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【ドル円見通し】6月日銀会合・FOMCでドル円相場はどう動く?「利上げ」か「据え置き」か、160円を巡る攻防

⚫️サマリー

6月の日銀会合・FOMCでは、日銀の追加利上げ・QTの行方と、ウォーシュ新FRB議長体制初のSEP(経済見通し)が焦点となる。米ドル/円は37年ぶりの安値圏である160円台をめぐる攻防が続いており、日米双方の政策判断次第で円安加速か急激な円高かのどちらかに大きく動く局面を迎えている。週足・日足のテクニカル分析や介入実績を踏まえ、イベント前後はポジションを絞り、リスク管理を最優先とする姿勢が求められる。

「利上げ」か「据え置き」か、160円を巡る攻防

「1ドル=160円台に再突入し、円安がさらに進行するかもしれない」

今、米ドル/円相場の行方が注目されています。37年ぶりの安値となった2024年7月の1ドル=161円95銭という水準が、為替市場の実質的な「レジスタンス」として強く意識されるなか、日米の中央銀行が連続して金融政策を発表する、いわゆる「日米中銀ウィーク」を迎えます。

6月の日米金融政策発表を目前に、市場の見方は完全に二極化しています。日本では日銀による追加利上げの可能性や国債の買い入れ減額、すなわちQT(量的引き締め)の具体的な方針に注目が集まり、米国では5月に就任したばかりのケビン・ウォーシュFRB新議長が率いる新体制が初めて発表する経済見通し(SEP)が注目されています。インフレ再燃リスクを睨みながら高金利を維持しようとする米国のスタンスと緩和的な環境から脱却を進めたい日銀の正常化プロセスが、外国為替市場だけでなく、株式市場を含む主要アセット全体にどのような影響を与えるのか。最新のファンダメンタルズ要因と、週足・日足チャートによる緻密なテクニカル分析を交え、今後の相場の分岐点を徹底的に読み解きます。

日本の政策金利は「据え置き」か、それとも「追加利上げ」か

6月15〜16日に開催される日銀金融政策決定会合において、最大の焦点は政策金利の動向です。日銀は2024年3月にマイナス金利解除を断行し、同年7月には0.25パーセント程度への利上げに踏み切りました。その後は慎重に経済データを見極める姿勢を維持してきましたが、市場では今回の会合で政策金利を0.50パーセントへと引き上げる「追加利上げ」の有無について議論が活発化しています。人手不足を背景とした構造的な賃上げの強さや、物価の上昇基調が継続していることがその背景にあります。

1)注目される総裁会見

今回の会合における票決結果や、政策委員それぞれの物価・経済に対する見通しは、年後半の利上げペースを占う重要なヒントとなります。特に注目すべきは会合終了後に行われる植田和男総裁の記者会見です。植田総裁が160円台で推移する足元の円安進行に対して、どのようなトーンで言及するのか、また「賃金と物価の好循環」に対して、どの程度の自信を示すのかによって、市場が織り込む次回の利上げ時期が大きく動くことになります。

2)国債買い入れ減額とQTの中間評価

今回の会合では、政策金利の引き上げだけでなく、日銀が保有する長期国債の買い入れ額をどのように減らしていくのかという、量的引き締め(QT)の具体策についても踏み込んだ議論が予想されます。これまでの大規模な金融緩和で膨らんだバランスシートを縮小していく正常化プロセスは不可避ですが、急激な減額は長期金利のスパイク(急上昇)を招き、国内の景気に悪影響を与えるリスクがあります。そのため、市場の安定性を維持しつつ、超長期国債市場の需給バランスにどこまで配慮したロードマップが提示されるか否か、債券市場のみならず、為替市場においても重要なテーマとなります。

