位から反発、陰線となったが下ヒゲが長い。ボリバン上位。4月-5月の上昇ラインがサポート。2008年7月-23年5月の下降ラインが上値抵抗。
年足、3年連続陽線。今年も陽線。20年-22年の上昇ラインがサポート。08年-22年の下降ラインを上抜く。

情報提供元:FX湘南投資グループ
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