執筆：外為どっとコム総合研究所 小野 直人
目次
- ▼ユーロ・ポンドは株価動向をにらんだ展開、重なるECBのFED化
- ▼05月09日週のユーロ/円・ポンド/円は大幅安
- ▼ドルのようにユーロも切り返す可能性はあるのか？
- ▼英国、スタグフレーションに続き政治的混乱くすぶる
- ▼ユーロ/円は下落トレンド入り
- ▼ポンド/円は戻り売り
- 05/16 週のイベント
- 一言コメント
執筆日時 2022年05月13日 14時00分
ユーロ・ポンドは株価動向をにらんだ展開、重なるECBのFED化
05月09日週のユーロ/円・ポンド/円は大幅安
経済成長に対する不透明感が意識されてリスク回避の円高が隆盛となり、ユーロ/円は132.653円、ポンド/円は155.592円（ともに執筆時点）まで下げ幅を拡大しました。
ドルのようにユーロも切り返す可能性はあるのか？
ラガルドECB総裁が7月利上げ開始も可能との考えを示したほか、他の多くの高官も7月理事会で大きな決断をするとのシグナルを市場に向けて発信しています。こうした様は、2～3月にかけて米金融当局者が急速にタカ派化した時とイメージが重なります。ドルの動向を振り返れば、この先、ユーロが当時のドルと同様に買い戻されるとの期待が強まるとの思いが芽生えてきても不思議はないでしょう。しかしながら、主要国による軍事支援で6月以降、ウクライナとロシアの交戦が激しさを増す危険があり、そう単純にはいかなそうです。欧州委員会が公表する春季経済見通しで、成長見通し（2月は4.0％）がさらに引き下げられれば、成長不安からユーロ安が進む危険はあります。ユーロは中期的には下目線を維持で、戻した局面では丁寧に売りで対応する場面と考えます。
英国、スタグフレーションに続き政治的混乱くすぶる
英領北アイルランド議会選（定数90）で、アイルランドとの統一を掲げるカトリック系のシン・フェイン党が第1党となりました。同党は、英帰属派でプロテスタント系の民主統一党（DUP）とは一線を画しており、アイルランドとの統一を目指し今後、住民投票の機運が高まるかもしれません。住民投票にはまだ越えなければいけない壁が高く、直ちに実施されるわけではありませんが、活動が盛り上がりを見せるなら長年独立を目指してきたスコットランドにも飛び火する危険があり、中長期的な英分断の火種がくすぶり始めた格好です。こうした活動を沈静化させる目的なのかは分かりませんが、英政府は英領の北アイルランドで使用するために本土から送られるモノに対する全ての検査の必要性を一方的に取り除く法案を作成したと伝わっており、今後、欧州との政治的混乱も不安視されます。加えて、高いインフレにより生活困難者が出始めるなど経済見通しも悪化するなど、ポンド買い材料は多くありません。ポンド/米ドルが1.2000ドル割れを試す動きには引き続き警戒が必要でしょう。
ユーロ/円は下落トレンド入り
3月7日安値の124.393円からの上昇幅の61.8％レベルとなる134.041円を割り込み、上昇トレンドはいったん終了とみてよさそうです。急落からの短期反発は期待できそうですが、日足一目均衡表・基準線（136.328円、12日時点）を明確に越えられなければ、今度は同雲の下限となる130.960円（12日時点）をトライそうな雰囲気です。基準線をバックに136.000円付近からは戻り売りで臨みたいと考えます。
【ユーロ/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ：EUR/JPY：130.80-136.300
ポンド/円は戻り売り
4月20日高値（168.424円）からのNT計算値となる160.070円付近をあっさりと割り込むと、同高値からのN計算値である155.405円まで下げました。下落スピードが速かったこともあり、目先、日足一目均衡表・転換線（159.743円、12日時点）までの反発も期待出来そうですが、あくまでもスピード調整の域を出ないでしょう。160.000円手前は戻り売りで臨みたいです。明確に155.400円を割り込めば次は心理的節目の153.000円が意識されるそうです。
【ポンド/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ：GBP/JPY：153.000-160.000
05/16 週のイベント
05/16(月) － ユーロ 欧州委員会、春季経済予測発表
05/16(月) 11:00 中国 4月小売売上高
05/16(月) 11:00 中国 4月鉱工業生産
05/16(月) 18:00 ユーロ 3月 貿易収支
05/17(火) 15:00 イギリス 4月 失業保険申請件数
05/17(火) 15:00 イギリス 4月 失業率
05/17(火) 18:00 ユーロ 1-3月期 四半期域内総生産（ＧＤＰ、改定値）
05/17(火) 26:00 ユーロ ラガルド総裁、講演
05/18(水) － 主要7カ国（Ｇ７）財務相・中央銀行総裁会議（-20日 於：ドイツ）
05/18(水) 15:00 イギリス 4月 消費者物価指数（ＣＰＩ）
05/18(水) 15:00 イギリス 4月 小売物価指数（ＲＰＩ）
05/18(水) 18:00 ユーロ 4月 消費者物価指数（ＨＩＣＰ、改定値）
05/19(木) 20:30 ユーロ ECB議事要旨
05/20(金) 15:00 イギリス 4月 小売売上高(前月比)
05/20(金) 23:00 ユーロ 5月 消費者信頼感（速報値）
05/22(日) 世界経済フォーラム年次総会（-26日 於：ダボス）
一言コメント
これまで感染者ゼロとしていた北朝鮮がついに、コロナ感染を認めました。しかも、その数は発熱が35万人で隔離が必要な人が18万人と途方もない数となっています。今後、状況次第では国際社会による人道的な支援が行われる可能性はありますが、核実験への脅威もあってその輪がひろがるのかどうかは微妙です。
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