執筆:外為どっとコム総合研究所 中村 勉
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目次
豪ドル/円は底堅い?RBAは利上げサイクル入り
今週の振り返り
今週の豪ドル/円は91.68円付近で週初を迎えました。3日の豪準備銀行(RBA)理事会でRBAが市場の予想を上回る0.25%利上げを実施したことにより、93円手前まで上昇。4日には米連邦公開市場委員会(FOMC)後に連邦準備制度理事会(FRB)もパウエル議長が定例記者会見で0.75%の利上げについて、「積極的に検討していない」と述べたことから、米金融引き締めに対する過度の警戒感が和らぎ、米株価の上昇を支えに豪ドル/円は94.03円まで上昇しました。ただ、5日には米国の金融引き締めが早いものになるとの思惑が再び強まった結果、NYダウ平均が大幅に下落。豪ドル/円は92.29円付近まで売りに押される格好となりました。
RBAは利上げサイクルに入った
4月27日に発表された豪1-3月期四半期消費者物価指数(CPI)において、基調インフレ率が3.45%まで上昇し、RBAの目標である2~3%をついに上抜けました。これによって、市場では、RBAが5月の理事会で0.15%の利上げを実施するとの予測が強まりました。元々、「今回のCPIと5月18日に発表される1-3月期賃金指数(WPI)の結果を見てから利上げ開始」と見られていましたが、予想を上回る強さを見せたCPIの結果を受けて「とりあえず0.10%の政策金利を0.25%にする」との予測となったのです。しかし蓋を開けてみれば、RBAは0.25%の利上げを実施しました。これはRBAの持っているデータとそれに基づくCPIや労働市場の予測が、これまでのそれよりも上振れており、「とりあえずの0.15%利上げでは足りない」との判断をRBAが下したことになります。RBAは利上げを開始すると継続して利上げを行う習性があることや、既に先行して利上げを開始している他の主要国でもインフレ上昇が止まっていない状況を見ると、RBAが今後も継続して利上げを行うことは予想が付きます。市場では今年の残りのRBA理事会(7回)で合計2.5%以上の利上げを行うことが既に織り込まれています。こういった金利の先高観や原油などの資源逼迫懸念が、引き続き豪ドルを支える要因となりそうです。
相場の主役が円安からドル高へ
これまでの豪ドル/円をはじめとしたクロス円相場は、金融引き締めを開始した主要国と、何が何でも金融緩和を続けようとする日銀(日本)との金融政策の差がクローズアップされた形で、日本円が全面安という流れでした。しかし、米FRBが利上げの速度を加速させるとの見方が強まったことによる、米ドル高が相場の主役となっています。FRBが金融引き締めを早めることにより、市場に出回っていた(FRBが供給した)資金が回収されることになります。その懸念からNYダウ平均をはじめとした主要株価は売られやすい状況となりました。豪ドルやNZドルと言った資源国通貨は株価の動向に連れやすい通貨としても知られています。景気が良ければ資源需要も旺盛となり、資源国通貨にとってはプラス。しかし、金融引き締めを開始するということは、加熱した景気を冷ますことを目的としているため、自ずと資源需要は減退します。その結果、資源国通貨は株価同様に売られやすい状況となってしまいます。豪ドル/円はRBAの利上げ観測もあることから大きく崩れることはないとは思いますが、これまでの様に一本調子で上昇ということにはならなそうです。
中国のロックダウンは続く
中国での新型コロナウイルスの感染拡大状況も引き続き豪ドル売りに繋がる要因です。中国最大の経済都市であり、世界最大の貿易港を持つ上海の新規感染者数は減少傾向となっています。ただ「1人でも新規感染者が出れば14日間ロックダウン延長」というゼロコロナ政策が敷かれていますので、ロックダウン解除の目途は見えていません。また、首都北京では上海のような感染拡大を防ぐために、複数の地下鉄駅の封鎖や路線バスの運休と言った防止策がとられています。世界の工場である中国の封鎖は世界経済にも大きな負の影響を与えます。豪ドルにとっては、世界的な資源需要が減るだけでなく、中国との強い交易関係が足枷となってしまいます。
注目は米経済指標
材料別に豪ドルの状況を見てみると、豪ドル売りの材料が多数存在することに気付かされます。ただ、「それよりも円売り材料が強い(円を買う材料がない)」というのが、現状です。来週は豪に主要な経済指標はなく、他方で米国では11日に米4月消費者物価指数の発表が控えています。執筆時点では発表されていない米4月雇用統計の結果もですが、これらの米国の経済指標の結果が豪ドル相場にも大きく影響を与えそうです。
テクニカル的には
豪ドル/円の上値は3月28日以降幾度となく、上値を抑えてきた93円台後半~94円台前半の抵抗帯(桃色帯)が上値目途となりそうです。この帯を上抜けることが出来れば、4月20日高値の95.738円が次の目途となります。下値は一目均衡表の雲が90.70円前後まで上昇してきています。4月27日安値の90.43円と合わせて、90円半ばから後半が目途となりそうです。
【豪ドル/円 日足チャート・一目均衡表】
予想レンジ:
AUD/JPY:90.50-96.00、NZD/JPY:82.50-86.00
5/9 週のイベント:
05/09 (月) 未定 中国 4月貿易収支(米ドル)
05/10 (火) 10:30 豪 4月NAB企業景況感指数
05/11 (水) 09:30 豪 5月ウエストパック消費者信頼感指数
05/11 (水) 10:30 中国 4月消費者物価指数(CPI)(前年同月比)
05/11 (水) 10:30 中国 4月生産者物価指数(PPI)(前年同月比)
一言コメント:
GWに多摩動物公園に行ってきました。ライオンのいるところをバスで通る人気アトラクション「ライオンバス」は、開園直後に長蛇の列ができ、チケット購入まで2時間半待ち。そこからバスに乗るのにさらに2~3時間待ちと言われたので諦めました。狙っていたわけではないのですが、行った日が偶然にも無料開園日だったこともあったようです。
中村 勉(なかむら・つとむ)
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー(株)へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
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