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「クロス円も『アフター・コロナ』のテーマ模索」外為総研 House View ポンド/円・豪ドル/円 2020年5月

【外為総研 House View】

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目次

▼ポンド/円
・ポンド/円の基調と予想レンジ
・ポンド/円 4月の推移
・4月の各市場 
・4月のポンド/円ポジション動向
・5月の英国注目イベント
・ポンド/円 5月の見通し

▼豪ドル/円
・豪ドル/円の基調と予想レンジ
・豪ドル/円 4月の推移
・4月の各市場
・4月の豪ドル/円ポジション動向
・5月の豪州・中国注目イベント
・豪ドル/円 5月の見通し

ポンド/円

ポンド/円の基調と予想レンジ

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ポンド/円 4月の推移

4月のポンド/円相場は131.909~135.741円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約1.1%上昇(ポンド高・円安)した。

新型コロナウイルスの感染拡大によって世界的に経済活動がストップする中、ポンド/円の動意は薄く、この通貨にしては値幅が小さかった(約3.8円)。英国では、新型コロナウイルスの感染者が月末時点で16万人を超え、死者も2.6万人に上った。ジョンソン英首相も感染し、一時は容体悪化が懸念されるなど、世界で最も被害が大きい国の一つだ。

それでも4月のポンドは対円だけでなく対ドルでもやや上昇した。主要先進国の多くが3月以降に金融緩和と財政拡大に動いた事で市場の不安心理が和らぎ、安全通貨の円やドルが弱含んだためと見られる。

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6日
新型コロナウイルス感染症で入院していたジョンソン英首相の容体が悪化し、集中治療室(ICU)に搬送された事が報じられた。必要な場合はラーブ外相がジョンソン首相の職務を代行する事も発表された。ただ、ジョンソン首相の病状はその後快方に向かい、12日には退院した。

14日
国際通貨基金(IMF)は世界経済見通しを発表。2020年の世界経済成長率予想を3.0%減に引き下げた。なお、1月時点の予想は3.3%増だった。IMFは「世界経済は今年、大恐慌以来で最悪の景気後退に陥る可能性が高い。10年前の世界金融危機よりも深刻な状況となるだろう」と指摘。

2021年の見通しについては、5.8%増と持ち直しを予想したが「不確実性が高い」と表明した。なお、IMFは英国の成長率見通しを2020年が-6.5%、2021年は+4.0%とした。

20日
NY原油先物(WTI)が史上初のマイナス価格で約定すると一気に-40ドル台まで暴落した。5月限(期近)の取引最終日を翌日に控えて買い手不在の中、投げ売りの動きが強まった。

在庫の積み上がりで原油保管コストが嵩むとの懸念があるとはいえ異例の価格形成を受けてリスク回避ムードが広がると円買いが優勢となった。

21日
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が先週心臓手術を受けた後に危険な状態に陥ったと米メディアが報じた。朝鮮半島情勢の不透明化が懸念されアジア市場全体にリスク回避ムードが広がり円高が進行した。

なお、英3月雇用統計は失業率3.5%、失業保険申請件数1.22万件増だった。また、英12-2月ILO方式失業率は4.0%と予想(3.9%)を上回った。英12-2月週平均賃金は前年比+2.8%と予想(+3.0%)を下回った。

22日
英3月消費者物価指数は前月比±0.0%と予想通りに前月(+0.4%)から減速。前年比でも+1.5%と予想通りに伸びが鈍化(前月:+1.7%)した。一方、英3月生産者物価指数は前年比+0.3%と、前月(+0.5%)から減速したものの市場予想(+0.1%)は上回った。

23日
英4月製造業PMI・速報値は32.9、同サービス業PMI・速報値は12.3といずれも予想(42.0、27.8)を下回った。

24日
英3月小売売上高は前月比-5.1%と統計開始以来最大の落ち込みとなった。予想は-5.0%だった。なお、欧州連合(EU)と英国の将来関係を巡る交渉の第2ラウンドを終えたEU側のバルニエ首席交渉官は「英国は数多くの根幹となる問題について真剣に取り組もうとしなかった」と非難。「英国は移行期間の延長を拒むことはできない。同時に重要な分野についての協議を遅らせることも認めない」と述べた。

27日
新型コロナウイルス感染症から回復したジョンソン英首相が公務に復帰。スピーチで「新型コロナ流行の第1段階の終わりに近付いている」としつつ「潮目が変わろうとしている。これは好機だが同時にリスクが最大になる瞬間でもある」として現時点ではロックダウン解除に慎重な姿勢を示した。これを受けて英国株は伸び悩んだが、ポンドには目立った反応はなかった。

4月の各市場

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4月のポンド/円ポジション動向

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5月の英国注目イベント

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ポンド/円 5月の見通し

英国と欧州連合(EU)の将来関係に関する通商交渉(自由貿易協定=FTA交渉)の第3ラウンドが11日の週に始まる。新型コロナウイルスの感染拡大により一時中断していた交渉は4月20日の週に再開されたが、ほとんど進展はなかった模様だ。EU側のバルニエ主席報道官は、「英国は、漁業権や不当競争の回避策など重要な問題に関する協議にさえ触れたがらなかった」と明かしている。

ジョンソン英首相は12月までの移行期間を延長する可能性を排除しており、6月末までにFTA交渉に進捗がなければ「FTAなき離脱」の準備に注力する方針を示している。6月末まで残された時間は2カ月弱しかない。今回の第3ラウンド交渉でも進展がないようなら、市場は「FTAなき離脱」を織り込みに動く可能性がある。

