(1)
米上院は、中国が香港に「高度の自治」を保障する一国二制度を守っているかについて米政府に検証を求める「香港人権・民主主義法案」を賛成多数で可決。同法案は、香港に高度な自治を認めた「一国二制度」が、中国政府によって損なわれていないか検証し、抑圧に関わった中国の当局者への制裁を可能にする内容。
(2)
中国は「米国が香港人権法案を成立させれば必ず報復する」と表明して米国を強くけん制。米中の対立がより深まれば通商協議の「第1段階」の合意が遠退くとの見方からリスク回避の円買いが強まった。
(3)
「第1段階」の米中通商合意が来年にずれ込む可能性があるとの報道が伝わり円買いが再開。ホワイトハウスに近い関係者によると、中国が関税撤廃拡大を求めている他、米国もこれに対応して要求を強めているため、「第1段階」の合意は来年にずれ込む可能性があるとの事。
(4)
米連邦公開市場委員会(FOMC)は10月29-30日に開いた会合の議事録を公表。「ほとんどのメンバーは利下げが緩やかな成長を支える調整と判断」「数人のメンバーは近いうちに追加利下げがないとの明示が必要と指摘」など、声明と整合的な内容が示されたため材料視されなかった。
ドル/円の見通し
昨日のドル/円は終値ベースで約0.1%未満の小幅高。ただ、今朝方には米上院が前日に可決した香港人権法案を下院が可決し、トランプ大統領に送付したと伝わり再び108円台前半に押し戻されている。これまでの経緯から、上院可決は想定内とも言えるが、米政府関係者は大統領が同法案に署名するとの見通しを示しており、法案成立の可能性が一段と高まっている。中国が強く反発する香港人権法案が成立すれば、米中通商協議の合意が困難になると見られるだけに、市場としては警戒せざるを得ないところだろう。
ドル/円は日本時間7時30分過ぎに108.30円台まで下落した後はひとまず下げ渋っているが、米中の対立深刻化への懸念でグローバルに株価が値を崩す恐れもある事から下値リスクが残りそうだ。108.20-30円前後や108.00円前後にはストップロスの売りオーダーが置かれている可能性があり、これらを巻き込めば下げ足が速まる事も考えられるため警戒が必要だろう。