円安が続くドル円相場、史上最高値圏で推移する日本株、そして過熱感が高まるAI・半導体相場。2026年のマーケットは重要な転換点を迎えつつあります。
本稿では、エコノミスト・グローバルストラテジストのエミン・ユルマズ氏の見解をもとに、ドル円見通し、日本株の行方、AIバブル崩壊のリスクについて解説します。
【必見!】エミン・ユルマズ氏のドル円見通し動画
⚫️この記事のサマリー
2026年後半のドル円相場は、構造的な円安圧力が残りやすい一方で、160円台後半では政府・日銀による為替介入に注意が必要な局面です。
エミン・ユルマズ氏は、世界的な長期金利上昇の背景にはインフレ再燃リスクがあると指摘しています。中東情勢の悪化による原油価格の上昇は、日本の輸入コストを押し上げ、インフレ圧力を強める要因になり得ます。
また、日本株はAI・半導体関連を中心に強い流れが続いているものの、一部銘柄への資金集中には過熱感もあります。韓国株やプライベートクレジット市場の変調、米中間選挙や中東情勢も、2026年後半のマーケットを揺らすリスクとして意識されます。
- ・ドル円は円安基調が続きやすいが、162〜163円台では政策対応リスクに注意
- ・長期金利上昇の背景には、インフレ再燃への警戒がある
- ・日本株は強いが、AI・半導体関連への資金集中には過熱感もある
- ・韓国株、プライベートクレジット、米中間選挙も2026年後半のリスク
長期金利上昇とインフレ再燃はマーケットに何をもたらすのか?

現在、日本だけでなく米国や欧州でも長期金利の上昇が続いています。
日本では政策金利が依然として低水準にとどまる一方、10年債や30年債利回りは歴史的な高水準へ上昇しています。米国でも10年債利回りは4%台後半、30年債利回りは5%を上回る場面がみられました。
市場が長期金利の上昇を通じて織り込んでいるのは、インフレ再燃リスクです。背景にあるのは中東情勢の悪化です。原油や天然ガスだけでなく、ナフサや肥料原料など幅広い資源価格が上昇しており、エネルギーコストや輸送費、建設資材価格、食料価格などへの波及が懸念されています。
とりわけ原油価格の上昇は、あらゆる産業活動に影響を及ぼします。市場はこうした供給制約による物価上昇圧力を先回りして織り込み始めており、それが長期金利上昇の要因となっています。
日銀は利上げできるのか?
もっとも、現在のインフレは景気過熱による需要増ではなく、供給制約によるコストプッシュ型インフレの色彩が強いといえます。そのため、日本銀行が利上げを進めれば景気を冷やしすぎるリスクがあります。
物価上昇と景気悪化が同時に進行するスタグフレーションへの警戒感もあり、金融政策運営は極めて難しい局面に入っています。
一方で、円安への対応も避けて通れません。
日銀は国債買い入れ縮小やバランスシート圧縮を進めていますが、為替市場では依然として円売り圧力が優勢です。利上げを見送る局面が続けば、ドル円相場は再び円安方向への圧力が強まる可能性があります。
円安進行で為替介入は実施される?
ドル円相場については、引き続き円安基調が続くとの見方が示されました。
為替介入後も相場は大きく反転せず、重要な移動平均線を割り込むことなく推移しています。これは市場が構造的な円安トレンドを維持していることを示しています。
ただし、160円台後半に入れば政策対応への警戒も高まります。仮にドル円が162〜163円台へ上昇した場合、為替介入への警戒感が強まり、相場が急変動するリスクもあります。
そのため、円安トレンドを前提としながらも、一方向への過度なポジション形成には注意が必要な局面といえるでしょう。
なぜ円安は続いているのか?

