執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
目次
- ▼米ドル/円はリスク選好志向の後退で上値重い、これまでの利上げ材料はかえってネガティブ要因に
- ▼05月16日週の米ドル/円はさえない展開
- ▼米経済の先行きへの不安くすぶる
- ▼終値ベースで127.500円割れなら、さらに下げ幅拡大
- 05/23週のイベント
- 一言コメント
執筆日時 2022年05月20日 18時00分
米ドル/円はリスク選好志向の後退で上値重い、これまでの利上げ材料はかえってネガティブ要因に
05月16日週の米ドル/円はさえない展開
米国の個人消費の底堅さを確認したところで、129.775円まで戻したものの、その後は米経済のソフトランディングへの疑念が晴れず、127.026円まで失速しました。ただ、大台割れを回避すると128円前半まで持ち直すなど、上値が重い中にも下方向での買いも相応に感じられました。
米経済の先行きへの不安くすぶる
セル・イン・メイの格言通りならそろそろ株式相場の下落が一服して、これまでのトレンドである日米金利差拡大から、ドル/円相場が上を目指すとの思いが燻り始めても良い時期です。しかし、こうした雰囲気はこれまでのところ膨らまず、かえって心配の種が増えています。6月には中国・上海のロックダウンは解除予定ですが、北京での感染拡大など他都市でのコロナ感染症の収束は見通せていません。NY連銀が公表した世界のサプライチェーン指数は再び上昇傾向を示すなど、中国のコロナ感染症がすでに物流にも影響を及ぼし始めており、経済をさらに圧迫する危険はあります。
※出所:NY連銀
これまでは物価上昇が意識される場面では、米金融当局のタカ派進化との思考からドル高が進みやすい状況でした。しかし、今は物流の混乱によるインフレ圧力が企業業績を圧迫したり、消費減速懸念を高めるなど成長に対する逆風への思いを強める方向に作用しやすくなっており、各種経済指標、特にインフレ指標の受け止め方もこれまでのようにはいかないように感じています。来週はFOMC議事要旨や金融政策決定に際して重視する4月個人消費支出が発表されます。米経済の腰折れ懸念が払拭されれば、従来のドル高路線へ回帰していきそうですが、米経済のソフトランディング前提が崩れれば、ドル/円はさらに調整幅が広がる危険もあります。何れにしても、市場の視点が景気動向へ向いているため、株価の振幅をにらみながら神経質な相場展開になるのではと考えています。
終値ベースで127.500円割れなら、さらに下げ幅拡大
上値を徐々に切り下げる形で、下方向への警戒が強いイメージです。終値ベースで3月31日安値121.275円からの上昇幅の38.2%押しレベル127.499円レベルを割れていませんが、この水準を終値ベースで割り込めばさらに下げ幅を広げそうです。その際は同上昇幅の61.8%押しとなる125.123円が次に意識されるでしょう。押し目買いを入れるなら、少し様子を見たいです。戻りは21日移動平均線(129.255円:19日時点)近辺では戻り売りが強まりやすいと考えます。
【ドル円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:USD/JPY:126.500-129.500
05/23週のイベント
05/24 (火) 22:45 米国 5月 製造業購買担当者景気指数(PMI、速報値)
05/24 (火) 22:45 米国 5月 サービス部門購買担当者景気指数(PMI、速報値)
05/24 (火) 22:45 米国 5月 総合購買担当者景気指数(PMI、速報値)
05/24 (火) 23:00 米国 4月 新築住宅販売件数
05/25 (水) 21:30 米国 4月 耐久財受注
05/25 (水) 27:00 米国 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨
05/26 (木) 08:50 日本 4月 企業向けサービス価格指数(前年同月比)
05/26 (木) 08:50 日本 対外対内証券売買契約等の状況
05/26 (木) 21:30 米国 1-3月 期四半期実質国内総生産(GDP、改定値)
05/26 (木) 21:30 米国 新規失業保険申請件数
05/27 (金) 08:30 日本 5月 東京都区部消費者物価指数(CPI、生鮮食料品除く)
05/27 (金) 21:30 米国 4月 個人所得
05/27 (金) 21:30 米国 4月 個人消費支出
05/27 (金) 23:00 米国 5月 ミシガン大学消費者態度指数・確報値
一言コメント
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