執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2024年9月6日 14時37分
140円割れトライ?米0.5%利下げがベースラインとなることも
円は米ドルに対して2.3%近く上昇!
米ドル/円は下げ幅拡大。週明けは147.198円までの戻りを試す場面がありました。しかし、その後は米7月雇用動態調査(JOLTS)における求人件数が21年1月以来の低水準へ鈍化するなど米国の景気減速や、米利下げ拡大が意識されて円買いが優勢に。米ドル/円は142.859円まで下げ幅を広げ、円は対米ドルで2.3%近く上昇しました。(各レート水準は執筆時点のもの)
FXのライブ解説、米雇用統計 ついに軟化の変曲点「マジやばくね」 (2024年9月5日)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
米雇用情勢悪化、0.5%利下げ初期値となることも?
米国では、失業者1人に対する求人件数が1.07件まで低下し、21年4月以来の水準になりました。この数字が1を下回ると、失業率が急速に悪化する傾向があるため、労働市場に対しては『ひっ迫緩和』を通り越して、『緩み』を警戒しなければいけない領域に入りつつあるようです。最終的には雇用統計や来週の消費者物価指数の結果を確認する必要はあるものの、今回の結果だけでも9月利下げ幅を0.5%へ拡大させるインパクトはそれなりにあったように感じます。また、仮に9月FOMCで0.25%利下げを全員一致で決定したとしても、パウエルFRB議長の会見で「0.5%利下げも議論した」ことが明らかになることも想定されるため、利下げ幅の拡大観測は目先くすぶり続け、米ドル/円の重しとして意識されそうです。
加えて、株式市場の不安定さが尾を引くようなら、米利下げ観測に伴う米ドル安と株価調整に伴うリスクオフの円買いが相互作用しながら、米ドル/円の下げ幅を広げる危険もあります。また、来週は11月に実施される米大統領選挙に向けた民主党・共和党候補者のテレビ討論会が開催されます。世論調査ではハリス副大統領が僅かにリードしているようですが、同氏が目指す法人税増税(21%→28%)によりS&P500の企業は収益が5%圧迫されるとの観測もあり、ハリス氏のリードが広がるようなら株式市場を圧迫して、米ドル/円のさらなる重しとなる危険もあります。討論会の行方にも注目したいです。
戻り売り目線を維持(テクニカル分析)
米ドル/円は、日足一目均衡表・基準線が低下するなど、中心価格帯がじりじりと下げてきています。売られ過ぎを示すオシレーター系指標も限定されており、下値余地の拡大が意識されやすい状況です。下値の目途としては、8月15日高値149.362円を起点とするフィボナッチエクスパンションの100%ラインとなる141.280円付近が先ずは意識されるレベルと見ています。さらにこのレベルで踏み止まれないようなら、週足一目均衡表・雲下限(2日週時点で140.779円)を割り込んで、昨年12月28日安値140.255円や心理的節目の140.00円割れを試しに行く展開も考えられそうです。
戻り売りを狙うなら、145円後半を推移する21日移動平均線付近まで引き付けたいところですが、そこまで戻す勢いがあるようにも感じられないため、145.00円付近までの戻しがあるようなら、少額でも売っておきたいと考えています。
【米ドル/円チャート 日足-左、週足-右】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:USD/JPY:139.000-145.000
9/9 週のイベント:
一言コメント
米大統領選挙戦において世論調査では、ハリス副大統領が僅かにリードしているようですが、将来のイベントの結果にユーザーが賭けられる分散型予測市場のPolymarketでは、事情が少し違っています。トランプ前大統領の勝利を見込む方が多いようです。
本サイトに掲載する情報には充分に注意を払っていますが、その内容について保証するものではありません。また本サービスは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであって、投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資方針や時期選択等の最終決定はご自身で判断されますようお願いいたします。なお、本サービスの閲覧によって生じたいかなる損害につきましても、株式会社外為どっとコムは一切の責任を負いかねますことをご了承ください。