3)円安の背景にある金利差と実需

米ドル/円相場が1ドル=160円前後という歴史的な安値圏で推移し続けている根本的な要因は、日米の圧倒的な政策金利差にあります。日銀が正常化を進めているとはいえ、絶対的な金利差はいまだ大きく、円を売って米ドルを買うキャリートレードのインセンティブは失われていません。さらに、原油をはじめとするエネルギー価格の上昇に伴い、日本の輸入企業が経常的に米ドルを必要とする実需の「ドル買い・円売り」が継続していることも、円高方向への自律的な反転を難しくしている構造的な背景です。

その後のドル/円相場のシナリオ

日銀がこの会合で市場の予想を上回る明確な利上げ、または国債買い入れの大幅な減額など、具体的な正常化のステップに踏み切った場合、為替市場は一時的に円高方向への調整を余儀なくされる可能性が高いと考えられます。一方で、事前の期待に反して政策が据え置かれ、総裁会見のトーンも慎重な内容にとどまった場合、市場の失望から「円売り」がさらに加速して160円台後半へと、さらに円安が進むシナリオが現実味を帯びてきます。

FOMCは据え置きでもSEPに注目

日銀政策会合の直後、6月16〜17日に開催される米FOMC(連邦公開市場委員会)では、現行の政策金利である3.50〜3.75パーセントの水準が据え置かれるというのが、現在の市場における支配的な見通し(コンセンサス)となっています。足元のアメリカ経済は底堅さを維持しており、急いで利下げを行う必要性が見当たらないことがその根拠です。

1)新体制のSEPとドットチャート

今回のFOMCにおいて、単なる政策金利の据え置き以上に、市場参加者の関心を集めているのが、5月22日に第17代FRB議長へと就任したケビン・ウォーシュ氏のもとで初めて公表される経済見通し(SEP)とドットチャートです。伝統的にタカ派として知られるウォーシュ新議長が、今後の米国の金融政策運営においてどのような金利ロードマップを敷いてくるのか、その初手となる公式データが初めて可視化されるため、年内の利下げ回数の予測がどのように変化するかが最大の焦点となります。

2)声明文と記者会見のトーン

直近で発表された米国の4月消費者物価指数(CPI)が前年比3.8パーセントとなるなど、インフレのしぶとさが改めて示されています。パウエル前議長が理事として残留する異例の新体制のもと、ウォーシュ新議長が就任後初の記者会見において、インフレ抑制に対する中央銀行としての規律をどれほど客観的に語るかが注目されます。もし新議長が市場の早期利下げ期待を完全に牽制し、利下げ凍結、あるいはデータ次第での追加利上げの選択肢すら排除しない姿勢を示した場合、ドルの独歩高が加速するかもしれません。

3)直前の雇用・物価指標の評価

会合の判断に直撃するのが、5月の米雇用統計や直近のインフレ関連指標の結果です。新体制のFRBが「底堅い雇用」と「目標の2パーセントを上回り続けるインフレ」をどのように分析し、今後の政策に落とし込んでいくのか。市場は、これらの経済指標の強さが、新体制の「タカ派スタンス」をさらに裏付けるものになるのか、確認することになるでしょう。

4)ドル/円相場への波及

SEPで更新されるドットチャートがタカ派的な内容、つまり利下げ回数の減少や据え置き期間の長期化を示唆した場合、日米金利差の縮小期待が剥落することで強力なドル高・円安バイアスが働きます。逆に、ウォーシュ新議長が就任直後の市場への配慮から慎重なトーンにとどめ、予測が想定よりハト派的な内容となった場合には、行き過ぎたドル買いのポジションが巻き戻され、急速な円高(ドル安)へ振れる余地を残しています。

主要アセットのテクニカル分析と市場の現在地

それでは現在の米ドル/円相場をテクニカル分析してみましょう。

●米ドル/円相場の週足チャート

 

