【外為総研 House View】
執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也
目次
▼ポンド/円
・ポンド/円の基調と予想レンジ
・ポンド/円 1月の推移
・1月の各市場
・1月のポンド/円ポジション動向
・2月の英国注目イベント
・ポンド/円 2月の見通し
▼豪ドル/円
・豪ドル/円の基調と予想レンジ
・豪ドル/円 1月の推移
・1月の各市場
・1月の豪ドル/円ポジション動向
・2月の豪州・中国注目イベント
・豪ドル/円 2月の見通し
ポンド/円
ポンド/円の基調と予想レンジ
ポンド/円 1月の推移
1月のポンド/円相場は189.336~198.253円のレンジで推移し、月間の終値ベースで約2.3%下落(ポンド安・円高)。前半はトランプ米大統領の就任を控え、関税政策を巡る懸念などからポンド売りが優勢だった。8日にはトランプ氏が、関税の導入に法的根拠を与えるために「国家経済緊急事態」の宣言を検討していると伝わり、ポンドが下落。英中銀(BOE)の利下げ観測も相まって13日にはポンド/ドルが1年2カ月ぶりの安値に沈んだ。15日に行われた植田総裁の講演を経て日銀の利上げ観測が高まったこともあってポンド/円は17日に189.34円前後まで下落した。ただ、前月安値(188.09円前後)を下抜けるには至らなかった。するとその後は、トランプ米大統領が20日の就任演説で関税に具体的に言及しなかったことなどから持ち直しの動きが強まり、24日には194.70円台まで値を戻した。もっとも、27日の世界的な株安(ディープシーク・ショック)などで月末に向けて再び軟化。30日にトランプ米大統領が2月1日にカナダとメキシコに対して25%の関税を発動するとあらためて表明したことで191円台に押し戻される場面もあった。
始値 | 高値 | 安値 | 終値 |
196.669 | 198.253 | 189.336 | 192.301 |
出所:外為どっとコム
9日
BOEのブリーデン副総裁は、追加利下げには前向きだと述べ、足元の英国債利回りの急上昇については特に問題視していない姿勢を示した。国債利回りの急伸およびポンドの下落は「秩序ある」市場の動きの結果であり、米国債や欧州債にも影響を与えている世界的な要因を反映したものだと述べた。
16日
英11月国内総生産(GDP)は前月比+0.1%と市場予想(+0.2%)を下回った。同鉱工業生産は前月比-0.4%と市場予想(+0.1%)に反して落ち込んだ。同貿易収支は193.11億ポンドの赤字だった(予想180.00億ポンドの赤字)。
17日
英12月小売売上高は前月比-0.3%と市場予想(+0.4%)に反して減少。自動車燃料を除いた小売売上高も-0.6%と大幅に落ち込んだ(予想+0.3%)。
21日
国際労働機関(ILO)基準の英9-11月失業率は4.4%に上昇(予想4.4%、前回4.3%)。9-11月の週平均賃金・除賞与は前年比+5.6%と予想(+5.5%)を上回る伸びとなった(前回+5.2%)。英12月失業率は4.6%、同失業保険申請件数は0.07万件だった。
22日
英国家統計局が発表した昨年12月の英政府の財政赤字は、178億ポンドと市場予想(142億ポンド)を大きく上回り、前年同月(67億ポンド)の2倍以上となった。赤字拡大の最大の要因はインフレ連動債の金利支払いだった。
24日
英1月PMI・速報値は製造業48.2、サービス業51.2といずれも市場予想(47.0、50.8)を上回った。
27日
中国の新興企業DeepSeek(ディープシーク)は前週、低コストの人工知能(AI)モデルを開発したことを発表。米ハイテク企業の優位性への懸念が広がったことで、AI関連銘柄の代表格であるエヌビディアの株価は一時18%超下落した。
1月の各市場
1月のポンド/円ポジション動向
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2月の英国注目イベント
ポンド/円 2月の見通し
英中銀(BOE)の利下げ観測が高まっている。昨年末時点で60%程度だった金利先物の2月利下げの織り込みは2月3日時点でほぼ100%に上昇。同じく昨年末時点で2025年の利下げは2回と見られていたが、現在は3回となっている。その背景は、英国景気の減速とインフレ鈍化だ。1月16日に発表された英11月国内総生産(GDP)は前月比+0.1%の微増にとどまっており、2月13日に発表される10-12月期GDPが4四半期ぶりに前期比マイナスとなる可能性も指摘されている。他方、1月15日に発表された英12月消費者物価指数(CPI)は食品やエネルギーを除いたコアベースで前年比+3.2%に鈍化。BOEが注目するサービスCPIについても前年比+4.4%と高水準ながら、伸び率は2022年3月以来の低さとなった。こうした中、2月6日のBOEの利下げは市場も織り込み済みと見られるが、同時に発表する金融政策報告で成長率見通しやインフレ見通しを下方修正するようなら、4半期に一度のペースを見込む市場の利下げ観測がさらに強まるだろう。米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを急がない姿勢を示していることから、ポンドは対ドルで売られやすい地合いが続きそうだ。もっとも、足元で市場を揺るがしている米国の関税政策は、目先的にポンドの支えとなる可能性もある。米国のトランプ大統領はスターマー英首相との電話会談後に「今のところよくやっている」「彼の思想に私は賛成しないかもしれないが、彼とはとても良い関係だ」と述べ、英米関係が比較的良好であることを匂わせた。また、2月2日(対カナダ・メキシコ・中国への関税賦課を決めた後)には、イギリスを関税の対象にするつもりはあるかとの英メディアの質問に対し「どうなるか様子を見る」「もしかしたらそうなる」と回答するにとどめた。「確実にそうなる(関税を賦課する)」とした欧州連合(EU)に対する姿勢とは大きな違いがあると言えそうで、ユーロ/ポンドはユーロ安・ポンド高に振れやすいと考えられる。ポンド/円は日英の金融政策の方向性の違いで上値の重い展開が予想されるものの、ユーロに対するポンド高などを支えに下値は限定的と見る。
