執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2024年4月12日 13時15分
上目線維持、G20開催前に介入に踏み切るのか?
34年ぶり、米ドル/円153円台到達
米国の利下げ期待が後退する中で、インフレ抑制の進展が停滞していることを示す米3月消費者物価指数を受けて米長期金利が4.5%台を回復する中、153.321円と34円ぶりの高値を付けました。この間、日銀が次回会合で24年度の物価見通しを引き上げる可能性と報じられたほか、本邦当局者から円安警戒を示す口先介入が繰り返し行われましたが、市場の反応は限定されました。(各レート水準は執筆時点のもの)
FXのライブ解説、レートチェックのヒント探る、介入はその先か (2024年4月11日)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
金融政策の方向性をじっくり確認
米国の金融政策を巡っては、足もとの底堅い米経済指標から後ずれ感が強まっている様子はありますが、米当局が利下げ方向を見ていることは明らかです。ただ、利下げの時期については定まっていないことも事実で、来週の米小売売上高やFRB高官らの発言から利下げ時期への新たな手掛かりが得られるかどうかがポイントになりそうです。カードローン延滞率の上昇など先々の個人消費減速への懸念はあるものの、労働市場の底堅さを受けて個人消費に対する信頼が高まれば、利下げ先延ばし観測がさらに進むでしょう。この場合、米ドル円はもう一段上値を試すと考えます。逆なら、一旦利下げ後退の勢いが低下して、米ドル/円の調整が進むでしょう。
また、日銀の物価見通しに対する姿勢にも注意が必要です。植田日銀総裁は「当面、緩和的な金融環境が継続する」としているものの、「円安によって2%を超えて基調的物価が上昇すれば政策変更を考える」とも語っており、追加利上げに踏み切ることを恐れていません。25・26日の日銀会合が迫るにつれて、日銀の次の対応を巡る思惑から円債金利が上昇幅を広げれば、円が下支えされる可能性もあります。このときは、3月会合時に長短金利操作とマイナス金利政策の同時撤廃に反対した野口日銀審議委員の講演が、日銀のタカ派ムードを抑えることも想定されるため、こちらにも注目したいです。
それと、一言コメントにも記しましたが、政府・日銀による円買い介入については、瞬間的に大きな動きを伴うため無視はできませんが、そこにこだわり過ぎても仕方がないようにも感じます。来週はG20財務相・中央銀行総裁会議も開催されるため、主要国の金融当局者らの発言を通じて夏場にかけた主要国の金融政策の方向性をじっくり見極める方が有意義と考えます。
ボリンジャーバンド縮小が気掛かり(テクニカル分析)
米ドル/円は34年ぶりの高値更新で上方向の抵抗帯が限られており、上昇幅を広げやすい環境になりつつあります。2月13日高値(150.882円)からの下落幅の倍返しとなる155.290円付近まで目線が上がっており、買い回転が優勢と考えます。ただ、期間21日のボリンジャーバンドが縮小傾向を示している点が少し気掛かりで、エントリーの水準は慎重に見極めたいです。
【米ドル/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:USD/JPY:151.500-155.500
4/15 週のイベント:
一言コメント
G20前にすれば、G20は介入についての説明の場となりますが、それまで実施されなければ、G20は了承の場と捉えるべきなのかもしれません。とはいえ、G20開催までの日数や介入が1回で終わらない可能性を考えると、早くても介入は来週後半なのかな~、と秘かに考えています。
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