▼バイデン政権の誕生はメキシコにとってプラス?マイナス?
▼金融政策
▼メキシコペソの予想
バイデン政権の誕生はメキシコにとってプラス?マイナス?
1月20日にバイデン米大統領が就任しました。トランプ前大統領とは通商交渉や国境の壁をめぐり、かなりメキシコには逆風が吹きました。メキシコにとってのバイデン大統領のメリット、デメリットを考えてみたいと思います。
まずはメリットですが、バイデン政権は移民に対しては寛容になりますから、ここに関してはメキシコとの摩擦要因が一つ減るでしょう。
バイデン大統領は14日に経済対策案のARP(American Rescue Plan)を発表しました。この対策は総額1.87兆ドルの経済対策です。この対策の中には家計向けの1人あたり1400ドルの現金給付、失業保険の加算給付週400ドルと期限の9月末までの延長、育児支援、家賃支援などが含まれます。この対策が満額議会を通過すれば米国の消費の底上げにはかなりインパクトがあるのではないかと思います。そうなると輸出の8割を米国に頼るメキシコ経済にとってはプラス材料になるでしょう。
ただARPに関しては議会での全額の通過は難しいのではないといわれており、対策費の総額はかなり減額される可能性もあります。
一方でバイデン大統領は脱炭素社会を目指しますから、脱石油の流れになるでしょう。そうなると産油国のメキシコにとっては向かい風になる可能性もあります。
金融政策
先月も書きましたが2月11日のメキシコ中央銀行の金融政策決定会合で利下げの可能性があります。
12月17日の金融政策会合でメキシコ中銀は政策金利を予想通り4.25%に据え置きました。11月の消費者物価指数が前年同月比3.33%、コア指数が3.66%と、10月の4.09%、3.98%から低下したことで様子を見る姿勢を示しました。
1月7日に発表された12月の消費者物価指数は前年比3.15%と低下しましたが、コア指数は前年比3.8%と11月の3.66%から上昇しました。
コア指数は若干上昇しましたが消費者物価指数はメキシコ中央銀行のインフレ目標である3%±1%を下回っており、政策金利は4.25%と実質金利は高めに維持されており、このことはメキシコペソを支える材料にもなっています。
とはいえ新型コロナウイルス感染者の拡大を受けているメキシコは、経済の刺激も必要で前回の会合では5名中2名の委員が0.25%の利下げを主張しました。
1月から新たに中央銀行の理事が就任しました。12月末でタカ派のグスマン副総裁が任期を迎えて退任したことによる交代ですが、オブラドール大統領の指名を受け上院も承認したボルハ国庫庁長官はハト派である可能性が高いでしょう。
このことを考えると利下げのハードルが下がる可能性が高く、前回の理事会の声明文でも需給ギャップに関して言及しており、今後はインフレ率から需給ギャップに軸足を移して再び利下げスタンスに戻る可能性はあると思います。
出所:メキシコ統計地理情報院 Instituto Nacional de Estadística y Geografía (INEGI)
メキシコペソの予想
1月のドルメキシコは19.87付近でスタートし21日には19.549ペソまでドル安ペソ高となりましたが26日に20.291ペソまでドル高ペソ安となっています。11月4日の大統領選挙後に節目の20.80ペソを下抜け後にドル安ペソ高が続いています。これはペソが強いわけではなく、米大統領選後のリスク選好の流れで特に新興国通貨が堅調になった流れにも影響を受けています。
20.30ペソ付近に75日移動平均線、20.20ペソに一目雲均衡表の下限、20.80ペソが雲の上限になっており、この20.30~80ペソのゾーンが短期的には重要なレジスタンスになっています。ここを上抜けできないようであれば19.50~20.80ペソのレンジで堅調なペソの動きが継続と予想します。
ペソ/円は2月の高値6.011円~4月の安値4.222円のフィボナッチ・リトレースメント38.2%戻しの5.325円付近がレジスタンスとなっています。
5.11円が50%戻しになりここがサポートとなり、ここが維持できれば5.11~5.325円のレンジが予想されます。
5.11円が下抜けする場合は一目均衡表の雲の下限が位置する5.03円付近への下落を予想します。
メキシコペソ 特設サイト:
メキシコペソ(MXN)の特徴と今後の見通し│初心者にもわかるFX投資 | 外為どっとコムのFX
株式会社ADVANCE代表取締役 米系のシティバンク、英系のスタンダード・チャータード銀行で、20年以上にわたり、為替ディーラーとして活躍。現在は投資情報配信を主業務とする株式会社ADVANCE代表取締役。ドル、ユーロなどメジャー通貨のみならず、アジア通貨をはじめとするエマージング通貨でのディーリングについても造詣が深い。また、海外のトレーダー、ファンド関係者との親交も深い。YouTubeなどで個人投資家に対して為替に関する情報を発信しており、人気を博している。