▼8月12日の利上げは予想通り
▼インフレ見通しを引き上げ
▼メキシコ中銀人事が問題になっている可能性
▼それでも利上げ継続はFRBの姿勢次第か?
▼メキシコペソは引き続き高値圏で推移と予想
8月12日の利上げは予想通り
メキシコ中央銀行は8月12日に6月に続いて0.25%の追加利上げを決定しました。事前の予想通りの利上げになりましたが、5名の理事のうち2名は据え置きを主張しました。
またこの会合ではインフレ見通しを正式に上方修正しました。
6月24日の会合での0.25%の利上げは据え置き予想を覆すサプライズ利上げでした。しかし6月の声明では5月13日の会合と同じもので、利上げ局面を示唆するものではありませんでした。
インフレ見通しを引き上げ
今回の声明では「インフレは一時的とみられるが価格形成にリスクをもたらす可能性がある。インフレ期待に対する悪影響を回避しインフレ目標の3%目標に収斂するために金融政策を強化する必要がある」としました。これを読むとこの会合でインフレに対してそれを予防するためのスタンスを明確にしたのではないかと思われます。
今回の会合で2022年4~6月期のインフレ見通しを3.3%から4.4%に引き上げ、メキシコ中銀のインフレ目標である3±1%に戻るのは2022年4~6月期と予想しています。
メキシコ中銀人事が問題になっている可能性
今回の政策決定は3対2での決定だったと書きました。利上げに賛成した3名の理事はディアス・デ・レオン総裁、エスピノーサ副総裁、ヒース副総裁の3名で、据え置きを主張したのはエスキベル副総裁、ボルハ副総裁の2名でした。
エスキベル副総裁、ボルハ副総裁はロぺス・オブラドール大統領に任命されたメンバーでハト派のスタンスを示しています。
また12月に就任予定のエレラ次期総裁はハト派的なスタンスを就任前から示しています。エレラ氏はこれまで引き締めは来年まで予想していない、経済状況を注視していかなければいけないと発言しています。
タカ派のディアス・デ・レオン総裁としては、12月以降ハト派メンバーが多数派になることを考えると、彼の任期中にできるだけ利上げしていこうという意思がある可能性はあります。
もちろん急激な利上げによって経済をクラッシュさせてしまっては元も子もありません。実際メキシコ経済の景況感は好調とは言えません。
それでも利上げ継続はFRBの姿勢次第か?
エレラ総裁の就任まではまだ9月30日と、11月11日金融政策理事会が予定されています。あと2回の会合での利上げがあるかどうかはメキシコのインフレ率とFRBのタカ派度次第のところがあります。
まずは、当然ですがメキシコのインフレ率に沈静化の動きが出れば連続利上げは回避される可能性が高いでしょう。実際7月のメキシコのCPIは前年比5.81%と予想の5.77%は上回りましたが、6月の5.88%を下回り4カ月ぶりの低水準の伸び率になりました。
FRBのテーパリング決定は筆者は11月2~3日か12月14~15日の会合だと予想しています。もしこの通りであればメキシコ中銀も利上げを急ぐ必要はないかもしれません。
しかし仮に9月21~21日の会合でテーパリングを決定するか、あるいは強いメッセージを出した場合には9月30日の会合でメキシコ中銀はすかさず利上げに動くのではないかと予想しています。
やはりFRBが中立姿勢に向かえばドル高・新興国売りになりますから、FRBの姿勢抜きでのメキシコ中銀の政策決定はありえません。
メキシコペソは引き続き高値圏で推移と予想
8月に入ってからのドル/ペソのレンジは19.8050~20.457ペソで推移しています。1月の安値19.555ペソから比べればややドル高・ペソ安に傾むいていますが2020年4月の25.777ペソからはずいぶんドル安・ペソ高のレベルで推移しています。コロナ前の2018~2019年のレンジである18.40~20.65と比べてもややドル高・ペソ安ですが最近はペソの高値圏で推移しています。
19.80ペソ付近がサポートとなり20.45ペソが抜けなければ、このレンジの継続。20.45ペソを上抜けした場合は6月18日の高値20.75ペソ付近がレジスタンスになります。
ペソ/円は8月に入り5.558円付近まで上昇しましたが20日に5.364円付近まで下落後に5.438円(※8月25日17時時点)付近まで反発しています。5.46円付近に一目均衡表の雲の下限、基準線が位置し、ここが抜けないと5.3~5.4円のレンジ、上抜けできれば5.3~5.57円のレンジを予想します。
メキシコペソ 特設サイト:
メキシコペソ(MXN)の特徴と今後の見通し│初心者にもわかるFX投資 | 外為どっとコムのFX
株式会社ADVANCE代表取締役 米系のシティバンク、英系のスタンダード・チャータード銀行で、20年以上にわたり、為替ディーラーとして活躍。現在は投資情報配信を主業務とする株式会社ADVANCE代表取締役。ドル、ユーロなどメジャー通貨のみならず、アジア通貨をはじめとするエマージング通貨でのディーリングについても造詣が深い。また、海外のトレーダー、ファンド関係者との親交も深い。YouTubeなどで個人投資家に対して為替に関する情報を発信しており、人気を博している。
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