総括
どんなショックも落ち着くものだ。9月前半は面白い。緊急三者会議をやろう
ドル円=103-108、ユーロ円=123-128 、ユーロドル=1.16-1.21
通貨ごとの注目ポイント
*円通貨3位、株価8位、どんなショックも落ち着くものだ。9月前半は面白い。緊急三者会議をやろう
(菅氏が総裁選挙出馬を決断したようだ。香港に代わるアジアの国際金融拠点の日本国内での形成を「実現したい」と意欲を示している)
たいていのショックは乗り越えて通常軌道に戻る。コロナ感染ではいち早く世界のいくつかの株式市場が回復し、現在はワクチン開発待ちだ。安倍首相辞任も新たな首相が決まれば市場も平穏となる。もちろん市場に対峙し発言できる人材が必要だ。市場を無視すれば、以前のようにコロコロと首相が代わる時代となるが、そのあたりは認識されているだろう。
9月は面白い。11日に日銀短観と同内容の法人企業景気予測調査の発表、14日に自民党総裁選挙、17日に日銀政策決定会合と続く。3四半期連続マイナス成長に景気対策や自民党の一部から出ている消費減税がでるかどうか。ただいろいろあってもワクチンが実用化されればコロッと世界は明るくなる。政府としては財務省・日銀・金融庁の緊急会議を開催して時間稼ぎをすれば良い。回復しつつある世界の株式市場から取り残されないように出来るかどうか。
基本的な秋から晩秋の円安気味の実需の為替需給は変わらないが、価格が下がり続ければ恐怖感から短期筋の損切は続く。ただコロナ下での巻き戻しのような現象は、市場を落ちつかせる首相が出れば起きる。現状のドル円はまだ104.80に損切売りが入っているようで落ち着かない。テクニカルでは日足、週足、月足がボリバン下限。8月28日はボリバン上限から一気に下落もきっちり下限で踏みとどまった。
*米ドル通貨8位、株価(NYダウ)5位、政治はともかく民間は強い米国
米経済は回復している。多くの指標が前月比で改善している。中国のように前年比でも改善すれば完璧となる。ナスダックは前初来30%高となり、2019年の年間35%高に迫ってきている。NYダウも先週年初来でプラス圏へ回復した。大統領選挙戦が始まり、両候補の政策の違いが取沙汰されてくるが、米国の株価は誰が大統領になろうと戦後は着実に上昇している。幾多の経済ショックがあろうとも。それだけ民間の経済力が強いのだろう。古い産業は淘汰され新しい産業が勃興する歴史の繰り返しだ。その流れに逆らう競争力を失った産業を保護しても非効率で、その力を失っていく。日本との経済摩擦で保護した米自動車産業は今も弱体したままだ。
商取引は政府が行うものでなく、当事者の経済的利益を極大化するもので、中国貿易を政府が制限しても弱小産業の復活とはならない。心配なのはまだ先の話だが大統領選挙でトランプ大統領が敗北した場合にそれを受け入れないと予め発言していること、無用の歳月を費やすかもしれない。
パウエルFRB議長はインフレが2%をオーバーシュートすることを容認する可能性を示唆した。ただこのところの長期金利は他国同様に経済指標改善で上昇している。FRBだけでなく世界の中央銀行は基本的には経済ファンダメンタルズに沿って動くだけで奇異なことはしない。今週は米雇用統計があるが市場はその数値のブレが大きすぎて反応できないようだ。
*ユーロ通貨2位、株価6位(DAX)、上昇一服も底堅く、次の飛躍を狙う
独中心の経済回復、大規模な景気対策でユーロはテクニカルに1.20前で足踏みしているが底堅い。米中の経済軍事対立があり、その避難通貨としても買われている。コロナウィルス感染対策でも万全を期している。EUは、英製薬大手アストラゼネカの新型コロナウイルスワクチン候補を少なくとも3億回分購入する契約の前払い金として3億3600万ユーロを支払った。
また米国の中国デカップリングの動きにも単純には同調していない。 ドイツテレコムは、いかなる通信機器ベンダーも政治的理由で独市場から締め出されるべきではないとし、国家安全保障上の懸念を理由とする中国通信機器大手・華為技術(ファーウェイ製品)の排除に反対を再表明した。ファーウェイは、ドイツテレコムが次世代通信規格「5G」網を構築する上で主要なサプライヤーの立場にある。
*ポンド通貨6位、株価15位、ポンドは上昇も株価は世界でも脆弱国の一つ
英ポンドは依然、年初来ではユーロの後塵を拝しているがここ最近はユーロより強い。ただポンド高は株価を直撃し年初来20%安で独DAXの1%安に大きく差をつけれらている。世界でも最弱の部類に入る株価である。8月の総合PMIは7月の57.0から60.3に上昇し約7年ぶりの高水準となった。7月小売売上は消費者の強い需要に支えられて大幅に増加し、新型コロナウイルスの感染拡大前を上回った。前月比3.6%増、前年比では1.4%増。4月と5月の2桁の落ち込みから急回復を遂げた。
