
執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年7月11日 14時20分
ドル/円150円まで目線切り上がる、見落としはないのか
米ドル/円、147円台へ上昇
米国の関税政策や減税政策を通じて米国の利下げ時期が遅れるとの見方や、対日高関税率付加で日銀の追加利上げも遅延するのではとの見方から、円安・米ドル高が進み、米ドル/円は147.181円まで上昇しました。ただ、直近の上昇ペースが急だったほか、トランプ関税発動による不透明感から今後の見通しが見極めにくいこともあり、米ドル/円は買い一巡後は頭打ちになりました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
米消費の減速が転換点になることも
来週は、米国の通商政策の余波と主要経済指標の発表を受けて、米ドル/円の方向性を試す展開になりそうです。経済指標では、米国の6月消費者物価指数、同小売売上高などが発表されるほか、日本では6月全国消費者物価指数などが発表されます。インフレについては、在庫積み上げなどから関税政策がインフレに与える影響が確認できるまでにはタイムラグがあるようです。
しかし、4月に縮小していた商品貿易の赤字額が再び拡大の兆候が見られるうえ、世界的に長期金利が上昇し始めていること、カナダやメキシコのインフレ率が上昇傾向を示している点を踏まえると、米インフレが加速し始めていても不思議はありません。予想以上に価格転嫁が進んでいれば、FRBの利下げ期待が後退し米ドル/円を押し上げる可能性があります。
また、本邦サイドはどこをとっても円売り材料に。本邦金利が上昇すれば参院選挙後の政権運営や財政運営を警戒した悪い金利上昇との見方をベースにした円売り、または米関税賦課で日銀の年内利上げ期待後退をベースにした円売りと、いずれの要因からも円売りにつながる状況です。思惑通りに進むかは不明ですが、現在の環境では円が買われる余地は限定されており、米ドル/円の下値は底堅い展開が見込まれそうです。
もし、円買いが強まるとするなら、米国の消費に対する警戒心が高まり、米国の景気後退観測が高まることぐらいでしょうか。米国の1-3月期は消費の減速から前期比年率で-0.5%と経済成長にブレーキがかかりました。4・5月の個人消費支出の伸びが抑制されていたため、消費減速を示す指標がさらに加われば、米国の景気後退懸念から株安を通じてリスクオフの流れが強まる可能性もあります。
一目雲の低下が懸念材料(テクニカル分析)
米ドル/円は、これまで148円を目指す展開と見ていたが、ボリンジャーバンド(期間21日)での+1σから+2σの間でバンドウォーク開始を考えると、150円付近まで目線が切り上がりつつあるとの印象を持ち始めています。このような状況で、超短期的には146.50円付近で買いを検討したいです。ただし、来週中盤から日足一目均衡表の雲低下に併せてサポート力の低下が懸念される状況で、前半にどこまで上値をトライできるかが焦点となります。上値を伸ばしきれなかった場合、米ドル/円は145.00円付近までの調整が想定されます。146.00円を割り込んでくる場合は売り目線へ転換したいと考えています。
【米ドル/円チャート 日足】

出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:USD/JPY:145.000-149.000
7/14 週のイベント:

一言コメント
「米国が医薬品に200%の関税の可能性」。すごい、ホントにするのだろうか。200%の関税を掛けたら、米国民は医薬品の大幅値上がりに直面し困ることになるのは簡単に想像できます。しかも猶予期間が1年から1年半与えられるとしても、製薬会社の国内回帰よりも、米国による事前の買い占めの方が起こりやすそうで、世界的な医薬品不足や価格高騰につながると考えると、尋常じゃない混乱が起こり得るのではないだろうか。
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