執筆：外為どっとコム総合研究所 中村 勉
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目次
豪ドル/円は国内景気もさることながら、欧米の景気が気になる…
今週の振り返り
米国が独立記念日だった7月4日。「バイデン米大統領が今週中にも対中関税の一部引き下げを決定する」との報道を受けて、中国と交易関係の強い豪ドル、NZドルは買いで反応。5日には中国Caixinサービス業PMIが予想（49.6）を大幅に上回る結果（54.5）となったことで、豪ドル/円は93.90円前後、NZドル/円は84.88円前後まで上値を伸ばしました。しかし、欧州のリセッション懸念が強まり市場は一気にリスクオフへの警戒感を強めました。これにより豪ドル/円は91.53円前後、NZドル/円は83.02円前後まで結果となりました。
RBNZの利上げは？
13日にはNZ準備銀行（RBNZ）の政策金利発表が予定されています。2022年第1四半期のGDPが輸出の不調の影響もあり予想外のマイナス成長だったことや国内の景況感は悪化していることなど、NZ経済は減速の懸念が燻っています。NZの第1四半期のCPIは前年比+6.9%でした。4月以降も物流の混乱や資源価格の高止まりの影響から他の主要国同様にインフレが加速している可能性は高いです。前回、5月25日に0.50%の利上げを実施した際には、RBNZは声明で「CPI上昇率が目標レンジ内に収まると確信できるまでは利上げを継続する」と表明しています。6月10日にはロバートソン・NZ財務相が「NZ準備銀行（RBNZ)はインフレと戦う中央銀行であり続ける」との発言をしています。そういったことから今回の会合でも市場ではRBNZが0.50%の利上げを実施し、政策金利を2.50%にすることが予想されています。仮に予想通り利上げが実施されたとしても、NZ経済が減速の兆しを見せていることや世界経済の減速（リセッション）懸念が強いことからNZドルの上値は重くなると予想しています。特に隣国のオーストラリアは、政策金利はNZよりもまだ低いですが、労働市場が堅調です。オーストラリアとの比較から対豪ドルではNZドルは売られることとなりそうです。
豪労働市場は堅調な成長を維持できるか？
14日には豪6月雇用統計が発表されます。前回の予想と結果は下の表の通りです。
【5月 豪雇用統計】
5月の豪雇用統計は予想を大きく上回る強い結果となりました。特に、正規雇用者数が大きく伸びていたことは平均賃金の上昇を連想させることや、企業の経営状態が良いことから、かなりポジティブな内容だったと言えると思います。今回の予想を見てみますと、労働参加率は前回記録した統計開始以来最高の66.7%を維持して、雇用者数が2.75万人増加。失業率は3.8%に低下して統計開始以来最低（一番良い）となっています。予想に近い結果はもちろんですが、雇用者数変化がマイナスにならなければ、豪経済の減速懸念は台頭しないのではないでしょうか。
来週も豪ドル相場のメインドライバーは…
現在の市場のメイントピックは欧米経済の減速（リセッション）への警戒感の増減となっています。来週は特に米国で米6月消費者物価指数（CPI）、7月ミシガン大学消費者態度指数など、注目経済指標が多数発表されます。これらの結果を受けて米国経済がリセッション入りすることへの懸念が強まれば、資源需要の減退観測に繋がります。そうなれば資源国通貨の豪ドルは下値を拡大することとなりそうです。
テクニカル的には
豪ドル/円の下値は7月1日安値の91.416円が目先の下値目途となりそうです。日足で見ると来週は雲下限が92.088円前後まで切り上がります。すでに①転換線が基準線の下、②遅行線がローソク足の下を達成しています。終値で雲下限を下抜けると、売りサインと解される三役逆転が点灯します。その場合は、節目となる90.00円や、週足一目均衡表・基準線の88.62円付近が目途となりそうです。上値は先々週（6/20週）、先週（6/27週）の高値が94円台後半～95円台前半なので95円前後とみています。
【豪ドル/円 日足チャート・一目均衡表】
予想レンジ：
AUD/JPY：88.50-95.00、NZD/JPY：80.00-85.00
7/11 週のイベント:
07/12 (火) 09:30 豪 7月ウエストパック消費者信頼感指数
07/12 (火) 10:30 豪 6月NAB企業景況感指数
07/13 (水) 未定 中国 6月貿易収支
07/13 (水) 11:00 NZ ニュージーランド準備銀行（RBNZ、NZ中央銀行）政策金利
07/14 (木) 10:30 豪 6月雇用統計
07/15 (金) 11:00 中国 4-6月期四半期国内総生産（GDP）
07/15 (金) 11:00 中国 6月小売売上高
07/15 (金) 11:00 中国 6月鉱工業生産
一言コメント：
今週末は「本邦の参議院」の選挙です。オーストラリアは義務投票制を採っており、正当な理由もなく投票しなかった場合には罰金が科されることになっています。そのため、オーストラリアの投票率は毎回90%を超えています。日本では令和元年の参院選では投票率が50%を切っています。私が19歳の時に米国で寮暮らしをしていた時に、ルームメイトが大統領選のテレビ討論会を凄く真剣に見ていたことに衝撃を覚えたことは今でも覚えています。みなさん、選挙行きましょうね。
外為どっとコム総合研究所 調査部 研究員中村 勉（なかむら・つとむ）
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー（株）へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から（株）外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
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