2026年後半のドル円相場はどうなるのか?日銀が利上げを続けても、円安はなぜ止まらないのか?名古屋商科大学大学院教授の大槻奈々氏が、日米金利差・AIバブル崩壊リスク・長期金利上昇の3つの視点から解説します。
⚫️この記事のポイント
・日銀が利上げを続けても、日米金利差・投機筋の円売り・円の信認低下により円安基調は継続しやすい
・AI・半導体相場が株高を牽引する一方、過熱シグナルが点灯しており2〜3カ月以内に5〜10%の急落リスクあり
・日本の長期金利は3%近辺まで上昇する可能性があり、超低金利時代の終焉が近づいている
・日銀会合の焦点は利上げよりも植田総裁のターミナルレートへの言及
・2026年後半最大のリスクはプライベートクレジット市場の緩やかな悪化
・個人投資家に求められるのは「予想」ではなく、変化に素早く対応できる「機動性」
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2026年ドル円見通し|日銀利上げでも円高になりにくい理由
2026年前半、市場関係者の多くは円高を予想していました。しかし実際には円安基調が続いています。
大槻氏はその理由について、「金利差だけでは説明できない部分が大きい」と指摘します。
確かに日銀は利上げ局面にあります。しかしアメリカもインフレ再燃によって追加利上げ観測が浮上しており、日米金利差は思ったほど縮小していません。
さらに先物市場では投機筋の円売りポジションが高水準に積み上がっています。こうした状況を踏まえると、日銀が利上げを実施しても円高トレンドへの転換は簡単ではないという見方です。
円安が止まらない3つの理由
大槻氏は円安が続く背景として、主に3つの要因を挙げます。
① 日米金利差が依然として大きい
日銀の利上げペースは緩やかです。仮に利上げを実施しても半年に一度程度のペースであれば、依然として米国との金利差は大きいままです。
② 投機筋の円売り
先物市場では投機筋による円売りポジションが積み上がっています。こうした資金が円安を後押ししています。
③ 円の信認低下への懸念
日本の財政状況や低い潜在成長率への不安も背景にあります。短期的な金利差だけではなく、中長期的な日本経済への評価がドル円相場に影響を与え始めている可能性があります。
日本株はAI相場で上昇、ただし「AIバブル」への警戒も

2026年前半の株高を支えた最大の要因はAI・半導体関連銘柄です。
大槻氏によると、各国の株価指数を比較すると、情報通信セクターの比率が高い市場ほど株価上昇率も高い傾向が見られるといいます。韓国株や日本株の上昇も、AI・半導体関連への期待が背景にあります。
しかし大槻氏は「市場は一部のテーマに集中し過ぎている可能性がある」と警鐘を鳴らします。現在の株高はAI関連銘柄への期待感で上昇している面が大きく、市場全体が過熱している可能性があるためです。
日本株は5〜10%下落する可能性も
大槻氏が特に注目しているのが、株式市場のボラティリティ上昇です。複数の市場モデルでは、2026年6月時点で株価の過熱を示すシグナルが出ているといいます。
もちろん中長期的には悲観していないものの、今後2〜3カ月以内に大きな調整が起きる可能性は否定できません。場合によっては1日で5〜10%程度の急落が発生する可能性もあると指摘します。
AI相場が続くとしても、その途中で大きな調整局面を迎える可能性には注意が必要です。
日本の長期金利は3%時代へ
2026年後半の重要テーマの一つが長期金利です。日本の10年国債利回りはすでに歴史的な上昇局面にあります。
大槻氏は、日本の長期金利が3%近辺まで上昇する可能性は十分あると見ています。背景には、インフレ率の上昇・財政悪化への懸念などがあります。
これまで日本は超低金利が当たり前でした。しかし今後は「普通の国」の金利水準へ近づいていく可能性があります。
6月日銀会合の注目点
市場では2026年6月の日銀利上げをほぼ織り込んでいます。そのため注目は利上げそのものではなく、植田総裁の会見です。
特に市場が知りたいのは、「今後どこまで利上げするのか」というターミナルレートです。
仮に利上げを実施しても、その後の発言がハト派的であれば円安圧力が再び強まる可能性があります。市場は利上げの決定以上に、植田総裁のメッセージを注視しています。
2026年後半最大のリスクはプライベートクレジット

金融市場のリスクとして大槻氏が挙げるのがプライベートクレジット市場の問題です。ただし、リーマンショックのような急激な金融危機ではありません。むしろ問題は「じわじわ悪化すること」です。
現在、アメリカでは倒産件数が増加していますが、銀行の不良債権比率は比較的落ち着いています。その背景には、銀行融資を補完するプライベートクレジット市場の存在があります。
しかし、この市場が縮小すると信用力の低い企業は資金調達が難しくなります。特に情報通信セクターではプライベートクレジットへの依存度が高く、今後の動向が注目されます。
個人投資家に必要なのは「予想」ではなく「機動性」
最後に大槻氏は、個人投資家に対して重要なメッセージを送りました。2026年前半は、多くの専門家の予想を市場が裏切りました。つまり、今後も専門家の予想が当たる保証はありません。
だからこそ重要なのは、「予想して賭けること」ではなく、「何か起きた時に素早く対応すること」です。
今後もAI相場が続く可能性があります。一方で大幅調整が起きる可能性もあります。円安が続く可能性もあります。しかし介入や政策変更によって相場が急変する可能性もあります。
2026年後半は、一方向に偏った市場予測ではなく、市場の変化に柔軟に対応できる「機動性」が求められる局面と言えそうです。
名古屋商科大学大学院教授、ピクテ・ジャパン株式会社シニア・フェロー
東京大学卒、ロンドンビジネススクールMBA、一橋大学ICS博士(経営学)。日系金融機関、スタンダード&プアーズ、UBS、メリルリンチ、マネックス証券などでリサーチ業務に従事、各種メディアのアナリスト・ランキングで高い評価を得てきた。国内外の金融市場や個人投資家の行動等を分析研究。2016年9月より名古屋商科大学、2022年よりピクテ・ジャパン。一橋大学学外理事、国債投資家懇談会座長、財政制度審議会委員、東京大学応用資本市場研究センターフェロー等にも従事。
外為どっとコム総合研究所 シニア為替アナリスト神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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