目次
▼ドル高が反転した11月
▼ランド相場も11月に対ドルで反発
▼来年にかけてのリスク
ドル高が反転した11月
南アフリカ・ランドの対ドル相場は、グローバルな為替市場におけるリスクセンチメント、そしてそれを大局的に反映して変動する安全通貨であるドルの名目実効為替レートと連動性が高い(第1図)。
第1図:南アフリカ・ランド対ドル相場とドル名目実効為替レート/(資料)Bloomberg
11月2日のFOMC後の記者会見で、パウエルFRB議長が次回以降のFOMCにおける利上げピッチが鈍化する可能性を指摘すると共に、10日発表の10月分米消費者物価指数が事前予想を下回るなど、米インフレ率のピークアウトや米金融政策の転換が意識されると、ドルはこれまでの堅調な上昇から相応の値幅で反落した。
ランド相場も11月に対ドルで反発
主要通貨が軒並み対ドルで持ち直しに転じる中、ランドも11月に入り対ドルで反発がみられている。この間、南アフリカ経済も構造的な電力不足など懸念材料は不変ながら、直近では製造業生産が回復基調を継続するなど(第2図)、引き続き一定の底堅さを維持。
第2図:南アフリカ・製造業生産(前年比)/(資料)Bloomberg
主要貿易相手国である中国において、厳格なコロナ規制が一部緩和されるとの観測が浮上したこともランドの下支え要因になっていたとみられる。もっとも、やや前のめりの金融市場の利上げピッチ鈍化期待に対して、FRB幹部からは早速牽制発言が行われており、ドルの下落やランドの反発が鈍化する場面もみられた。
来年にかけてのリスク
来年にかけては、これまでの急速な利上げが世界経済への影響が顕在化して来るリスクは十分にあり、中国のコロナ政策の行方も、足元の同国における感染者数増加傾向に鑑みれば、まだ不透明感が強い。ドル高・ランド安の流れが再開するリスクにも依然警戒が必要とみられる。
(国際通貨研究所 上席研究員 橋本 将司 氏)
【南アフリカランド/円 日足】
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新興国通貨が高金利である理由について
新興国に分類される国々は概して政治リスクや財政リスクが先進国よりも高く、したがってその経済的信用度は相対的に低い水準にあります。こうした条件下では海外投資家の資金を呼び寄せられず、経済発展の支障となるため、金利を上げたり税金を安くしたりすることで、信用度の低さを補いうる投資環境を構築しようとします。そのため新興国通貨は一般に先進国通貨よりも高金利となる傾向にありますが、前述したように各種リスクが高い水準にあることから、長期的には先進国通貨に比べて価値が下がる(=通貨が下落する)条件を備えているともいえます。

橋本 将司(はしもと・まさし)氏
慶應義塾大学卒業後、三菱UFJ銀行に入行。国際通貨研究所研究員、グローバルマーケットリサーチ・シニアアナリスト、経済調査室ニューヨーク駐在などを歴任し、グローバルな為替市場やマクロ経済に加え、米国金融業界や金融規制など幅広い分野の調査業務に従事。現在国際通貨研究所において、為替市場や主要国の金融政策・マクロ経済動向の分析を担当。理論的な観点からの為替市場分析を得意とする。
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