
作成日時 2026年7月31日 11時30分
監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 小野直人
8月3日~7日の米国株式市場には、7月のCPIやPPIといった物価統計が入りません。並ぶのはISM景況指数、JOLTS求人件数、そして7月の米雇用統計で、FOMC(米連邦公開市場委員会)のインフレ警戒を確かめる週というより、高金利を維持したまま米国の労働市場と景気が持ちこたえられるかを試す週になります。ここは市場参加者の間でも見方が割れており、「景気が底堅い=企業業績にプラス」と読む向きと、「景気が底堅い=9月利上げの現実味が増す」と読む向きが同居しています。
見通しを左右する判断軸は、①一連の雇用指標が示す減速の度合い、②米長期金利の反応、③AMDやマクドナルドなど残る主力決算、④25日移動平均線と75日移動平均線に挟まれた狭いゾーンをどちらに抜けるか、の4点とみています。ご自身がどの材料を最も重視するかを意識しながら、来週のシナリオを組み立ててみてください。
予想レンジ:7,250〜7,600ポイント
SP500相場振り返り|FOMCの利上げ反対票と大手決算が交錯
7月29日のFOMCで米国株が急落した理由
7月29日のFOMCは、政策金利をFF金利誘導目標3.50~3.75%に据え置きました。ただし3名の地区連銀総裁が0.25%の利上げを主張して反対票を投じ、ウォーシュFRB議長もインフレへの警戒を崩さなかったことから、市場はタカ派的な内容と受け止めています。SP500は同日、前日比1.52%安の7,316.15ポイントまで下押ししました。
マイクロソフト決算とPCE鈍化でSP500は7,437ポイントへ反発
流れが変わったのは翌30日です。6月のPCEデフレーターが前年比+3.7%、コアが同+3.3%とほぼ予想どおりに着地し、インフレの再加速が確認されなかったことで過度な利上げ警戒が後退しました。そこへマイクロソフトの好決算が重なります。同社株は15.5%高、フィラデルフィア半導体株指数は8.19%高となり、SP500は1.66%高の7,437.63ポイントで引けました。VIX指数も17.09と大きく低下しています。
AI投資の収益化で明暗が分かれた大手ハイテク株
もっとも中身はまだら模様です。メタは約8%安となりました。引け後に決算を発表したアップルは、中国とサービス部門の売上高がともに前年同期比では2桁増となったものの、市場予想には届かず、供給制約や先行きへの慎重な見方もあって時間外で軟調に推移しました。対照的にアマゾンはAWSが前年同期比36.7%増と18四半期ぶりの高い伸びとなり、時間外で買われました。AI投資が収益に結びついている企業と、投資負担が意識される企業の選別が、今週も相場の底流にあります。
来週のSP500見通しを左右する米雇用指標
JOLTS・ADP・米雇用統計が並ぶ4営業日のスケジュール
来週は3日(月)に7月ISM製造業景況指数、4日(火)に6月JOLTS求人件数、5日(水)にADP雇用統計と7月ISMサービス業景況指数、そして7日(金)に7月米雇用統計が並びます。求人という需要側から入り、民間集計、サービス業の景況感を経て、最後に雇用統計で答え合わせをするという流れです。一方、7月のCPIは8月12日、PPIは13日と、物価統計はすべて翌週に回ります。
「緩やかな減速」がSP500の株価に最も好ましい理由
つまり8月3日~7日は、FOMCの据え置き判断を雇用と景気の面から検証する週という位置づけになります。指標が強ければ景気後退への懸念は後退しますが、同時に「高金利を長く続けられる」「9月利上げも排除できない」との見方が強まり、米長期金利の上昇を通じて株価の重荷になり得ます。反対に弱すぎれば業績見通しへの不安が出ます。強すぎても弱すぎても扱いにくく、「緩やかな減速」が確認できるかが判断軸になりそうです。
なお6月の非農業部門雇用者数は+5.7万人と市場予想を大きく下回り、過去2カ月分も下方修正されました。7月分がここから戻るかどうかが第一の関心事です。
単位労働コストが示す賃金インフレの手がかり
物価関連の材料が乏しい週ではありますが、6日(木)に発表される4~6月期の労働生産性に含まれる単位労働コストは、賃金面からのインフレ圧力を測る数少ない手がかりになります。ここが加速していれば、翌週のCPIを前に利上げ警戒が再燃する可能性もあります。
米国企業決算とSP500|AMD・マクドナルドで測るAI投資と実体消費
企業決算では、AMD、キャタピラー、ウォルト・ディズニー、イーライリリーが予定されています。AMDとキャタピラーはAI・データセンター需要の強さを、ディズニーとイーライリリーは消費者のサービス支出を確認する材料になります。
