総括
FX「11月のドルは最弱通貨としてスタート」
ドル円=136-141、ユーロ円=141-146、ユーロドル=1.01-1.06
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨11位(11位)、株価7位(5位)、介入に利上げ減速論、商品市況の落ち着きでの円買い続く。対抗は貿易赤字と海外のリパトリ」
ドル円は2019年5月以来の週連続陰線となった。それほどドル円の中期的な下落はここ3年程なかったのであった。ドル円上昇の要因は国際商品市況の上昇と日本の貿易赤字の拡大、海外金利の急騰と日銀の金融緩和継続などが挙げられる。ここ4週間のドル円下落は、それぞれのドル高円安要因が和らいでいたことや海外の決算前での円キャリーポジションの手仕舞いもある。この円安材料の調整はまだ続きそうで、日足のボリバン下限は達成したが、週足、月足のボリバン下限はまだまだ余地がある。週足は2σ下限で130.60、月足は96.82。
日本の貿易赤字拡大傾向は、商品市況の下落でも続いている。まだ価格下落が輸入減少に繋がるまで時間がかかりそうだ。ただ9月まで14.2兆円の赤字の約6割は円買い介入で埋めてしまったので、その分は円売り圧力が減殺されている。暫くはこの4週間のドル売りに乗り遅れた参加者のドル売りが続く。今週は15日近辺に外債の利払い償還難度の円買いもある。ポイントは11月23,24日の日米連休あたりから欧米のリパトリで円売りが出るかどうかと、対抗的に世界的に議論され始めた利上げ減速論が盛り上がるかどうかだ。今週は日本の7-9月期GDPと10月貿易統計にも注目したい。企業の最高収益と最高税収が円高で減少するのは寂しいが流れは流れだ。
*米ドル「通貨2位(2位)、株価(NYダウ)11位(11位)、11月はドルは最弱通貨としてスタート」
今年は10月まで12通貨中2位と強かったドルが11月月間ではここまで最弱通貨となっている。日銀のドル売り介入で少し弱くなり、FRBからも利上げ減速論が出始めていたこと、11月15日の米国債利払い・償還を前にドル売りが出ていたところに、10月消費者物価が8か月ぶりに8%を割れの7.7%まで低下したことで、米金利が低下しドル売りに繋がった。イエレン財務長官は、物価上昇圧力が緩和していることが示されたのは喜ばしいとした上で「これが転換点かどうかは分からない。一つの指標にこだわるつもりはない。これは指標の一つだ」と述べた。インフレが転換点を迎え低下が続くかどうかは不明との見解を示した。
ロシアのウクライナ侵攻で急騰した国際商品価格が、ここ最近下落しそれが物価下落にも漸く繋がってきたのだろう。ロシアを除いた、また中国も警戒した新しい世界の貿易地図が描かれ軌道にに乗るのはまだまだ時間がかかるが、前に向いて走り出したことで、商品市況の混乱は収まっていくのだろう。ドル建て価格が下落すればドルの購入金額も減ってドル安に繋がるだろう。商品価格が下落すれば米経済にはネガティブとなる。そうなると米国も景気刺激のためのドル安をいずれ求めてくるだろう。米雇用は強いと言われながらもIT企業を中心にほころびが出始めている。暫くドル安が続くのではないか。
今週は米中首脳会談にも注目したい。中間選挙では、上院を民主党が握ることとなったのは、現政策が継続する可能性が高く、それは物価安金利低下に繋がるだろう。
*ユーロ「通貨7位(8位)、株価12位(13位)DAX)、米ドル下落で浮上、高インフレと景気悪化は続く」
11月に入ってからは強くもなく弱くもないと言ったところだ。月間で12通貨中6位、年間で7位。ただ11月に入ってからはドルが弱いので相対的に押し上げられている。ユーロの良い材料がでているわけではない。二桁台のインフレと弱い経済成長が続く。利上げ減速論はここにはない。ラガルドECB総裁は、今回の利上げサイクルにおけるピーク時点の金利はインフレ率が中期的に2%の目標に戻ることを確実にするものでなければならないと述べた。「政策金利はさらに上昇する。目標地点は明確であり、われわれはまだそこに達していない」と語った。ナーゲル独連銀総裁は、ECBはユーロ圏のインフレに対応するために短期金利を引き上げているが、長期借入コストも上昇させる必要があるとの考えを示した。
