高金利通貨である南アフリカ ランドについて、中長期にわたり買いポジションを保有する視点で、現在を分析します。
執筆:外為どっとコム総合研究所 中村 勉
Twitter:@gaitamesk_naka
目次
南アフリカ ランド/円 上昇・下落のパワーバランス
南アフリカ ランド/円をトレードするうえで重要となる経済指標やイベントを個別に点検します。
5月19日のSARB(南ア準備銀行)金融政策会合で市場予想通り0.50%の利上げを実施し政策金利を4.75%へ。インフレ率が中銀目標を上抜けていることから、今後も利上げ継続予想となっている。次回は7月21日発表予定。
5月の南アフリカ・貿易収支は283億ランドと4月の大幅減から反発。4月は中国の複数主要都市でのロックダウンの影響が大きかったようだ。6月分は7月30日発表予定。
5月の南アフリカ・消費者物価指数は前年比+6.5%。ついに南アフリカ中銀の目標値(3%~6%)のを上抜けた。このことから利上げ幅拡大の可能性が出てきた。これ以上インフレが高進すると国内経済には悪影響。6月分の発表は7月20日予定。
2022年4月分では前月比-0.2%と予想(-1.3%)ほど悪化していなかった。一方で、洪水の影響などから-0.3%だった3月分は+0.8%に上方修正された。5月分は7月13日発表予定。
6月7日に発表された南アフリカ2022年第1四半期国内総生産(GDP)は前期比+1.9%と2期連続のプラスとなった。ただし、第2四半期はウクライナ情勢の悪化によるインフレ加速や洪水被害によりマイナスに落ち込むことが予想されている。
①国営電力会社エスコムによる、計画停電は続いている。賃金交渉の行き詰まりから起こったストライキは合意に至ったが、保守作業に遅れが生じている模様。この影響から計画停電が続いている。引き続き電力不足が国内経済回復の足枷となる。
②失業率は2022年1四半期で34.5%と前期(35.3%)からは改善したが、依然として高水準。南アフリカ経済の足枷。
③ラマポーザ大統領に対する脱税疑惑などで大統領の求心力が低下している。12月に迫った与党の党首選にも影響を与えそうだ。
④南ア労働組合連盟(Saftu)が国内の高い生活費に対する抗議のため8月にストライキを実施する計画をしているようだ。
⑤欧州の経済減速懸念、中国のロックダウン警戒など、資源国通貨のランドにはマイナスとなる材料が多く燻っている。
パワーバランス まとめ
インフレの上昇を抑えるためにSARBは4会合連続で利上げを行ったが、インフレは中銀目標(3~6%)をついに上抜けた。そのため、SARBが次回会合で行う追加利上げ幅が、市場予想を上回る可能性も出てきた。高失業率は引き続き悩みの種。GDPは2期連続でプラス成長となったが、計画停電の拡大や大統領の求心力低下など、ここへきて更なる問題が出てきている。
南アフリカ ランド/円、いまが買いどき?
SARBは5月19日に利上げを行ったものの、インフレ率はついに中銀目標レンジを上回った。これにより次回の中銀会合(7月21日)では市場が予想している追加利上げを上回る利上げ幅となる可能性が出てきた。電力不足が国内経済の足枷となっており、世界経済の減速懸念は資源国のランドにとってはマイナス要因。金融政策を見ると日銀が金融緩和継続を表明していることで中長期的には円安圧力がかかりやすい。
経済指標予定
7月12日 20:00 5月製造業生産
7月13日 20:00 5月小売売上高
7月20日 17:00 6月消費者物価指数
7月21日 未定 SARB政策金利
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当社取扱通貨のうち、いわゆる新興国通貨に分類されるトルコリラ・南アフリカランドおよびメキシコペソ(MXN)はインターバンク(銀行間為替市場)における流動性が主要国通貨に比べ相対的に低く、経済指標発表のみならず金融政策変更やその他政治的要因、さらには地政学的リスク等の要因による突発的な相場急変動が起こりやすい環境下にございます。また、こうした急変動時には実勢インターバンクレートのスプレッド(BidとAskの差)も平常時に比べ大幅に拡大する傾向にあり、その場合には当社でもやむなく提示スプレッドを一時的に拡大することがございます。あわせて、相場状況により「ダイレクトカバーの対象となる注文」の基準Lot数(最低数量)を一時的に変更する場合がございますので、あらかじめご承知おきくださいますようお願いいたします。これら新興国通貨のお取引、およびこれらを対象とするキャンペーンへのご参加に際しては、以上につきあらかじめご留意のうえ、ポジション保有時、特に法人会員様の高レバレッジ取引における口座管理には十分ご注意くださいますようお願い申し上げます。以上の新興国通貨それぞれのリスク、および直近時点でのリスクレポートにつきましては、こちらのページをご参照願います。
新興国通貨が高金利である理由について
新興国に分類される国々は概して政治リスクや財政リスクが先進国よりも高く、したがってその経済的信用度は相対的に低い水準にあります。こうした条件下では海外投資家の資金を呼び寄せられず、経済発展の支障となるため、金利を上げたり税金を安くしたりすることで、信用度の低さを補いうる投資環境を構築しようとします。そのため新興国通貨は一般に先進国通貨よりも高金利となる傾向にありますが、前述したように各種リスクが高い水準にあることから、長期的には先進国通貨に比べて価値が下がる(=通貨が下落する)条件を備えているともいえます。
中村 勉(なかむら・つとむ)
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー(株)へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
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