ただEU離脱後交渉は進展が見られず、年末の期限が刻一刻と迫る中、双方の首席交渉官は膠着状態を互いに非難した。EUのバルニエ首席交渉官は、「今週の交渉が迅速に進展すると期待していた人たちは失望しただろう」と述べた。英のフロスト首席交渉官は、離脱後交渉での合意は「まだ可能」で、引き続き英国側の目標だが、合意達成は容易でないと指摘。声明で「未解決な重要分野がある。交渉官同士で幅広い理解がある場合でも、対処すべき箇所は多い一方、残された時間は少ない」とした。
*豪ドル通貨3位、株価11位、30年ぶりの景気後退だがコロナ感染からは回復し底堅い
対円、対ドルで5か月連続陽線となりそうだ。RBAはこれまでの政策措置が「おおむね予想通り」機能し国内の大半で景気回復が進んでいるとし、現時点で追加緩和措置を実施する必要はないとの見解を示した。豪はマイナス金利導入を否定している。今週の政策金利決定では0.25%に据え置かれるようだ。2Q・GDPは前期比6%減、前年比で5.2%減と大幅減速が予想されているが、他国同様にコロナ感染での経済活動制限があったので仕方のないところで市場も大きくは反応しないだろう。30年ぶりの景気後退入りが確認されることにはなる。2Qの企業の設備投資は5.9%減の261億豪ドル。減少率は予想の8.4%を下回った。今後の設備投資計画も、予想に反して上方修正されており、同国の景気後退が当初の予測ほど深刻なものではないとの期待が浮上している。
株価が冴えないのは貿易を大きく依存している中国との政治的対立で中国から輸入制限を課せられているからだ。豪も対抗してキリンホールディングスが中国蒙牛乳業の子会社に対する豪州飲料事業の譲渡契約を解除したのは豪政府が譲渡契約を認可しないからだとされている。中国の王晰寧・駐豪公使は、中国と豪の関係に「暗い影」が差してはならないと発言、豪の規制当局が中国企業による買収を認可しなかったことに失望したと述べた。
*NZドル通貨7位、株価4位、マイナス金利示唆、感染再拡大は一息つき底堅い
豪ドル同様に対円、対ドルで5か月連続陽線となりそうだ。豪と異なるのは中銀が、マイナス金利導入を示唆していることからだ。長期金利も低下し株価指数は豪と違って強く、年初来5%高となっている(豪指数は8%安)。
コロナ感染対策は世界からも評価された素晴らしいものだが、オークランドで第二派の感染が確認されロックダウンや総選挙の延期を行っていた。それも今週からは、公共機関のマスク着用の義務はあるがロックダウンの一部解除や10人以下の集会は認められるようになった。先週は海外からサイバー攻撃で4日間取引市場が閉鎖された。依然警戒中だ。
テクニカル分析
*ドル円「日足、週足、月足でボリバン下限。週足、月足は上ヒゲ長し」
日足、8月28日の1日でボリバン上限から下限へ下落。7月31日-8月28日の上昇ラインがサポート。8月14日-28日の下降ラインが上値抵抗。5日線下向き。
週足、一旦、ボリバン下限を下抜くもボリバン内へ戻す。7月27日週-8月24日週の上昇ラインがサポート。8月10日週-24日週の下降ラインが上値抵抗。先週は上ヒゲ長し。
月足、依然、3月のレンジを抜けず。3月-7月の上昇ラインがサポート。6月-7月の下降ラインが上値抵抗。ボリバン下限を一旦下抜くも月末にバンド内へ戻す。8月は上ヒゲ長く終わるか
年足、4年連続陰線。16年-19年の上昇ラインは再び下抜く。16年-17年の下降ラインが上値抵抗。
*ユーロドル「月足はボリバン上限越えたまま。日足も再び上限へ」
日足、8月19日-26日の下降ラインを上抜きボリバン上限まで上昇。8月27日-28日の上昇ラインがサポート。5日線上向く。
週足、8月17日週は9週連続陽線とならなかったが先週は再び陽線でしぶとい。ボリバン内へ戻る。8月10日週-24日週の上昇ラインがサポート。
月足、4か月連続陽線となるだろう。ボリバン上限越える。ただボリバン上限越えて上昇力を弱める。6月-7月の上昇ラインがサポート。2月から5月までボリバン下限を何度も一時下抜くも下げ止まっていた。ついに雲中に届く。
年足、2年連続陰線。今年は陽転。18年-19年の下降ラインを上抜く。02年‐17年の上昇ラインがサポート。14年‐18年の下降ラインも上抜く。11年‐14年の下降ラインが上値抵抗。
*ユーロ円「ボリバン上限上抜きから反落」
日足、8月28日は一時ボリバン上限上抜くも、終値では陰線で長い上ヒゲを残す。8月21日-28日の上昇ラインがサポート。5日線上下向き。
週足、先週は陽線だが上ヒゲ長い。ボリバン上位。8月17日週-24日週の上昇ラインがサポート。週のボリバン上位。
月足、ボリバン下限で3月より3か月連続で長い下ヒゲを出し漸く5月、6月、7月と3か月連続陽線。8月は上昇もボリバン上限や雲の下限近くから反落。6月-7月の上昇ラインがサポート。
年足、2年連続陰線。今年はここにきて陽転。18年-19年の下降ラインを上抜く。16年-20年の上昇ラインがサポート。15年-18年の下降ラインが上値抵抗。
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