総括
「いがみあい」相場、楽しいクリスマスはやってくるか?
ドル円=105-110、ユーロ円=115-120 、ユーロドル=1.07-1.12
通貨ごとの注目ポイント
*円通貨首位、株価12位、貿易統計や家計調査で為替需給をチェックしたい
再び円は通貨首位となった。原油価格の下落で弱くなったカナダドルを抜いた。ただ今年の為替相場競争は混戦で他の通貨との格差は小さい。原油価格の下落は日本の輸入を減少させる円高要因。また消費増税や日銀短観での景況感悪化、マイナス金利の深堀は消を減退させ円高要因ともなる。秋は輸出予約が剥げ落ち、輸入が目立つ円安需給となりやすいが、最近の円高要因にも気をつけたい。世界は「米ドルの項」で取り上げたようにトランプ大統領主導の「いがみ合い」が多く、それが時々リスク回避の円買いにも繋がってしまう。日本のファンダメンタルズの良し悪しに関わらずだ。日本の景気を冴えているのはマイナス金利より日銀の株式介入であろうか。国民全員には行き届かないが一部の株式保有者を潤わせている。もちろん景気を押し上げる効果は大きくない。
今週は全世帯家計調査や貿易統計で為替に関わる需給をチェックしたい。また外債投資を拡大すると言うGPIFの動向も気になる。GPIFが外債投資に積極的になれば他の機関投資家も追随し円安効果が拡大するからだ。
*米ドル通貨4位、株価(NYダウ)9位、経済指標の強弱より「いがみあい」楽しいクリスマスは?
経済指標の強弱より「いがみあい」も相場の変動材料となっている。これがこのままクリスマスまで続くのだろうか。トランプ大統領のウクライナ問題に関わる弾劾問題は大統領も民主党も強気だ。共和党の内部からもロムニー氏などから大統領批判も出てきた。米中貿易戦争に続き、米欧貿易戦争も開戦した。週末の米朝協議もまとまらなかったようだ。金融政策では10月下げ予想も高まってきたが、FRB内部では緩和派と現状維持派で意見が分かれているし、緩和派も要因は関税などの貿易問題としている。先週のISM製造業やISM非製造業は弱かったが失業率は50年ぶり低水準の3.5%となった。
いがみ合いの部分がなかったら米国はとんでもない成長を続けていたのではないか。トランプ大統領は景気過熱を抑えマイルド成長を目指しているようだ。さてトランプ大統領は、ドル高による米製造業への悪影響を批判しており、ドル高牽制発言をしているが、長い目で見ると米ドルは日欧通貨に比べれば弱い通貨だ。貿易赤字が続く限り弱い通貨になる。
*ユーロ通貨9位、株価10位(DAX)、低成長抜加え、対米貿易戦争開始
トランプ大統領は、世界貿易機関(WTO)がEUによる航空機大手エアバスへの補助金を巡り、米国がEUに対し報復関税を課す方針を承認したことは「素晴らしい勝利」と称賛した。
WTOは、米国が欧州製品75億ドル相当に報復関税を課すことを承認した。米欧の貿易摩擦は今後激しさを増す見通しで、すでに米中貿易摩擦に圧迫されている世界景気見通しに一段と影を落とすことになりそうだ。
一方、経済指標は依然弱いままだ。独の主要経済研究所は、合同経済予測を発表し、今年と来年の独の経済成長予測を下方修正した。工業品の需要が世界的に低迷していることや、貿易摩擦を巡る不透明感の高まりが背景。経済成長率の予測は今年が0.5%、来年は1.1%。4月時点の予測はそれぞれ0.8%、1.8%だった。 主要経済研究所は「現在、循環的な下振れリスクは高いが、独経済の著しい稼働率低下を伴う経済危機は視野に入っていない」と表明。英国のEU離脱も経済リスクだと指摘した。
また今月退任するドラギECB総裁だが ECBの金融政策に手詰まり感もうかがえる中で、ドラギ総裁は政府の財政政策が一段と大きな役割を果たすべきと指摘。米国の連邦予算のような欧州の財政統合が景気循環の円滑化を進める上で有益になると述べた。「ECBは孤立して機能しておらず、他の経済政策も重要となる。すなわち金融政策の効果を高め、補完するような一体的な経済戦略が必要だ」と強調した。
*ポンド通貨6位、株価13位、ジョンソン首相のEU離脱協定案にEU側は納得せず
ジョンソン首相がEUに示した離脱協定案の代替案について、EUとアイルランドの当局者は、月末に迫る英国の離脱期限に向け妥結につながる可能性は低いとの見解を示した。合意の鍵を握るアイルランドのバラッカー首相は、代替案がどのように機能するのか十分理解できないとし、英領北アイルランドとの開かれた国境を保護しない協定に署名はできないと強調した。
EUのトゥスク大統領は、域内諸国がアイルランドを支持することで結束していると強調。また、欧州委員会のユンケル委員長は、「われわれは依然として交渉に前向きだが、まだ確信できていない」と述べ、代替案に複数の問題点があると指摘した。別のEU外交筋も、代替案が受け入れ可能になるには基本的な修正が必要だとし、離脱期限前の10月17-18日に予定されるEU首脳会談まで残された時間はほとんどないと指摘した。英国では10月19日までに議会でEUとの離脱協定案が承認されず、合意なき離脱も認められなかった場合、ジョンソン首相に対し3カ月の離脱延期をEUに求めることを義務付ける法律が成立した。
EU離脱問題にも関わらず通貨ポンドや英国株価はそれほど荒れた状態に陥っていない。ただデギンドスECB副総裁は、英国が条件などで合意しないままEUを離脱した場合のマイナスの影響が市場で完全に織り込まれていない可能性があるとの考えを示した。「現在見られている先行き不透明性の影響は過小評価されている可能性があり、無秩序な離脱となった場合の影響は、市場で現在織り込まれているよりもはるかに大きくなる恐れがあると懸念している」と述べた。その上で、英国のEU離脱を巡ってはECBは万能ではなく、すべての問題を解決することはできないと述べた。
