
作成日:2026年5月11日 11時30分
今週のドル円は要警戒、米物価指標、トランプ米大統領の中国訪問とイベント豊富
今週のドル円の予想レンジ:155.00円~159.00円
今週は、米消費者物価指数(CPI)、米生産者物価指数(PPI)、米小売売上高、米連邦準備制度理事会(FRB)高官発言、ベッセント米財務長官の来日、トランプ大統領の中国訪問、日本の経済指標が重なるイベントフルな週です。足元のドル円は、4月下旬に160円台を付けた後、5月入り後に155円台前半まで急落し、その後は156円台後半で下げ渋る展開となっています。
今週の中心テーマは、まずは米インフレ指標が米長期金利を押し上げるか、それとも利下げ観測を再び強めるかとなりますが、ドル円は日米金利差だけでなく、160円接近時の為替介入警戒、米要人発言、日本側の政策正常化観測にも振らされやすく、今週は一方向に決め打ちしにくい相場になりそうです。
ドル円見通しは経済指標に依存、FOMC内の見解別れる今だからこそ
現在の米ドルは、米金利の高止まりに支えられている一方で、積極的に上値を買い上がるには慎重さも必要な状態です。4月29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利が3.50〜3.75%に据え置かれました。声明文では、今後の政策判断について、入ってくるデータ、見通し、リスクのバランスを慎重に評価するとされ、2%のインフレ目標へ戻す姿勢も改めて示されました。
注目すべき点は、会合の投票内容です。ミラン理事が0.25%の利下げを主張して反対し、ベス・ハマック、ニール・カシュカリ、ローリー・ローガンの各氏は、政策金利の据え置き自体には賛成しつつも、声明文に含まれた緩和方向の含みには反対しました。これは、FRB内で「景気への配慮」と「インフレ再燃への警戒」の両方が残っていることを示しています。
そのため、今週の米消費者物価指数(CPI)が強ければ、利下げ観測の後退を通じて米金利が上昇し、ドル円を押し上げる可能性があります。一方、インフレ鈍化が確認されれば、米金利低下を通じてドル円の上値を抑える可能性があります。
米財務長官が来日して、高市首相と片山財務相と会談
今週は、経済指標だけでなく要人発言にも振らされやすい週です。11日~13日までベッセント米財務長官が来日して高市首相や片山財務相と会談します。市場では、円安対応や日銀の政策正常化、経済安全保障を巡る発言が注目されており、会談後のヘッドライン次第ではドル円が振れる可能性があります。また、13日~15日までトランプ米大統領が中国を訪問し、習近平・中国国家主席と会談します。また米国側では、5月14日にマイケル・バーFRB理事のバランスシートに関する講演が予定されています。これらのイベントを通じて伝わる発言が、ドル円に影響を及ぼす可能性があります。
日本側では、5月12日に日銀の「金融政策決定会合における主な意見」が公表されます。4月27〜28日の会合で、追加利上げや物価見通しについてどの程度前向きな意見が出ていたかが焦点です。追加利上げに前向きな意見が多ければ、円金利の上昇観測を通じて円買い材料になることも想定しておきたいです。
米インフレ指標の注目ポイント
直近の米消費者物価指数(CPI)は、3月分で前月比+0.9%、前年同月比+3.3%でした。特にエネルギー価格が前月比+10.9%、ガソリン価格が+21.2%し、月次の物価上昇の大きな要因になりました。一方、食品とエネルギーを除くコア指数は前月比+0.2%、前年同月比+2.6%にとどまっています。
今週発表される4月分では、エネルギー高が一時的な要因にとどまるのか、それともサービス価格や住居費にも波及しているのかが焦点になります。仮にコア指数まで強い内容となれば、FRBの利下げ開始時期がさらに後ずれするとの見方が強まり、米金利上昇を通じてドル円の支援材料になります。反対に、コア指数の鈍化が確認されれば、利下げ観測が再び強まり、ドル円の戻りを抑える可能性があります。
雇用面では、4月の非農業部門雇用者数が前月比11.5万人増、失業率は4.3%で横ばいでした。平均時給は前月比+0.2%、前年比+3.6%です。雇用は急失速していない一方で、力強い加速とも言い切れません。したがって、米ドルにとっては「景気が崩れていないため売り込みにくいが、積極的に買い上げるにはCPIなどの追加材料が必要」という中間的な状況です。