新型コロナウイルスの感染拡大で弱った英国経済にとってさらなる打撃となる「FTAなき離脱」は、ポンドの下落に繋がる公算が大きい。もっとも、EUのみならず英国内にも、移行期間の延長を求める声は少なくない。現時点で可能性は高くなさそうだが、ジョンソン首相が移行期間延長に前向きな見方を示せばポンドは上昇するだろう。

5月のポンド相場は、新型コロナウイルスを巡る動き以上に、英・EU交渉が注目されそうだ。

豪ドル/円

豪ドル/円の基調と予想レンジ

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豪ドル/円 4月の推移

4月の豪ドル/円相場は64.394~70.171円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約5.6%の大幅上昇(豪ドル高・円安)となった。

世界中で新型コロナウイルスの感染拡大は続いたが、金融緩和と財政拡大による各国の経済下支え策で市場心理も支えられた。中国がいち早く経済活動の再開に動いた事も豪ドルを支援。月末にかけては、イタリアや米国がロックダウン(都市封鎖)緩和に向けて動き始めた事でリスク選好ムードが広がった。

そうした中、豪ドル/円は30日に3月6日以来となる70円台を回復。最終的に、前月の下落を粗方埋める上昇となった。

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3日
豪2月小売売上高は前月比+0.5%と市場予想(+0.4%)を上回った。その後に発表された中国3月サービス業PMIも43.0と予想(39.0)を上回った。

6日
日本政府が翌日にも緊急事態宣言を発令する見込みとなり、「アク抜け感」から日経平均株価が750円超上昇。米NY州で新型コロナウイルス感染による1日あたりの死者数が減少した事などからNYダウ平均は1600ドル超上昇した。リスク回避の巻き戻しによる豪ドル買い・円売りが終日続いた。

7日
豪中銀(RBA)は予想通りに政策金利を0.25%に据え置いた。3年債利回り0.25%を目標に豪州国債を買い入れる方針も維持した。

声明では「4-6月期に極めて大きな景気縮小を記録する事が見込まれる他、失業率もここ何年かの最高水準に上昇する見通しだ」とした上で「豪州が新型コロナウイルスに対処する中、雇用や所得、企業を支えるためにできる限りの事を行うと約束する」と表明した。

8日
大手格付け会社S&Pが、豪州の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。ただ、格付け見通し引き下げを受けた豪ドル売りは一時的だった。

9日
米連邦準備制度理事会(FRB)は新型コロナウイルス感染拡大への対応策として最大2.3兆ドル規模の緊急資金供給策を発表。これを受けてドルが下落した一方、米国株が上昇。豪ドルにも上昇圧力がかかった。

16日
豪3月雇用統計は新規雇用者数が0.59万人増、失業率は5.2%といずれも予想(3.00万人減、5.4%)より良好だった。これを受けて豪ドルは上昇したが、豪連邦統計局が「この数字は封鎖措置が導入される前の2週間(3/1-3/14)しかカバーしていない」と表明した事で反落した。

17日
中国1-3月期国内総生産(GDP)は前年比-6.8%と予想(-6.0%)を下回り、統計公表を開始した1992年以降で初のマイナスを記録。新型コロナウイルスの感染拡大による急激な落ち込みにもかかわらず、「織り込み済み」との見方から豪ドルの反応は限られた。

20日
過去最安値を更新中だったNY原油先物(WTI)が、史上初のマイナス価格で約定すると一気に-40ドル台まで暴落した。5月限(期近)の取引最終日を翌日に控えて買い手不在の中、投げ売りの動きが強まった。

在庫の積み上がりで原油保管コストが嵩むとの懸念があるとはいえ異例の価格形成を受けてリスク回避ムードが広がると、豪ドル/円は反落した。

21日
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が先週心臓手術を受けた後に危険な状態に陥ったと米メディアが報じた。朝鮮半島情勢の不透明化が懸念され韓国株や韓国ウォンが下落すると、アジア市場全体にリスク回避ムードが広がり豪ドル/円が下落。

豪航空2位ヴァージン・オーストラリアが事実上の経営破綻を発表した事も重しとなった。

29日
豪1-3月期消費者物価指数は前年比+2.2%となり、予想(+1.9%)を上回った。RBAが重視する基調インフレ率も前年比+1.75%と予想(+1.55%)を上回った。ただ、基調インフレ率はRBAのインフレターゲット(2-3%)を下回ったままだった。

4月の各市場

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4月の豪ドル/円ポジション動向

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5月の豪州・中国注目イベント

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豪ドル/円 5月の見通し

豪州の新型コロナウイルス感染者は5月5日時点で6794名、うち5980名が回復。死者は97名に留まっている。こうした中、5月に入り、各都市でロックダウンの緩和が始まっており、他の国に比べると被害は小さいようだ。最大の貿易相手である中国で経済活動が再開された事も豪ドルにはポジティブな材料だろう。

一方で、ネガティブ材料として気になるのは5月に入り米国が中国に対する批判を強めている点だ。米国は新型コロナウイルスの発生と感染拡大の責任は中国にあるとして、関税の引き上げを含む制裁措置を検討している模様。トランプ大統領やポンペオ国務長官は、ウイルスの発生源が中国・武漢の研究所である事を示す「大量の証拠」があるとの見解を示している。これに対し中国は「根拠がない」と反論し、「中国に対し二度といわれのない非難をするな」と反発している。

米中の対立は市場のリスク回避の動きを強める公算が大きく、安全資産とされる円や米ドルの上昇とともに豪ドルの下落に繋がりやすい。5月の豪ドル/円相場は、ポジティブ材料とネガティブ材料が入り混じる中、不安定な相場展開となりそうだ。