
作成日時 2026年7月10日 11時00分
監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 小野直人
来週(7月13日~7月17日)のS&P500(SP500)は、プロでも注意が必要とされる局面です。企業業績への期待は強く、テクニカル面でも中期的な上昇基調は崩れていません。一方で、7月14日の米6月消費者物価指数(CPI)と大手金融機関の決算次第では、期待先行の相場にいったんブレーキがかかる可能性もあります。
大事なのは、強気か弱気かを最初から決め打ちすることではなく、「どの材料が出たら、自分の見立てを変えるのか」を先に整理しておくことです。
来週の想定レンジ:7,350〜7,700ポイント
SP500見通し|期待先行の米株相場、決算で持続力を確認
今回の決算期において、SP500企業の全体利益は前年同期比で20%を超える高い伸びが見込まれており、期待値はかなり上がっています。米主要銀行の決算を皮切りにして7月14日から本格化します。
ただし、期待値が高いほど、決算内容が「良い」だけでは株価が素直に上がりにくくなることもよくあることです。市場が見ているのは、過去の実績だけでなく、今後も成長が続くかどうかです。そこで重要になるのが、7月14日に発表される米6月消費者物価指数(CPI)となります。
インフレが再び強まれば、米金利の高止まりや追加利上げ観測が意識され、企業業績への期待に水を差す可能性があります。反対に、CPIが落ち着いた内容となれば、利上げ警戒が和らぎ、企業業績への期待を支える材料になりそうです。
7月14日はFRB議長議会証言も、次の一手へのヒント出るか
米連邦準備制度理事会(FRB)の視点も重要です。ウォーシュFRB議長の下で、6月米連邦公開市場委員会(FOMC)では政策金利が3.50〜3.75%に据え置かれましたが、インフレへの警戒感は残っています。足元のインフレ動向や大きく悪化していない雇用情勢を受けて、議長が今後の金融政策をどのように判断しているのか、着目されます。追加利上げへ前向きと受け止められれば、株式市場にとってはバリュエーション面の重荷になりやすいでしょう。反対に、利上げまでには距離があると受け止められれば、高金利への警戒が和らぎ、株式市場には追い風となります。
中東情勢と原油価格、株価の潮目を変える材料の一つ
もう一つの焦点は、中東情勢です。米国とイランを巡る緊張が再び高まったことで、原油価格は一時反発しました。ただし、その後は上げ幅を縮めており、市場は現時点でホルムズ海峡の全面封鎖を直ちに織り込んでいるわけではなさそうです。ここは「原油が反応していない」というより、反応はしたものの、供給途絶を本格的に織り込むほどの動きには至っていないと見るのが自然です。
もっとも、この安心感は少しもろい面があります。米国・イラン双方の発言が条件付きにとどまり、実際の原油供給への影響が限定的であれば、株式市場への影響も抑えられるでしょう。しかし、ホルムズ海峡の通航不安が再び強まり、原油価格が大きく上昇するようなら、インフレ懸念と企業コスト上昇への警戒が同時に強まり、SP500の上値を抑える要因になりそうです。
テクニカル分析|中期上昇基調は維持、ただし高値圏で次を模索

テクニカル面では、SP500は7,500ポイント前後でのもみ合いが続いています。25日移動平均線は7,450ポイント付近、75日移動平均線は7,275ポイント付近に位置しており、現在値は25日線をやや上回っています。75日線も上向きを維持しているため、中期的な上昇基調はまだ崩れていないと考えられます。
一方で、25日線の傾きは横ばいに近く、上昇の勢いが一段と強まっているというより、高値圏で方向感を探っている局面に見えます。RSI(14日)は54.3と中立圏にあり、過熱感は強くありません。買われすぎではない一方で、強い上昇モメンタムが出ているとも言い切れず、CPIや決算などの材料を待つ状態です。
予想レンジは、7,350~7,700ポイント程度を想定します。上値では7,600ポイント台前半を明確に上抜けられるかが焦点で、CPIが市場予想を下回り、企業決算も堅調なら、7,700ポイント方向を試す展開が見込まれます。一方、CPIの上振れや中東情勢の悪化、決算への失望が重なれば、7,450ポイント付近の25日線を割り込み、7,350ポイント前後まで調整する可能性があります。
SP500見通しのプロの視点と、シナリオの組み立て方
筆者のメインシナリオは、7,450ポイント前後を上回る限りは押し目買い優勢、7,350ポイントを割り込む場合は調整警戒という見方です。
来週は、上昇トレンドが崩れるかどうかを決める週というより、これまでの期待先行の上昇に、実体面の裏付けがあるかを確認する週と見ています。楽観が続く条件と、楽観が修正される条件を分けて見ておきたいところです。
ただ、これはあくまで筆者のベースシナリオです。CPIを重視するのか、決算を重視するのか、中東情勢と原油価格を重視するのかで、見方は変わります。ご自身の見立てに合わせて、どの水準を上抜けたら強気を強めるのか、どの水準を割り込んだら慎重になるのかを整理しておくと、相場の急変にも対応しやすくなります。
あなたの見通しは?
A. 強気シナリオ
CPIが落ち着き、大手金融機関の決算も堅調。SP500は7,600ポイント台を上抜け、7,700ポイント方向を試す。
B. 中立シナリオ
CPIと決算は大きく崩れないものの、期待も出尽くし気味。SP500は7,450〜7,600ポイント台で方向感を探る。
C. 慎重シナリオ
CPI上振れや決算への失望、中東情勢の悪化が重なり、SP500は7,350ポイント前後まで調整する。
どの選択肢を選んでも、相場を「当てる」ことだけが目的ではありません。材料と水準を分けて、自分なりの見通しを持てた時点で、次の相場を見る精度は一段上がっています。
今後の重要イベント
- 7月14日(火) 19:45 バンク・オブ・アメリカ 4-6月期決算
- 7月14日(火) 20:00 JPモルガン、ウェルズ・ファーゴ 4-6月期決算
- 7月14日(火) 20:30 ゴールドマン・サックス 、 シティグループ 4-6月期決算
- 7月14日(火) 21:30 6月消費者物価指数(CPI)
- 7月14日(火) 23:00 ウォーシュFRB議長 議会証言
- 7月15日(水) 20:30 モルガン・スタンレー 4-6月期決算
- 7月15日(水) 21:30 6月生産者物価指数(PPI)
- 7月15日(水) 23:00 ウォーシュFRB議長 議会証言
- 7月16日(木) 21:30 6月小売売上高
- 7月16日(木) 21:30 新規失業保険申請件数
- 7月17日(金) 23:00 7月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値
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小野 直人
株式会社DZHフィナンシャルリサーチでの情報配信業務、上田ハーロー株式会社での調査・市場部門を経て、2021年より外為どっとコム総合研究所へ参画。ニュースベンダーとFX会社で培った「情報の目利き力」と「市場実務の経験」を武器に、個人投資家へ有益な情報を発信している。ドル円などの主要通貨に加え、トルコリラ・メキシコペソなどの新興国通貨、日経平均・NYダウといった株価指数(CFD)まで、幅広い金融商品の分析を得意とするマーケットアナリスト。