欧州委員会は、ユーロ圏の今年の成長率を上方修正する一方、来年の成長率を大幅に引き下げた。成長が急減速するが雇用や財政に及ぼす影響は軽微にとどまるとの見方を示した。
最新の予測では今年の成長率が3.2%、来年が0.3%、24年は1.5%。7月に示した予想は、今年が2.7%、来年は1.4%だった。ユーロ圏経済は今年4Qと来年1Qはマイナス成長になると予想した。
失業率は今年の6.8%から来年は7.2%に上昇、財政赤字も今年がGDP比3.5%で来年は3.7%へと小幅に上昇、インフレ率は引き続き高水準だが低下を予想。今年の8.5%から来年は6.1%に、24年は2.6%まで減速するとした。
*ポンド「通貨10位(10位)、株価5位(4位)、マイナス成長、高インフレ、利上げ、増税と苦しいが米ドル安で反発」
米10月消費者物価低下を受けたドル安でポンドは浮上するも、英国のファンダメンタルズは不安だ。年間では12通貨中10位と弱い。22年3Q・GDPは、前期比でマイナス0.2%となり、6期ぶりのマイナス成長となった。物価の高騰で景気の先行きには不透明感が高まっている。9月の消費者物価は前年比で10.1%の上昇と、物価高が続いていて、こうした記録的なインフレで衣服や食料品などの消費が減少したことがマイナス成長の主な要因。英中銀は、物価上昇率がおよそ11%まで拡大すると予測、インフレの抑制のため金融引き締めを続ける方針だ。
スナク首相は、今月中旬に財政の改善策を盛り込んだ中期財政計画を発表する予定だが、物価の高騰で景気の先行きに不透明感が高まる中、難しい政策運営を求められることになる。ハント財務相は、財政を立て直し、長期化する可能性のある景気後退を緩和するために、今週の予算案で増税を行う必要があると述べた。ただ苦境の中で米国発のドル安要因でポンドが上昇すれば、製造業の収益性が弱まり全体では悪材料となる。
*豪ドル「通貨6位(6位)、株価10位(10位)、今週の焦点は賃金上昇率が3%を超えるか」
豪ドルは今月は対ドルで上昇、ただ今月は円が最強通貨となっているので対円では弱い。月間は5位、年間では6位で中くらいの強さだ。対円では年初来11.21%高。今週の焦点は3Qの賃金上昇率。かねてからRBAは賃金上昇率が3%を超えないと利上げしないとしていたが、ロシアのウクライナ侵攻での物価急騰で、賃金上昇を待たずして利上げを継続していた。予想は前年比3%上昇だ。RBAは9月頃に表明した利上げ減速論に基づき、2会合連続で0.5%ではなく0.25%の利上げを続けている。世界的に利上げ減速論が高まっている中で実践しているのはRBAだけだ。ここで賃金上昇率が目標の3%を超えてもその姿勢を維持するかが焦点となる。
ブロックRBA副総裁は、利上げを中断できる段階に近づいている可能性があるとの見方を示している。ただ、期待通りに需要が鈍化していることを示す一段の証拠が必要だと述べた。金利は短期間で既に大きく上昇しており、「もう少し」上昇する必要があるかもしれないが、経済指標の動向次第だとした。「このサイクルのインフレのピークに近づいていると考える正当な理由がある」とも発言。グローバルサプライチェーンの混乱緩和と石油価格の下落を指摘した。もちろん、減速している中国経済がゼロコロナ政策を緩和すれば、豪景気を強めることなり、これも変動要因だ。
*NZドル「通貨9位(9位)、株価13位(12位)、元祖「利上げ減速論者」だが、データは強く、利上げ加速か」