(予想レンジ:188.000~196.500円)
豪ドル/円
豪ドル/円の基調と予想レンジ
豪ドル/円 1月の推移
1月の豪ドル/円相場は95.605~99.164円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約1.0%下落(豪ドル安・円高)した。米国のトランプ次期政権による関税政策が当初の想定ほど厳しい内容にはならないとの思惑から豪ドル買い・円売りが先行すると、昨年11月27日以来の高値となる99.16円前後まで上昇した。しかし、豪11月コア消費者物価指数(CPI)の鈍化をきっかけに豪中銀(RBA)の2月利下げが意識され失速。日銀の1月利上げ観測が浮上したこともあって17日には96.00円台に反落する場面もあった。米国でトランプ大統領が就任した20日以降は米政権の関税政策を巡る楽観的な見方などを背景に持ち直したが、99円台目前で再び上値が重くなった。27日にはいわゆる「ディープシーク・ショック」の株安で急落。29日には豪10-12月期CPIの下振れで2月18日の利下げ観測がほぼ確信に変わり96円台を割り込んだ。なお、トランプ米政権は31日のNYクローズ間際に、2月1日からメキシコとカナダに25%、中国に10%の関税を課す方針をあらためて表明した。
始値 | 高値 | 安値 | 終値 |
97.153 | 99.164 | 95.605 | 96.373 |
出所:外為どっとコム
8日
豪11月CPIは前年比+2.3%と市場予想(+2.2%)以上に前月(+2.1%)から加速。一方、コアCPIにあたるCPIトリム平均値は前年比+3.2%と前月(+3.5%)から伸びが鈍化した。
9日
豪11月小売売上高は前月比+0.8%と市場予想(+1.0%)ほどには増加しなかった。同貿易収支は輸出の伸びを背景に70.79億豪ドルの黒字となり、黒字額は市場予想(55.50億豪ドル)を上回った。
10日
米12月雇用統計が予想以上に良好で、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測が後退。長期金利の上昇を受けて米国株が下落するなど、市場にはリスク回避ムードが漂った。
16日
豪12月雇用統計は新規雇用者数が5.63万人増と市場予想(1.50万人増)を大幅に上回った。失業率は予想通りに4.0%へ上昇した(前回3.9%)が労働参加率は67.1%と過去最高の水準に上昇した(前回67.0%)。豪州の労働市場が堅調であることが示されたが、日銀の利上げ観測が強まる中で、豪ドル/円の上昇は続かなかった。
20日
米第47代大統領にドナルド・トランプ氏が就任。就任式の演説では、米国民の利益を優先する「米国第一」を掲げ「黄金時代」を築くと語った。一方で、関税については具体的に言及しなかった。
27日
中国の新興企業DeepSeek(ディープシーク)は前週、低コストの人工知能(AI)モデルを開発したことを発表。米ハイテク企業の優位性への懸念が広がったことで、AI関連銘柄の代表格であるエヌビディアの株価は一時18%超下落した。
29日
豪10-12月CPIは前年比+2.4%と市場予想(+2.5%)や7-9月期(+2.8%)を下回った。またRBAが重視するコアCPIにあたるCPIトリム平均は前年比+3.2%となり2021年10-12月期以来の低い伸びとなった。これを受けてRBAが2月18日の理事会で利下げを開始するとの観測が強まった。
1月の各市場
1月の豪ドル/円ポジション動向
【情報提供:外為どっとコム】
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- ※ 外為どっとコムのFX口座「外貨ネクストネオ」でお取引をされているお客様のポジション保持情報の比率を表しています。
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2月の豪州・中国注目イベント
豪ドル/円 2月の見通し
豪中銀(RBA)の利下げ観測と米国による対中関税が豪ドルの重しとなっている。1月29日に発表された豪10-12月期消費者物価指数(CPI)はRBAが重視するトリム平均値が前年比+3.2%とインフレ目標である2-3%の上限に接近。2月18日のRBA理事会で2020年10月以来の利下げが行われる可能性が高まっている。他方、米国のトランプ大統領は2月1日、中国に10%の追加関税を課す大統領令に署名した。同時に署名していたカナダとメキシコに対する25%関税は土壇場で発動回避が決まったが、対中関税については4日24時01分(日本時間14時01分)の発効期限を過ぎても続報がなかった。このまま発動されることが決まったと見られ、中国側の反発は必至だろう。「米中貿易戦争2.0」の勃発は、リスク回避ムードの高まりと中国景気の下押し懸念の両面から豪ドル売り材料になると考えられる。豪ドル/円は2月3日に一時94.63円前後まで下落して約4カ月半ぶりの安値を付けたが、カナダとメキシコへの関税賦課を米国が先送りしたことで4日には96円台を回復した。もし対中関税がこのまま発動されるとすれば3日安値を再び更新する可能性もあろう。仮に延期されても、回避が決まらない限り抜本的な解決とは言えない。したがって、豪ドル相場はトランプ米大統領の関税を巡る発言に振り回される展開が当面続くと考えたほうが良さそうだ。なお、RBAの2月18日の利下げについては、市場が9割がた織り込んでいることから利下げしてもサプライズはないだろう。声明やブロック総裁の会見から、今後の利下げペースを探る動きが強まる公算が大きい。
(予想レンジ:92.500~99.000円)

神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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