執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
※年内は今回が最終です。新年は1月6日から再開予定。
目次
執筆日時 2022年12月23日 16時30分
23年前半のユーロ/円レンジは134.000~147.000円を予想、インフレ抑制長期化で
12月19日週のユーロ/円、ポンド/円は下落
日銀による金融政策の微調整を受けて円が急騰し、ユーロ/円は138.787円、ポンド/円は158.596円まで上値を切り下げました。売り一巡後は各通貨ペアとも、自律反発で安値から切り返したものの、円の先高観が燻る中で戻りは限定的でした。また、ポンド/円は英財政赤字の負担増加も嫌気され、戻したレベルから再び売られる局面もありました。(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
FX、要警戒!海外勢本格参入で、投機筋マイナス金利解除狙いか (2022年12月22日)- YouTube
ユーロ圏は、インフレとの戦いが継続
ECB(欧州中央銀行)は米国と同様に利上げ幅を縮小へ踏み出したものの、域内のファンダメンタルズからはインフレがピークアウトした確証は得られていません。労働市場のひっ迫が継続していることを受けて、妥結賃金は前年比2.91%へ上昇しておりインフレ加速の心配は残っています。今後も賃金の上昇分を価格転嫁する動きが継続すれば、ECBのターミナルレート(金利の最高到達点)が拡大する可能性はありそうです。表面的には米金融政策と足並みを揃える格好になっていますが、ユーロ圏のインフレ見通しはかなり上振れるリスクの方が高いのが実情のようです。こうした状況から、ECBは引き締め姿勢を今以上に緩めることが難しく、利上げサイクルの長期化が意識されやすいと考えます。
また、今年冬場のエネルギー問題が下火となり、貿易赤字縮小を通じた経常収支改善も期待されます。景気回復が鈍くユーロを本格的に買っていけるかと言った問題はありますが、欧米の金融政策の温度差から、ユーロ/ドルは23年年央までに1.1200ドルをトライする局面があっても不思議ではないでしょう。かたやユーロ/円は日銀の政策変更への警戒心から目先、133円半ば付近までの調整はありそうですが、ユーロ/米ドルの下値切り上げを受けて少しずつレベルを回復していく展開を見込んでいます。手始めに、1/6(金)のユーロ圏12月消費者物価指数(HICP、速報値)から、インフレ再加速の兆候が見られるかどうか着目されます。
双子の赤字がポンドの重しに
2022年7-9月期実質GDPが6四半期ぶりのマイナス成長へ落ち込みました。成長減速は既に英中銀が指摘しているため驚きはありませんが、改めて経済に対する先行きへの不安を強める格好になりました。エネルギー価格上限設定などの措置がインフレ率を押し下げ、家計の実質購買力の落ち込みを一定程度カバーしそうですが、英経済を回復軌道に乗せるには力不足と見られ、経済回復までに時間が必要となりそうです。ポンドの上値の重さは払しょくできていません。
また、成長減速から英財政への負担も大きくなり始めている点も、ポンドの信認を低下させる要因になっています。足許は、米国の利上げペースダウン観測から下支えされていますが、成長減速のほか、財政赤字・経常赤字が再び拡大していくようなら、ポンド/米ドルでパリティを目指す局面も想定しておいても良さそうです。ポンド/円も、最悪の場合、円高の機運と重なれば水準を大幅に削る危険がありそうです。ユーロと違いポンドは買いづらい通貨と言えるでしょう。
ユーロ、上昇支持線を下振れ
ユーロ/円は、2022年3月からのサポートラインを割れてきたほか、10月16日高値148.403円を起点とする下落チャネルに沿った値動きが進んでおり、下値警戒スタンスが強くなりつつあります。期間26の週足ボリンジャーバンドのマイナス1σ(138.306円)や52週移動平均線(137.782円)が並ぶ138.000円付近では下げの勢いは和らぎそうですが、ここを下抜けると、あとは薄い週足一目の雲があるだけで、下押し圧力は高まりやすいです。仮に反発しても、今年の年初来高値(148.403円)を越えるには力不足の様子で、145円当たりかは戻り売りが被さってきそうです。目先は、短期反発でチャネル上限付近となる142.500円近辺で戻り売りを検討したいと考えます。
【ユーロ/円チャート 週足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:EUR/JPY:138.000-142.500(12/26-1/6)
ポンド/円、週足では一目雲下限の攻防へ
164.000円付近で推移していた26週移動平均線を割り込み、下値トライが意識され始めています。158.587円の週足一目均衡表・雲下限が支持線となっていますが、週足の終値でこのラインを割り込んでくれば、ポンド/円は下落スピードを速め、中期的にトラスショックでつけた148.666円を目指すことになりそうです。目先は、雲下限の維持が絶対条件となります。サポートされれば、中期的に165.000-166.000円に向けた戻りを試すでしょうが、まだ、そうした雰囲気は感じられません。目先は下目線でしょうか。
【ポンド/円チャート 週足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:GBP/JPY:155.000-162.000(12/26-1/6)
12/26-1/6 週のイベント
12/29(木) 18:00 ユーロ ECB経済報告
1/2(月) 18:00 ユーロ 12月製造業購買担当者景気指数(PMI、改定値)
1/3(火) 18:30 イギリス 12月製造業購買担当者景気指数(PMI、改定値)
1/3(火) 22:00 ドイツ 12月消費者物価指数(CPI、速報値)
1/4(水) 18:00 ユーロ 12月サービス部門購買担当者景気指数(PMI、改定値)
1/5(木) 16:00 ドイツ 11月貿易収支
1/5(木) 18:30 イギリス 12月サービス部門購買担当者景気指数(PMI、改定値)
1/5(木) 19:00 ユーロ 11月卸売物価指数(PPI)
1/6(金) 16:00 ドイツ 11月製造業新規受注
1/6(金) 18:30 イギリス 12月建設業購買担当者景気指数(PMI)
1/6(金) 19:00 ユーロ 12月消費者信頼感(確定値)
1/6(金) 19:00 ユーロ 12月消費者物価指数(HICP、速報値)
1/6(金) 19:00 ユーロ 11月小売売上高
一言コメント
外為どっとコム総合研究所のTEAMハロンズ(@TeamHallons) が平日毎日21時よりライブ配信しています。番組では、注目材料の紹介、テクニカル分析でエントリーポイントや利食い・損切りポイントを解説し、実際にリアルトレードも行っています。ご興味のある方は、一度、こちらにアクセスしてみてください。
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