総括
バイデン大統領の景気対策を期待、円安だがドル円では伸び悩み
ドル円=103-108、ユーロ円=122-127 、ユーロドル=1.16-1.21
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨5位、株価7位、景気は企業中心に持ち直し、消費はまだ弱く円安に繋がらず」
10月に入って円安が進んでいる。円相場は主要12通貨で11位でトルコに次いで弱いが、ドルも10位で弱い。先週のドル円は106円の売りが厚く週足では陽線だが、上ヒゲが長くまだ調整のドル下げがありそうだ。ボリバン下限から上昇して上限近くで反転したので違和感はない。ドル以外の通貨に対しては総じて円は弱く推移している10月だ。
景気は持ち直している報道が多い。日銀さくらリポートで全9地域中、8地域の景気判断を引き上げた。8地域で判断を引き上げるのは、2013年10月以来となった。経済活動の再開で景気持ち直しの動きが広まった。輸出も持ち直している。ただ8月の家計調査は、実質前年比6.9%の減少。昨年の消費税率引き上げ以降、11カ月連続の減少。また8月の実質賃金は前年比1.4%減と6カ月連続で低下した。企業中心の景気回復は進んでいるが、個人消費はまだ冴えない。「GO TO」ものの景気指標への繁栄はまだのようだ。消費が盛り上がらないと輸入も増加せず輸出だけの増加に終わると円高要因となる。
北朝鮮の党創建75周年の軍事パレードや新型ICBM公開は気になるところだ。
*米ドル「通貨6位、株価(NYダウ)6位、バイデン大統領・民主党の景気対策を期待」
トランプ大統領のコロナウィルス感染や米国追加経済対策協議難航などがありながら10月はリスク選好の流れとなり米株や世界の株価は上昇している。先進国経済では、政治が明らかに失策しない限り、民間企業は前に進んでいく。トランプ大統領の奇策も市場は慣れれば無視できるようになった。民間企業を後退させるものは現在は英国のEU離脱くらいだろう。バイデン大統領誕生ならば増税で景気回復が損なわれると言う観測もあったが、今はバンデン大統領なら、民主党が上院で過半数を獲得する公算も大きく民主党が政権を奪還すれば、大規模な景気対策が策定される可能性が高まるという見方も出てきた。
トランプ大統領式の一度ぶっこわす的な発言をして徐々に譲歩する政策でもいいが市場には新鮮味がなくなってきた。また米中貿易戦争でも米国からの中国への輸出は伸びず、ただ高い関税を払うだけでは
中国への強気の政策も信頼感を失う。
市場もそういう理解が深まりリスク選好が進む。貿易赤字拡大とともなってドル安とリスク選好が続く。年後半は欧州のリパトリもありドル安の中で円安も進む。
*ユーロ「通貨2位、株価8位(DAX)、5か月ぶりの月足陰線からのすぐ回復するユーロ」
どの国もコロナ感染拡大抑制で経済をストップさせていたので、それなりに前月比、前期比で景気は回復し始めている。中国のような前年比では拡大できないが、他の先進国では似たり寄ったりだ。そこへ米大統領選挙の混乱でユーロに分がある。もちろん底辺にはユーロ圏の膨大な貿易黒字と米国の膨大な貿易赤字という需給格差があり、ユーロ高は素直な動きである。
9月はユードルが5か月ぶり陰線となり、もう少し調整があるかと思ったが再び上昇している。インフレが抑制されているのでECBからはユーロ高牽制もあるが実弾介入があるわけでもないので慣れれば買戻しが出てくる。マドリードに非常事態宣言などコロナ感染第2波の報道もあるがそれは米国も同じことだ。バイデン大統領誕生でも景気拡大はあるとの見方もありリスク選好の株高ドル安が続く。すなわちユーロ高だ。ラガルドECB総裁も、コロナ感染の第2波が「逆風」となるものの、経済活動は力強く持ち直しているとし、経済に対しそれほど大きな懸念は示さなかった。ECBはパンデミック緊急購入プログラムの買い取り枠を1兆3500億ユーロに維持すると決定。買い入れ期間は少なくとも来年6月末までとし、2022年末までの再投資継続を確認し市場を落ち着かせた。
*ポンド「通貨9位、株価14位、10月15日が交渉期限」
ドルや円も秋になってからはやや弱含んでいるのでポンドもリバウンドする場面もあるが、対ユーロでは年初来7.23%安、FT株価指数は20.23%安と英国の弱さを露呈している。その中で今週10月15日はジョンソン首相が、協議の膠着状態が続けば、EUとのFTA合意を断念するとした期限の日だ。ゴーブ英内閣府担当相は「FTA合意の確率は66%、合意を望んでいるが、いかなる代償を払ってでも合意するわけではない」と述べた。 EUのミシェル大統領は「EUも合意を望んでいるが、いかなる代償を払ってでも合意するつもりはない」と返した。
英国のジョンソン首相の支持率が急落し、野党党首の支持率を下回り始めた。コロナ第2波感染拡大もある。元々貿易赤字の国だからポンド高には持続性はない。スナク財務相は、期間6カ月の新たな雇用支援策を発表した。新型コロナウイルスの感染拡大抑制策で事業が継続できなくなった事業主を支援する。それでも前途多難だ。
*豪ドル「通貨4位、株価11位、景気対策発表で再上昇」