円安の背景として注目されるのが、日本の貿易構造です。
日本は経常収支黒字国である一方、貿易収支はエネルギー価格の影響を受けやすく、赤字に転落しやすい構造を抱えています。
特に東日本大震災以降は原発停止に伴うエネルギー輸入増加が続いており、円安圧力の一因となっています。
円安を構造的に改善するには、半導体など高付加価値産業の育成、国内生産能力の強化、エネルギー政策の見直し、原発再稼働の推進など、中長期的な取り組みが必要になります。
ただし、こうした改革には数年単位の時間を要するため、短期的には1ドル160円台の円安が続きそうです。
日本株上昇はAI・半導体関連銘柄だけ?
日経平均株価は史上最高値を更新し続けています。
背景にはAI向け半導体需要の拡大があり、キオクシアや東京エレクトロン、ソフトバンクグループなど一部の銘柄へ資金が集中しています。
しかし、この状況には過熱感も見られます。AI・半導体関連銘柄の上昇スピードは非常に速く、短期的にはバブル的な要素も否定できません。
もっとも、日本株全体が弱いわけではありません。防衛関連、鉄鋼、精密機器などの基盤産業にも資金流入が続いており、業績改善と企業統治改革を背景に、日本企業への海外投資家の評価は依然として高い状況です。
韓国株はバブルなのか?

韓国株市場では、サムスン電子とSKハイニックスへの資金集中がさらに顕著になっています。両社の影響力は極めて大きく、市場全体が実質的にAI・半導体相場へ依存する構造となっています。
さらに韓国ではシングルストック型のレバレッジETFが急増しており、投機色も強まっているとエミン氏は分析しています。AIブームが継続する限りは上昇余地もありますが、反転した場合には急激な調整が起きる可能性があります。韓国株の下落が日本株や米国株のAI関連銘柄へ波及するリスクも無視できません。
韓国株上昇の背景や調整リスクについては、伊藤忠総研レポートでも詳しく解説しています。あわせてご覧ください👇
韓国株(KOSPI)はバブルなのか?AIブームで急騰、調整リスクも【伊藤忠総研レポート】
プライベートクレジット問題は次の金融不安の火種となるか?
市場関係者の間で注目されているのがプライベートクレジット市場です。
AI関連企業やスタートアップ企業の一部は、銀行融資ではなくプライベートクレジットを通じて資金調達を行っています。金利上昇が続けば返済負担が増加し、信用リスクが高まる可能性があります。
さらにAI投資が本当に収益化できるのかは依然として不透明です。データセンター投資や半導体需要は拡大しているものの、その投資に見合う収益が生まれなければ、現在の高い評価を正当化することは難しくなります。
マーケットがAIの収益性に疑問を持ち始めると、大きな調整局面を迎える可能性もあります。
2026年後半の最大リスクは?

今後のマーケットを左右する最大のテーマは二つあります。
一つはイラン情勢です。エネルギー供給不安が長期化すれば、原油価格の急騰を通じて世界経済へ大きな影響を与える可能性があります。
もう一つは米国の中間選挙です。米国ではAIによる雇用不安が政治テーマとして浮上しつつあり、AI規制強化や課税強化の議論が進む可能性もあります。
もしAI関連産業への逆風が強まれば、現在のAI・半導体主導相場の前提条件が大きく変化することになります。
まとめ
2026年後半のマーケットは、円安、インフレ、AIブーム、地政学リスクという四つのテーマが交錯する局面となりそうです。
ドル円は引き続き円安トレンドが優勢とみられるものの、160円台後半では為替介入への警戒が必要となります。
日本株は中長期的に強気スタンスを維持できる環境にある一方、AI・半導体関連銘柄への過度な資金集中には注意が必要です。
また、中東情勢や米中間選挙、プライベートクレジット問題といったリスク要因も存在します。
投資家にとっては、短期的な値動きだけでなく、金利・為替・エネルギー価格・政治動向を総合的に捉える視点がこれまで以上に重要となるでしょう。
エミン・ユルマズ氏エコノミスト、グローバルストラテジスト
トルコ・イスタンブール出身。1996年に国際生物学オリンピック優勝。
97年に日本に留学し東京大学理科一類合格、工学部卒業。同大学大学院にて生命工学修士取得。
2006年野村證券に入社し、M&Aアドバイザリー業務に関わる。
2024年にレディーバードキャピタルを設立し、代表を務める。
現在各種メディアに出演しているほか、全国のセミナーに登壇。文筆活動、SNSでの情報発信も積極的に行っている。
本サイトに掲載する情報には充分に注意を払っていますが、その内容について保証するものではありません。また本サービスは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであって、投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資方針や時期選択等の最終決定はご自身で判断されますようお願いいたします。なお、本サービスの閲覧によって生じたいかなる損害につきましても、株式会社外為どっとコムは一切の責任を負いかねますことをご了承ください。

