執筆:外為どっとコム総合研究所 中村 勉
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目次
豪ドル/円はRBAの様子見姿勢が重しに。米CPIが豪ドル売りを加速させる?
今週の振り返り
今週の豪ドル/円、NZドル/円はともに上昇。豪ドル/円は92.56円前後で週初を迎えました。10月4日には豪準備銀行(RBA)が市場予想(0.50%)を下回る0.25%利上げを実施したことで豪ドル売りが強まる場面もみられました。他方で、石油輸出国機構(OPEC)参加国と、ロシアなどのOPEC非参加国とで構成されるOPECプラスが大幅な減産を決定したことが、資源国通貨である豪ドルの支えとなり94.69円前後まで上値を伸ばす結果となりました。
NZドル/円は80.90円前後で週初を迎えました。前述したOPECプラスの大幅減産や、NZ準備銀行(RBNZ)が0.50%の大幅利上げを継続したことがNZドル買いの材料となり、84.01円前後まで上値を伸ばしました。
週後半は米連邦準備制度理事会(FRB)高官による相次ぐタカ派的発言により、米国の大幅利上げが続くとの思惑が広がり豪ドル、NZドルは対米ドルでの売りが強まりました。その結果、豪ドル/円は92.60円前後、NZドル/円は81.70円前後まで押し戻される結果となりました。
RBAとRBNZの金融政策と今後
10月4日にRBAが翌5日にRBNZがそれぞれ金融政策会合を開催しました。結果は前述の通りRBAが0.25%利上げ、RBNZが0.50%利上げとなりました。双方ともに利上げ幅縮小の可能性を予め示していました。
市場では「RBAは今月は0.50%利上げで、0.25%に利上げ幅を縮めるのは11月」といった予想が大勢でした。そのため、今回のRBAの決定に多少の驚きはありました。これまでのRBAの声明を見返すと「インフレ抑制と経済の安定を目指す」といった文言があります。これは米連邦準備制度理事会(FRB)の「経済の減速に目を瞑ってでも、インフレを抑制する」というスタンスとは一線を画します。RBAは6月以降4会合連続で0.50%利上げを実施してきました。今回の世界的なインフレの一因とされるエネルギー価格は6月をピークに下落しており、それに合わせて豪州の貿易黒字も減少しています。様子見のタイミングとしては丁度良かったかもしれません。
RBAは今後については、これまで同様に「将来の利上げのタイミングと規模は、今後のデータとインフレ、労働市場への評価次第」としています。先月から新たに公表されるようになった月次消費者物価指数(CPI)を見ると、6月~8月はインフレ率が7%前後(※表1参照)まで上昇しています。RBAは年末までにインフレ率が7%台後半まで上昇することを予想していますので、9月の月次CPIが大幅な伸びを見せない限りは「RBAの予想の範囲内」ということになります。もちろん、今後のデータ次第ではありますが、データが出揃うまでは「RBAの11月の利上げ幅は0.25%」というのが市場予想の中心となります。他方で、米国は大幅利上げを継続する見通しが強まっています(現時点で年末までに1.25%利上げが予想されている)。米豪の金利差から豪ドルは対米ドルで売られやすくなりそうです。米ドル/円は財務相・日銀による為替介入への警戒感が残っているため、大きく上値を伸ばすのはなかなか想像できません。そのため、豪ドル/円に上値は限定的で下げやすいと考えています。
表1:【豪月次CPIと四半期CPI推移】
一方でRBNZですが、9月27日にオアRBNZ総裁が「中銀にはまだやるべきことはあるが、引き締めサイクルは非常に成熟した段階に入っている」と発言しました。以前にもオア総裁は利上げ幅縮小を示唆する発言をしていたこと、そしてRBNZ金融政策会合の前日にRBAが利上げ幅を縮小したことで、「RBNZも利上げ幅を縮小するのか?」といった憶測が強まっていました。しかし、ふたを開けてみるとRBNZは6会合連続となる0.50%利上げを実施。しかも、声明には0.50%か0.75%かで議論したと示されていました。市場が予想していたよりもRBNZはタカ派的な姿勢だったことからNZドルは買われ、利上げ発表後にNZドル/円は83.40円前後まで1.2円近く上昇しました。既出の通り米国は大幅利上げを継続する見通しとなっています。RBNZも0.50%利上げを継続する見通しですが、対米ドルでは売り圧力が勝りそうです。
来週は豪・NZ以外でも注目イベントあり
豪、NZ国外となりますが、来週は注目のイベントが数多く予定されています。まず11日には国際通貨基金(IMF)が四半期毎の世界経済見通し(WEO)を発表します。10月6日にIMFのゲオルギエバ専務理事がロシアのウクライナ侵攻や世界中で相次ぐ自然災害などの影響により、2022年、23年の世界全体の成長率予想を前回発表した7月時点よりも(22年:3.2%、23年:2.9%)「下方修正されるだろう」と語っています。どの程度の修正となるかはわかりませんが、修正幅が大きければ大きいほど資源国通貨である豪ドルとNZドルにはマイナス要因となりますので要注意です。
その他、13日には米9月CPIが発表されます。FRBの今後の利上げ幅を占う重要指標となります。結果が豪ドル、NZドルにも大きく影響を及ぼす可能性がありますので注視したいです。
テクニカル的には
豪ドル/円は日足一目均衡表の雲を上下に行ったり来たり。方向感を模索している状態です。現時点では基準線が95.46円付近にありますので、そのレベルが上値目途となりそうです。他方で、日足の終値ベースで92.130円(9/28安値)を下抜けると、基準線が下向きとなり下降トレンドとなりますので、一段の下落を想定しても良さそうです。その場合の下値目途は節目となる90.00円前後が意識されやすくなりそうです。
【豪ドル/円 日足チャート・一目均衡表】
予想レンジ:
AUD/JPY:90.00-95.50、NZD/JPY:79.50-84.50
10/10 週のイベント:
10/08 (土) 10:45 中 9月Caixinサービス業PMI
10/11 (火) 08:30 豪 10月ウエストパック消費者信頼感指数
10/11 (火) 09:30 豪 9月NAB企業景況感指数
10/14 (金) 10:30 中 9月消費者物価指数(CPI)
10/14 (金) 10:30 中 9月生産者物価指数(PPI)
10/14 (金) 未定 中 9月貿易収支
一言コメント:
今週末はF1の日本グランプリですね!筆者はF1も好きで、米国在住時にはアメリカグランプリを観に行きました。今は分かりませんが、当時はアメリカでのF1人気はそこまで高くなく(NASCARやインディーが人気)、格安でホームストレートの先頭列で観戦した記憶があります(記憶が正しければ$80くらい)。先日の休暇で、実は鈴鹿サーキットにも行ってきました。レースに関係ない平日に行ったのですが、良い雰囲気でした(あと鈴鹿市内で食べた松阪牛の焼肉が美味しかったです)。日本グランプリも観に行きたいのですが、金額が…中継を見て楽しみたいと思います。
中村 勉(なかむら・つとむ)
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー(株)へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
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