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AIブームで日本の半導体輸出が急拡大、メモリ需要が追い風に【伊藤忠総研レポート】

●サマリー

・世界のAI関連半導体需要が急拡大するなか、2026年に入り日本のメモリ半導体輸出が急増
・AIが「学習」から「推論」フェーズへシフトしたことで、日本企業が強みを持つNANDフラッシュメモリにも需要が波及
・半導体製造装置は中国向けが減少に転じる一方、台湾・韓国向けの増加がカバーする展開が続く見通し
・2027〜28年にかけてマイクロン・TSMC・ラピダスが国内量産開始予定。日本のAI輸出競争力のさらなる底上げが期待される

世界のAI半導体需要はどこまで拡大するのか

 

世界的にAI関連需要が拡大している

世界的にAI関連需要が拡大しています。2025年の世界半導体出荷額は約8,000億米ドルと前年比+26.2%となり、2年連続で増加しました。さらに、世界半導体市場統計(WSTS)の予測によると、2026年は同+89.9%、2027年は同+26.6%と、今後も大幅な増加が続くことが見込まれています。

こうした背景には、ハイパースケーラーと呼ばれるクラウドサービスの大手事業者による設備投資の拡大があります。生成AIの普及を受けて、各社がデータセンターの建設などを加速させており、半導体を中心に関連需要が急拡大しています。

これまで日本はAI特需の恩恵を受けられなかった——その理由

 

日本からのAI関連輸出は年々拡大

日本からのAI関連輸出は年々拡大しており、2025年には18.9兆円と、輸出全体の17.1%を占めています。このなかには、半導体だけでなく、シリコンウエハーなどの原材料、ケーブルやコネクタなどの中間財、半導体製造装置、サーバーやPCなどの最終製品まで、AIに関連する幅広い製品が含まれます。

 

日本、韓国、台湾のAI関連半導体輸出額

しかし、世界的なAI関連需要の伸びが日本の輸出増加に十分には波及してきませんでした。2025年まではAI需要の伸びが、生成AIの「学習」に欠かせない高性能GPU(グラフィック処理装置)や高帯域幅メモリ(HBM)など一部の先端分野に集中しており、これらの分野に強みを持つ韓国(前年比+18.1%)や台湾(同+26.1%)が需要の大部分を取り込んできました。一方、日本の半導体輸出の伸びは同+5.2%にとどまっていました。

2026年が転換点に——4月には半導体輸出が前年比+42%の急拡大

 

AI関連半導体輸出額

もっとも、足元では半導体需要の構造に大きな変化がみられます。AIのフェーズが「学習」から「推論」へとシフトするなかで、学習済みモデルの運用に必要な大量データを保存するストレージ需要が高まっています。このため、HBMなど学習向けの高性能メモリだけでなく、日本企業が一定の競争力を有するNAND型フラッシュメモリなどでも需要が拡大しつつあります。

この結果、2026年4月のAI関連半導体の輸出額は前年比+42.0%(うち、メモリによる寄与は+32.4%ポイント)と急速に拡大しています。これまでのAI特需では相対的に取り残されてきた日本の輸出に、ようやく本格的な恩恵が波及し始めていると考えられます。

こうした追い風は当面続く可能性が高いです。足元の輸出増の背景となっているメモリ需給の逼迫は、各メーカーの増産体制が整う2028年以降まで解消しないとの見方が支配的です。中期的には需給緩和に伴う価格調整のリスクが残るものの、当面は現在の勢いが持続するとみられます。

半導体製造装置——中国リスクを台湾・韓国向けがカバー

 

半導体製造装置の輸出額

半導体製造装置については、輸出先によって明暗が分かれる展開が予想されます。過去10年間にわたって中国向けの半導体製造装置がAI関連輸出をけん引してきましたが、米国の輸出規制強化や中国メーカーによる内製化の進展により、対中輸出は2025年から前年比マイナスに転じています。日本の半導体製造装置大手(東京エレクトロン・SCREENなど)の対中売上比率はいずれもピーク時は4割を超える水準に達していましたが、足元では低下傾向にあり、今後の動向を引き続き注視する必要があります。

一方で、AI向け先端半導体を製造する台湾・韓国向けの輸出額が増加しており、2025年も装置輸出全体では高水準を維持しました。2026年についても足元(4月まで)では同様の傾向が続いており、今後も中国向けの減少分を台湾・韓国向けがカバーする展開が続くとみられます。

2027〜28年が次の転換点——国内に先端半導体の生産拠点が集結

 

日本国内での先端半導体製造拠点の投資計画

AI関連輸出のさらなる拡大を見据えると、先端半導体分野での国内生産能力強化も期待されます。米マイクロンの広島工場(次世代HBM・2028年量産開始予定)、台湾TSMCの熊本第二工場(3ナノ品・2028年量産開始予定)、そして日本のラピダスの北海道工場(2ナノ品・2027年後半量産開始予定)と、AI向け先端半導体の国内生産に向けた大型投資が複数進行しています。

これらの拠点整備は、製造装置や材料を含めたサプライチェーン全体における日本の競争力を底上げするという観点でも重要であり、日本のAI関連輸出の全体的な拡大にも資する取り組みといえます。

まとめ

AIが「学習」から「推論」フェーズへシフトしたことで、日本の半導体輸出も本格的な恩恵を受け始めています。2026年は日本のAI輸出にとっての「転換点」となる可能性が高く、2027〜28年にかけて国内の先端半導体生産拠点が稼働開始することも、輸出拡大のさらなる後押しとなる見通しです。

●伊藤忠総研・北辻宗幹氏、小林泰斗氏のレポートはこちら👇

日本経済:AI関連輸出の現状と今後の展望

伊藤忠総研のレポートはこちら ▶

 

 

伊藤忠総研・副主任研究員
北辻宗幹(きたつじ・かずき)
2017年大阪大学経済学部経済・経営学科卒業。2019年大阪大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年株式会社日本総合研究所に入社し、国内マクロ経済に関する調査・分析業務に従事。2021~2022年経済産業省に出向。2024年しんきんアセットマネジメント投信株式会社に入社し、世界のマクロ経済および金融市場に関する調査・分析業務に従事。2026年より現職。
伊藤忠総研・副主任研究員
小林 泰斗(こばやし・たいと)
2013年東京大学法学部卒業。同年に株式会社三菱東京UFJ銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行し、産業・政策調査、事業企画等に従事。2024年1月より現職。
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