IMM通貨先物では円ショート拡大が一服

市場センチメントは、ドル買い材料は残るが、160円台を積極的に追いにくいという状態です。米商品先物取引委員会(CFTC)の5月5日時点のデータでは、円先物の非商業部門はロングが109,035枚、ショートが170,773枚で、差し引き61,738枚の円売り越しでした。前週からはショートが37,816枚減っており、円売りポジションの巻き戻しが進んだことも確認できます。
このポジション整理は、円売りトレンドが完全に消えたというより、160円台接近後の急反落で、いったん過熱感が冷まされた状態と考えられます。円売りポジションは、ドル円上昇時には燃料になりますが、弱い米指標や介入警戒、日銀の利上げ観測が出た場合には、買い戻しによって下落を速める要因にもなります。
今週は、米CPIで米金利が上振れるか、日本側材料で円買い圧力が強まるかによって、ポジションの再構築と巻き戻しが交互に出やすい相場です。
ドル円のテクニカル分析と売買戦略:10日線付近が戻り売りのポイントに

テクニカル面では、添付チャート上で4月下旬の160.727円を高値に反落し、5月入り後に155.033円まで下落しました。足元は156円台後半で下げ渋っていますが、10日移動平均線の157.57円付近、50日移動平均線の158.70円付近をともに下回っています。9日相対力指数(RSI)も40.5で、売られ過ぎというより、まだ上値の重さが残る水準です。
したがって、今週の売買戦略は、157.57円を明確に回復できるかが最初の分岐点になります。この水準を上回れない限り、157円台半ばから158円台前半では戻り売りが出やすく、下値では156円台前半、さらに直近安値の155.03円付近が意識されます。
50日移動平均線の158.70円前後を日足終値で上回る場合は、短期的な下落圧力はいったん後退し、159円台から160円手前への戻りを試す可能性があります。ただし、160円台では為替介入への警戒が強まりやすく、上値追いには慎重さが必要です。
総合すると、現時点では買いよりも戻り売りを基本に考えたい局面です。157.57円を下回る間は上値の重さを意識し、158.70円を明確に上抜けた場合はいったん売り目線を中立化する対応が妥当です。反対に、155.03円を日足終値で割り込む場合は、154円台方向への下落リスクが高まるため、短期勢のポジション巻き戻しにも注意が必要です。
今週は米指標、日本指標、日米要人発言が重なるため、指標発表前後はポジションを軽めにし、終値でどちら側に定着するかを確認したいところです。
今後の見通し
今週のドル円は、155円台前半〜158円台後半を中心レンジとして見ています。米消費者物価指数(CPI)が市場の想定より強く、米10年債利回りが再び上昇する場合は、157円台半ばを回復し、158円台後半を試す可能性があります。一方で、CPIが鈍化すれば、米金利低下とともに155円台前半を再び試す可能性があります。
今後の重要イベント・経済指標
- 5月11日(月)--:-- ベッセント米財務長官、来日予定(13日まで)
- 5月12日(火)08:30 日本 3月家計調査
- 5月12日(火)08:50 日本 日銀「金融政策決定会合における主な意見」
- 5月12日(火)21:30 米国 4月消費者物価指数(CPI)
- 5月13日(水)--:-- トランプ米大統領、中国訪問(15日まで)
- 5月13日(水)08:50 日本 3月国際収支
- 5月13日(水)21:30 米国 4月生産者物価指数(PPI)
- 5月14日(木)13:00 日銀・増審議委員の講演
- 5月14日(木)21:30 米国 4月小売売上高
5月15日(金)06:30 バーFRB理事講演 - 5月15日(金) パウエルFRB議長任期満了、次期議長人事に注意
- 5月15日(金)08:50 日本 4月企業物価指数
- 週を通じて:中東情勢、原油価格、日本当局の円安けん制発言、為替介入観測。特に158円台後半から160円方向では、日米の要人発言による急変にも注意が必要です。
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