特にAMDの見通しが良好であれば、マイクロソフト決算をきっかけに戻ったAI関連株への買いが続き、7,500ポイント台の回復を後押ししそうです。反対にAI投資の採算性や消費者の節約姿勢が意識される内容なら、指数全体よりも銘柄ごとの選別色が強まる展開も想定されます。
原油価格とインフレ再燃リスクも背景材料に
米国とイランの軍事衝突が再燃し、WTI原油は80ドル台で高止まりしています。原油高が長引けばインフレ再燃と消費圧迫の両面で効いてくるため、指標や決算とは別の背景材料として頭に置いておきたいところです。
SP500のテクニカル分析|25日移動平均線と75日移動平均線の攻防

7月30日終値の7,437ポイントは、25日移動平均線7,473ポイントの下、75日移動平均線7,414ポイントの上という、わずか60ポイントほどのゾーンに収まっています。まずはこの移動平均線帯をどちらに抜けるかが、短期の分岐点になります。
上値目処は7,500ポイントから7,600ポイント
25日線の7,473ポイントを明確に上回れば、心理的節目の7,500ポイントを経て、予想レンジ上限の7,600ポイントを試す余地が生まれます。ただし直近高値7,624ポイントが控える7,600ポイント台前半では、利益確定売りが増えやすいと考えられます。
下値支持は75日線7,414ポイントと100日線7,231ポイント
75日線の7,414ポイントを割り込むと、7月29日安値圏の7,300ポイント付近まで調整が進む可能性があります。その下では100日移動平均線7,231ポイントが支持帯となり、予想レンジ下限の7,250ポイントとほぼ重なります。
14日RSIは46.8で中立圏
14日RSIは46.8と中立圏にあり、買われ過ぎでも売られ過ぎでもありません。テクニカルだけでは方向感が決まりにくく、米雇用統計と長期金利の反応に左右されそうです。予想レンジは7,250~7,600ポイントを想定しています。
プロの視点と、ご自身のシナリオの組み立て方
筆者のメインシナリオは、7,414~7,473ポイントの移動平均線帯を挟みながら、7,500ポイント台の回復を試す展開です。GDPは減速しましたが、民間国内需要と個人消費は崩れていません。JOLTSや米雇用統計が急激な悪化を示さなければ、大手IT企業の業績を支えに下値の堅い展開が続くとみています。
すでにポジションを持つ方が意識したい水準
すでに買い持ちの方にとっては、7,414ポイントが崩れるかどうかが一つの目安になりそうです。7月は7,600ポイント台から7,300ポイント割れまで振れており、狭いレンジのなかでも値幅は出やすい地合いです。売り持ちの方にとっては、マイクロソフトやアマゾンが示したように、決算ひとつで数%の戻りが入り得る点が悩ましいところでしょう。どちらの立場でも、米雇用統計を前にポジションの大きさをどう調整しておくかが、来週の実務的な論点になるのではないでしょうか。
【あなたの見通しは?】来週のSP500を3択で予想
- 上昇:25日移動平均線を回復し、7,600ポイント方向を試す
- 横ばい:7,300~7,500ポイントで方向感の乏しい展開が続く
- 下落:75日移動平均線を割り込み、7,250ポイント方向を試す
今後の米国の重要イベント
- 8月3日(月) 23:00 7月ISM製造業景況指数
- 8月4日(火) 19:30 キャタピラー決算発表
- 8月4日(火) 21:30 キャタピラー決算説明会
- 8月4日(火) 23:00 6月JOLTS求人件数
- 8月5日(水) 06:00 AMD決算説明会(決算発表は米国時間4日の市場終了後)
- 8月5日(水) 21:15 7月ADP雇用統計
- 8月5日(水) 21:30 ウォルト・ディズニー決算説明会(決算発表は米国市場開始前)
- 8月5日(水) 23:00 7月ISMサービス業景況指数
- 8月5日(水) 23:00 イーライリリー決算説明会
- 8月6日(木) 21:30 4~6月期労働生産性・単位労働コスト(速報値)
- 8月6日(木) 21:30 新規失業保険申請件数
- 8月7日(金) 21:30 7月米雇用統計
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小野 直人
株式会社DZHフィナンシャルリサーチでの情報配信業務、上田ハーロー株式会社での調査・市場部門を経て、2021年より外為どっとコム総合研究所へ参画。ニュースベンダーとFX会社で培った「情報の目利き力」と「市場実務の経験」を武器に、個人投資家へ有益な情報を発信している。ドル円などの主要通貨に加え、トルコリラ・メキシコペソなどの新興国通貨、日経平均・NYダウといった株価指数(CFD)まで、幅広い金融商品の分析を得意とするマーケットアナリスト。