*豪ドル通貨8位、株価8位、11月追加利下げ予想が高まる 株価は先ず先ず
豪ドルは対円で年初来6.38%、対ドルで4%安。豪株価指数は16.25%と、豪の国内投資家にとってはまずまずの数字だ。ただRBAはまだ悲観的であり11月の利下げも予想されるようになってきた。
RBAは先週、政策金利を1.00%から0.75%に引き下げた。景気を支援し、失業率の低下を促すことが狙いで、利下げは年初から3度目。必要に応じて金融政策をさらに緩和する方針を示した。
RBAは「雇用と所得の伸びを支え、インフレがいずれ中期目標に一致するとの信頼感を高めるため、政策金利をさらに引き下げる決定を行った。経済にはまだ余剰能力があり、金利の低下がその活用促進に役立つだろう」との見方を示した。2Q・GDPは前年比1.4%増と、約10年ぶりの低い伸びを記録した。中銀は、経済は「緩やかな転換点」に達したようだとし、必要なら追加利下げを行う方針を示した。市場の11月の0.25%利下げの確率は、30%未満から60%に上昇している。
8月貿易収支は59.3億豪ドルの黒字であったが、輸出が前月比で3%減少しているのが気がかりだ。米中貿易戦争の影響か。ただ8月の小売売上高は前月比0.4%増と、6カ月ぶりの高い伸びとなった。
最近の利下げや税金の払い戻しが消費支出を押し上げたロウRBA総裁は、政策にとって国内の最も大きな不確実性は消費の見通しだとし、家計可処分所得の小幅な伸びが支出の重しとなっているとの見方を繰り返し表明している。
*NZドル通貨11位、株価2位、一時NZドルは年間最弱通貨に下落 株価は好調
先週は年間通貨の強弱ではトルコリラに抜かれ最下位に一時下落したが週末は小反発し最下位は脱出した。9月企業信頼感指数は、約11年半ぶりの低水準を記録した。向こう1年間に経済が悪化すると予想した回答者の割合は差し引き54%で、8月の52.3%から上昇した。自社の事業活動に対する見通しを示す指数は前月から1ポイント低下し、マイナス2%と2009年4月以来の低水準だった。低下は4カ月連続。
景況感の弱さはここ数カ月、経済の足かせとなっており、中銀が先月実施した0.5%の大幅利下げの一因にもなった。利益見通しを示す指数も5ポイント低下。インフレ見通しは1.7%から1.63%に低下し、中銀目標の中間値である2%を大幅に下回る水準となった。9月の消費者信頼感指数も弱く114となり8月の118から低下し過去4年で最低となっている。
ただ全面悲観でなく株価は強く、年初来23.62%上昇している。
テクニカル分析
*ドル円=「ボリバン上限から下限へ、2日連続下ヒゲ」
日足、9月26日-27日の上昇ラインを下抜く。ボリバン下限下抜きからは戻す。10月3日、4日と長い下ヒゲ。10月1日-4日の下降ラインが上値抵抗。5日線下向き。ボリバン下限、20日線を下抜く。
9月19日-24日の下降ラインを上抜く。9月26日-27日の上昇ラインがサポート。9月19日-27日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向き。ボリバン上位、5日線、20日線を上抜く。
週足、8月26日週-9月23日週の上昇ラインを下抜く。9月16日週-30日週の下降ラインが上値抵抗。8月26日週-9月30日週の上昇ラインがサポート
月足、19年6月-7月の上昇ラインを下抜く。月のボリバン下限に到達してからは戻す。19年5月-8月の下降ラインが上値抵抗。16年6月-19年8月の上昇ラインがサポート。
年足、3年連続陰線。今年は陽線スタートであったが5月に陰転。15年‐17年の下降ラインが上値抵抗。16年-18年の上昇ラインを下抜く
*ユーロドル「ボリバン下限から反発。ボリバン中位では抵抗される」
日足、9月13日-10月4日の下降ラインが上値抵抗。10月3日4日の上昇ラインがサポート。5日線上向く。ボリバン下限から反発。ボリバン中位では抵抗される。
週足、ボリバン下限を何度も下抜くがそのたび直ぐに戻している。9月16日週-30日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、19年7月-8月の下降ラインが上値抵抗だが上抜くか。17年1月-19年8月の上昇ラインがサポート。
年足、17年-18年の上昇ラインを下抜く。14年‐18年の下降ラインが上値抵抗。02年‐17年の上昇ラインがサポート
*ユーロ円=「ボリバン下限到達」
日足、9月3日-10月4日の上昇ラインがサポート。10月2日-4日の下降ラインが上値抵抗。ボリバン下限。5日線下向き。雲下。
週足、9月2日週-30日週の上昇ラインがサポート。9月16日週-23日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、ボリバン下限下抜きから戻す。19年7月-9月の下降ラインが上値抵抗。
年足、16年-17年の上昇ラインを下抜く。15年-18年の下降ラインが上値抵抗。12年‐16年の上昇ラインも下抜く。
本レポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資方針や時期選択等の最終決定はご自身で判断されますようお願いいたしま す。また、本レポートに記載された意見や予測等は、今後予告なしに変更されることがございます。 なお、本レポートにより利用者の皆様に生じたいかなる損害についても、FX湘南投資グループグならびに株式会社外為どっとコムは一切の責任を負いかねますことをご了承願います。