米ドル/円相場の週足チャート

米ドル/円の週足チャートを見ると、中長期の上昇トレンドが継続しています。移動平均線においては、上から短期13週、中期26週、長期52週の指数平滑移動平均線(EMA)が綺麗な「右肩上がり」を維持しており、大局的には円安基調が継続しています。ボリンジャーバンドを確認すると、4月末の介入後の調整を経て再上昇しており、ローソク足はプラス1シグマラインを明確に上回っています。直近の高値である160.727円およびプラス2シグマラインが位置する160円台を視野に据えた攻防が続いています。MACDは高水準でもみ合っており、シグナル線との乖離を示すヒストグラムが縮小傾向にありつつも、プラス圏の上位を維持していることから、トレンドの勢いは衰えていないと計測できます。

●米ドル/円相場の日足チャート

 

米ドル/円相場の日足チャート

次に日足チャートを見ると、押し目買い優勢の上昇基調を強めています。短期、中期、長期のEMAが「右肩上がり」を形成しており、直近では25日移動平均線(紫色の線)が下値を支えるサポートとして明確に機能しています。

ボリンジャーバンドでは、この25日移動平均線からリバウンドし、プラス1シグマラインを上抜けました。直近の高値である160.727円という強固なレジスタンスラインへの再アプローチ局面です。

ここを下抜けた場合は、75日線まで一気に下抜けしやすい、米ドル/円相場特有の「一斉下抜け」のクセに注意が必要です。上値を追うためには、中銀ウィークでの明確なファンダメンタルズの裏付けが必要不可欠な条件でしょう。

日経平均株価(日経225)への影響

続いて日本の株式市場への影響についてみていきましょう。

●日経225の週足チャート

 

日経225の週足チャート

外為どっとコムのCFDで日経225の週足チャートを確認すると、強い上昇トレンドを維持していました。上から短期25週、中期75週、長期200週の明確なパーフェクトオーダーが右肩上がりで配列されており、中長期における「円安・株高」トレンドを強く支持する形状です。

ボリンジャーバンドで分析すると、ローソク足はプラス1シグマラインの上側を完全にキープしており、プラス2シグマラインにタッチしながらバンド幅が綺麗に上方に拡大する「バンドウォーク」を見せています。

MACDではプラス圏でMACD線がシグナル線を下から上へ突き抜けるゴールデンクロスの状態から、一段と上値を追う形状となっており、上昇モメンタムの再加速が示唆されています。

●日経225の日足チャート

 

日経225の日足チャート

日足チャートでも、上から短期25日、中期75日、長期200日の完全な右肩上がりの並びとなっています。ただしボリンジャーバンドで見ると、プラス2シグマに沿った力強い上昇から、直近2営業日で陰線を引く動きとなっており、プラス1シグマラインを下回って25日移動平均線方向へ推移する、短期的な過熱からの調整局面を迎えています。MACDは高い位置でMACD線とシグナル線がゴールデンクロスを維持しているものの、足元の調整によってヒストグラムはわずかに頭打ちとなっており、高水準でのもみ合いを示唆しています。当面は25週短期移動平均線を終値ベースで維持できるかどうかが大局の分岐点となります。背景には原油価格の高止まりによる輸入コスト増という脆弱性があり、米国株以上の下落圧力がかかりやすい需給構造に注意が必要です。

米株価指数「S&P500」の動向

今度は米国株式市場への影響についてみていきましょう。

●S&P500の週足チャート

 

S&P500の週足チャート

外為どっとコムのCFDで米国S&P500の週足チャートを分析してみます。これまで「世界の株高」を牽引してきた米国株ですが、代表的な指数であるS&P500も、やはり「上昇(強気)」のトレンドを維持しています。

移動平均線は、上から短期25週、中期75週、長期200週のすべてが右肩上がりのパーフェクトオーダーを形成しています。

ボリンジャーバンドはバンド拡大を伴う高値圏にあります。ローソク足は一時プラス2シグマラインを超えて上昇したのち、足元ではプラス1シグマとプラス2シグマの間で高値圏を維持しています。

MACDの動向を確認すると、MACD線とシグナル線がともにプラス圏の非常に高い位置で、デッドクロスを避けながら並走を続けており、上昇トレンドのモメンタムを維持している大局が確認できます。

●S&P500の日足チャート

 