年間では9位と豪ドルの6位より弱いが、9月からは豪ドルより強い。最近、世界中で流布している「利上げ減速論」だが、そもそもは夏の「ジャクソンホール」会議でオアNZ中銀総裁が打ち出したものであった。オア総裁は個人消費が沈静化し始めている兆しを指摘し、積極的な引き締めサイクルが終了に近づいている可能性を示唆していた。しかし消費者物価が一向に下がらず、10月に政策金利を0.5%引き上げ3.5%に今月の年内最終の政策決定会合では、さらに0.75%利上げして4.25%とする予想だ。3Qの失業率は3.3%、賃金の伸びは過去最高の前年比3.8%上昇、労働市場は依然としてタイトだ。労働参加率は71.7%、就業率は69.3%で、ともに1986年の統計開始以来の高水準だ。
実際に利上げを減速したRBAの豪ドルと差がつき、NZドルは対豪ドルで秋は強含み推移している。
NZ中銀の四半期ごとのインフレ期待調査によると、企業経営者は今後1年でインフレが鈍化すると見込んでいるが、前回調査から水準が切り上がった。
今後1年間の期待インフレ率は5.08%と前回調査の4.86%から上昇。
今後2年間の期待インフレ率も3.07%から3.62%に上昇した。
テクニカル分析
*ドル円「2019年5月以来4週連続週足陰線、日足は雲の下に出るか。月足はここまで陰線」
日足、雲中へ下落。雲下限は138.14。ボリバン3σ下限は138.90。2σ下限は141.62。雲上限は143.64。5日線、20日線下向き。
週足、2019年5月6日週以来、4週連続陰線。10月17日週-11月7日週の下降ラインが上値抵抗。8月1日週-11月7日週の上昇ラインがサポート。ボリバン中位下抜く。ボリバン2σは150.46-130.61。
月足、11月は陰線スタート。9月-10月の上
昇ラインを下抜く。6月-8月の上昇ラインがサポート。ボリバン中位は122.69。2σは148.96-96.82。
年足、2021年は6年ぶり陽線。今年もここまで大陽線。2016年-20年の下降ラインを上抜く。ただボリバン3σ上限近くからは反落、上ヒゲが長くなってきた。20年-21年の上昇ラインがサポート。15年-21年の下降ラインを上抜く。
*ユーロドル「ボリバン3σ上限に達す」
日足、ボリバン3σ上限に達す。11月10日-11日、11月4日-10日の上昇ラインがサポート。5日線、20日線上向き。
週足、10月24日週-31日週の下降ラインを上抜く。一時ボリバン2σ上限へ。10月31日週-11月7日週の上昇ラインがサポート。3月28日週-11月7日週の下降ラインが上値抵抗。10月31日週の下ヒゲ効果あり。
月足、4か月連続陰線後、10月は陽転。11月も陽線スタート。ボリバン2σ下限から反発。9月-10月の下降ラインを上抜く。9月-10月の上昇ラインがサポート。21年6月-22年2月の下降ラインが上値抵抗。
年足、20年‐21年の上昇ラインを下抜く。ボリバン2σ下限到達。17年-20年の上昇ラインも下抜く。14年‐21年の下降ラインが上値抵抗。
*ユーロ円「4日連続陰線でボリバン3σ下限へ」
日足、再び4日連続陰線、ボリバン3σ下限へ。9月26日-11月11の上昇ラインがサポート。11月10日-11日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線下向き。
週足、2週連続陰線。9月26日週-11月7日週の上昇ラインがサポート。10月31日週-11月7日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、ボリバン3σ上限から反落。今月は陰線スタート。9月-10月の上昇ラインを下抜くか。3月-8月の上昇ラインがサポート。
年足、2年連続陽線。今年も3月に陽転。14年-21年の下降ラインを上抜く。12年-20年の上昇ラインがサポート。
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