このレポートの概要:米国株式市場と外国為替市場の最新動向と分析
金融マーケットで永く情報発信を行っている田嶋智太郎氏が、米国株式市場の最新動向を詳しく解説します。
米中協議の進展期待が拡がる
S&P500種は、先週末6日にかけて6000ポイント台を回復。やはり、大きかったのは米中協議の進展に対する期待が拡がったことに尽きる。既知のとおり、5日には米中首脳が第2次トランプ政権発足後では初となる電話会談を行い、翌6日には米中が本日(9日)、ロンドンで2回目となる閣僚協議を開くことが明らかにされた。
トランプ米政権にとってレアアースの輸出規制は極めて深刻な問題であり、今回の米中首脳会談がトランプ氏から電話をかけることで実現したことから考えても、2国間交渉の主導権が中国側にあることは明らか。今後は、米国側がかなりの譲歩を余儀なくされる格好で協議は確実に“進展”し、緊張緩和ムードも広がると見られる。
米雇用は本当に底堅いか?
6日に発表された5月の米雇用統計の結果も市場に一定の安心感をもたらした模様。非農業部門雇用者数(NFP)の前月比の伸びが市場予想を上回ったことや、失業率が前回水準を維持したことなどを、市場は「米雇用の底堅さは堅持されている」と受け止めたと伝わる。ただし、今回も前月分のNFPは大幅に下方修正されており、5月分の結果についても些か信憑性に欠けるとの感は拭えない。前日までに発表されていた米雇用指数を受けて下振れリスクに対する警戒が拡がっていたことで、今回の米雇用統計の結果に「ひとまずホッと胸を撫で下ろした」というところもあったように思われる。
つまるところ、今回の結果は必ずしも強気筋を勢いづかせるものではなかったと個人的には感じる。労働参加率が0.2%ポイントも低下するなかで、失業率が前回水準を維持したということが一体何を物語るのか、慎重に考えることも必要であろう。
米株価は目先的に過熱気味
とまれ、急速に値を戻してきたS&P500種には目先的な過熱感が出ており、テクニカル的にも一旦売りのシグナルが灯りやすい状況となっていることは否定できない。もちろん、6000台を回復したこと自体が当面の達成感を醸成しやすいということもある。本日の米中閣僚協議で当面の強気材料が「一旦出尽くし」となる可能性もないではない。
このあたりで目先の利益確定に伴って「ひとまず調整」となれば、やはり一つの下値の目安は200日移動平均線(200日線)ということになろう。そもそも、中国側によるレアアース規制を全面的に解除させるだけの“お土産”を米国側が持参することなどできるのであろうか。ここは冷静に見守りたい。
ドル/円は戻り売りの好機を狙う
先週6日は、米10年債利回りも大幅に上昇し、結果的にドル/円も強含みで推移することとなった。5月の米雇用統計の結果を市場は「強め」と受け取ったことで安心感が広がったというが、前述したとおり筆者は必ずしも強かったとは思えず、市場の反応には違和感を覚える。繰り返すも、米中協議の進展は米国側の“焦り”がもたらしているものであり、正味のところドル買い材料とは言い難い。
むろん、市場の反応には逆らえないわけで、こうした状況下ではドル/円の一時的な上昇を眺めながら、戻り売りの好機を狙う算段で臨みたいと個人的には考える。当面の上値抵抗となり得るのは、一つに21日移動平均線(21日線)であり、6日は同線を上回って週の取引を終えている。振り返ると、5月28日、29日にも21日線を一時的に上回る動きを見せたが、後に失速することとなった。また、少し上方には一目均衡表の日足「雲」上限の水準(現在は145.60円処)も控える。
市場のリスク感覚麻痺に強い懸念
先週、米商務省が発表した4月の米貿易赤字は前月比で55.5%も減少した。トランプ関税の発動を警戒して急増していた駆け込み輸入が急減したためである。例えば、米企業は輸入した製品の在庫を国内で積み上げ、米消費者は自動車などの耐久財を前倒しで購入した。むろん今後、その反動が大きく出るのは間違いない。関税の脅威がピークアウトするなか市場には行き過ぎた楽観が広がっており、想定されるリスクに備える感覚が麻痺していること、それ自体が懸念される。
ドル円週足チャート
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田嶋智太郎氏
経済アナリスト 慶應義塾大学を卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券を経て、経済アナリストに転身。現場体験と綿密な取材活動をもとに、金融・経済全般から戦略的な企業経営、個人の資産掲載まで幅広い範囲を分析・研究。 WEBサイトで経済・経営のコラム執筆を担当し、株式・外為・商品などの投資ストラテジストとしても高い評価を得ている。 また、「上昇する米国経済に乗って儲ける法」など書籍も手掛けるほか、日経CNBCレギュラーコメンテーターも務める。
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