9月は対ドル、対円で6か月ぶりに陰線となったが10月は盛り返している。コロナ感染拡大、財政赤字の拡大はあるが世界水準から見れば、どちらも抑制されている。中国との外交摩擦がなければ、さらに豪ドルも強含んでいただろう。
RBAは政策金利を0.25%に据え置いた。ただし、新型コロナウイルス禍で大打撃を受けた経済を支援するため、追加措置を講じる可能性を示唆した。豪ドルは、過去数年のピーク時の水準をわずかに下回っているとして、先ずは問題なしとした。それに加えて豪ドルを再び強含ませたのは政府予算の発表だ。
政府は6日に発表した経済対策で、インフラ投資や減税に今後4年間で970億豪ドルを充てると表明した。国内総生産(GDP)の1割弱に相当する財政出動で、新型コロナウイルス禍により29年ぶりの景気後退に陥った経済を立て直す。フライデンバーグ財務相は今年度(2020年7月から21年6月まで)予算を発表した。数十億ドル規模の減税と歳出により雇用を促進し、新型コロナウイルスの影響で低迷する経済の回復を目指す。その一方で財政赤字は過去最高水準となる。向こう4年間で100万人の新規雇用を創出する計画を打ち出し、雇用促進のための新規プログラムに52億豪ドルを振り向けたほか、個人向けに178億豪ドル規模の減税を盛り込んだ。
政府が示した最新の経済見通しによると、失業率は今年度末に7.25%へ上昇するが、2023年6月には6%へ低下する見込み。GDPは今年度は1.5%のマイナスとなり、来年度は4.75%の成長に戻るとしている。
*NZドル「通貨7位、株価4位、17日に総選挙、与党が単独過半数を獲得できるか」
ノーベル平和賞候補ともなったアーダーン首相が総選挙を10月17日に迎える。世論調査の支持率では与党・労働党が最大野党・国民党を大きく上回る。新型コロナウイルス抑制策のほか、分配を意識した高所得層や大企業への増税公約がうけているもようだ。9月下旬時点で労働党の支持率は47%で、国民党の33%を引き離している。単独過半数の獲得も可能な勢いだ。労働党は2017年の前回総選挙で9年ぶりに国民党から政権を奪取した。だが、議会勢力は46議席にすぎず、国民党の54議席を下回った。少数政党との連立や閣外協力で過半数を確保した。
選挙戦で労働党は若年層の職業訓練やインフラ投資による雇用創出を打ち出している。その費用にあてるため年収18万NZドルを超える高所得層を対象に増税する。米グーグルなど巨大IT企業に対するデジタルサービス課税の導入も検討すると公約した。また国内の住宅不足や価格上昇に取り組む政策を打ち出した。
テクニカル分析
*ドル円「先週は上ヒゲ長い。日足は雲の下へ」
日足、10月7日-8日、5日-7日の上昇ラインを下抜く。10月2日-9日、9月18日-22日の上昇ラインがサポート。10月8日-9日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向き。雲の下へ。
週足、ボリバン下限下抜きから戻すが9月21日週-28日週の上昇ラインを下抜く。3月9日週-9月21日週の上昇ラインがサポート。6月8日週-10月5日週の下降ラインが上値抵抗。先週は上ヒゲ長い。雲の下
月足、3月-9月の上昇ラインがサポート。ボリバン下限下抜きからはバンド内へ戻す。8月-9月の下降ラインが上値抵抗。雲の下。
年足、4年連続陰線。16年-19年の上昇ラインは再び下抜く。16年-17年の下降ラインが上値抵抗。
*ユーロドル「再びもみ合った1.18台へ上昇(週足)」
日足、10月6日-8日の下降ラインを上抜く。10月8日-9日の上昇ラインがサポート。5日線上向き。雲中。
週足、9月21日週-28日週の下降ラインを上抜く。9月28日週-10月5日週の上昇ラインがサポート。9月7日週-14日週の下降ラインが上値抵抗。ボリバン上位。再びもみ合った8月、9月の1.8台。
月足、9月は漸くボリバン上限からバンド内へ戻す。ただまだ底堅くボリバン上限に。2-5月のボリバン下限以下からの上昇であったが9月は5か月ぶりの陰線となった。7月-9月の上昇ラインは下抜く。雲中。
年足、2年連続陰線。今年は陽転。18年-19年の下降ラインを上抜く。02年‐17年の上昇ラインがサポート。14年‐18年の下降ラインも上抜く。11年‐14年の下降ラインが上値抵抗で上昇を阻む。
*ユーロ円「月足が5か月ぶりの陰線の後は反発」
日足、9月1日-10日の下降ラインを上抜く。上値はボリバン上限の125.44、雲上限の125.72が抵抗。10月8日-9日の上昇ラインがサポート。5日線上向き。
週足、ボリバン上位から下落も中位で反発。9月14日週-28日週の下降ラインを上抜く。9月28日週-10月5日週の上昇ラインがサポート。
月足、9月はボリバン上限から反落。10月再び盛り返す。7月-9月の上昇ラインがサポート。18年10月-20年9月の下降ラインが上値抵抗。
年足、2年連続陰線。今年は陽転。18年-19年の下降ラインを上抜く。16年-20年の上昇ラインがサポート。15年-18年の下降ラインが上値抵抗。
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