S&P500の日足チャート

今度は日足チャートです。こちらも上から短期25日、中期75日、長期200日のパーフェクトオーダーが綺麗に右肩上がりで推移しており、上昇(強気)の推移にあります。

ボリンジャーバンドの推移を見ると、堅調に上値を追う展開から足元で陰線が出現し、短期サポートである25日移動平均線(紫色の線)付近まで押し気味に推移する「押し目買い」の形状を呈しています。

ただし、MACDは高水準においてデッドクロスが意識される位置まで接近しており、ヒストグラムが縮小傾向にあるため、目先はデッドクロス間近の警戒感に注意を要します。長期的な最終支持線である200日移動平均線や75週移動平均線を維持できるか否かが、トレンド転換の重要な防衛ラインになりそうです。

実務的な投資戦略とボラティリティ管理

さて、実務的な投資戦略を組み立てる上で、カレンダーの構造を把握することは必須です。今回のスケジュールは、6月16日(火)に発表される日銀決定会合の結果から、日本時間で18日(木)未明に発表される米FOMCの発表(およびウォーシュ新議長の記者会見)まで、わずか24時間強の猶予しかありません。日銀の判断によって、円の売買に思惑が走り、米ドル/円相場が動揺した状態のまま、新しいFRB体制の「方針」という「大型材料」が市場に「上書き」されることになります。政策決定が連続することで価格変動が連鎖しやすいスケジュールには、細心の注意が必要です。

1)イベント前後はポジションを軽く

このような状況での実務的な指針は、「予測を当てること」ではありません。「不測の事態でも生き残ること」です。日米双方からどのようなサプライズが飛び出すか分からない状況下では、ボラティリティの急拡大による突発的な強制ロスカットを回避するため、保有するポジションのサイズを通常の3分の1以下に縮小して臨むのが実務的な指針です。どちらの方向に相場が跳ねたとしても、口座の維持率に致命的な打撃を受けないだけの十分な資金余力を担保しておくことが最優先されます。

2)160円手前は日本の11.7兆円介入実績を前提に

米ドル/円相場の160円台で、さらなるロング(追随買い)を検討する際、忘れてはならないのは、5月29日に正式発表された4月28日〜5月27日期間における為替介入の実績です。政府・日銀が投じた円買い介入の資金は総額「11兆7,349億円」で、過去最大の規模となりました。

日足レジスタンスの160.727円が強固に意識されるのは、まさにこの11.7兆円という「巨額の実弾」が投じられたからです。公表データからも明らかなように、160円台に乗せてからは「介入警戒ゾーン」です。上方向への安易な追随は避け、急反落リスクを常に意識した資金配分が適切です。

3)原油価格とテクニカル指標の定点観測

また、相場の兆候を捉えるためには、先行指標の定点観測が欠かせません。具体的には、日米のインフレや実需のドル買い圧力の背景にある原油価格の動向です。FX取引アプリのチャート機能などを使い、日足の「25日移動平均線」に対するローソク足の推移や、各インジケーターの推移を客観的に計測して次の初動を待ちましょう。

中央銀行が明確な指針を示すまでは、感情的な売買を控え、リスク管理を最優先にする姿勢が求められます。市場が極めて敏感な状態にあるなか、テクニカル分析による根拠と金融政策の重要イベントの結果を冷静に見極めることが、日米中銀ウィークを無事に通過するための鍵となります。

 

岩田仙吉(いわたせんきち)氏
株式会社タートルズ代表/テクニカルアナリスト
2004年、東京工業大学から一橋大学へ編入学。専門は数理経済学。卒業後、FX会社のシステムトレードプロジェクトのリーダーになり、プラットフォーム開発および自動売買プログラムの開発に従事。その後、金融系ベンチャーの立ち上げに参画。より多くの人に金融のことを知ってほしいと思い金融教育コンテンツの制作に集中するために会社を創業。現在は、ハイリスク・ハイリターンの投資手法ではなく、初心者でも長く続けられるリスクを抑えた投資手法を研究中。
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