
執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年10月24日 16時05分
1ユーロ=180円の現実味増す、ポンドは利下げ期待で下落も押し目買いか
ユーロ/円、ポンド/円は堅調
ユーロ/円およびポンド/円は上昇しました。高市首相による積極的な財政運営への期待や、日銀の利上げ時期の後ずれ感から円を売る動きが優勢となり、ユーロ/円は177.593円、ポンド/円は203.793円まで上昇しました。ユーロ/円は史上最高値を更新する流れが続いています。
一方、ポンド/円については、英国のインフレ率が予想ほど強くなかったことから、英中銀の年内利下げ期待が高まり、上昇の勢いは限定されました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研TEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
ECB理事会は無風通過、ポンドは押し目拾い
来週は日米欧で金融政策会合が開催されます。ECBはすでに利下げサイクルを終了したとみられ、政策金利は据え置かれるとの見方が優勢です。一応、ラガルド総裁の経済見通しや政策スタンスには注意が必要ですが、大きな波乱は起こりにくいと考えられます。
そのため、外部環境次第とも言え、米中首脳会談や日米の金融政策の行方が注目されます。日銀が12月の利上げに対して前向きな姿勢を示す場合、円が買われる場面もありそうですが、年内の利上げ織り込みがそこそこ進んでいるため、円の上昇余地は限定されるとみられます。
一方で、高市首相の財政・経済運営への期待による円安地合いが続きやすく、ユーロ/円は底堅い展開が想定されます。
また、英国では、自動車燃料価格による物価上昇を、音楽ライブ料金の下落や食料品の値下がりが相殺し、予想ほどインフレ率は上昇しませんでした。景気や労働市場の低調なデータが続く中で、今回のデータは英中銀のインフレに対する不安を緩和する可能性があります。市場では、12月の利下げに道を開くのではとの見方から、ポンドは上値の重さが意識され始めています。
しかしながら、直近の英国債金利の低下により、財政不足分の穴埋めのために政府が調達すべき資金が減少する可能性が出ている点には注意したいです。思惑通りに進み、財政不安が後退すれば、ポンドを支える要因となる可能性があります。
調達コストが減少すれば、その分、経済政策などに資金を振り向けることができ、経済を支える効果も期待されます。このように考えると、利下げ見通しでポンドの上値が重くなっても、金利が低下すれば今度は財政改善への期待から、ポンドの下値は限定されそうで、ポンド売りが一巡したところは押し目買いの好機となる可能性があります。
ユーロ/円・ポンド/円、上昇継続か(テクニカル分析)
ユーロ/円は、5月23日の安値161.083円と7月28日の高値173.893円を結ぶフィボナッチ・ファンの38.2%ラインと50%ラインの間で振幅が続いています。このままこの領域での推移が続くようであれば、180.00円到達も時間の問題と言えるでしょう。
高値警戒感はあるものの、売り向かうだけの強いレジスタンスがない中では、下押ししても175.00円割れでは下げ渋る可能性が高いとみられます。
また、ポンド/円は、上昇する21日移動平均線を支持線として底堅い展開が続いています。ボリンジャーバンドの形状も右肩上がりとなっており、+2σラインが推移する205.84円付近までの上昇は、想定しておいて損はないと考えられます。昨年の高値208.109円にどこまで近づけるか注目されます。
ただし、こちらも高値警戒感が強いため、調整が始まった際には下落の速度が速くなる危険があり、21日線を割り込んだ場合には、ポジションを調整して様子を見たいところです。
【ユーロ/円チャート 日足】

出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:EUR/JPY:175.000-180.000
【ポンド/円チャート 日足】

出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:GBP/JPY:200.500-206.500
10/27 週のイベント:

一言コメント
トランプ大統領は27日に来日し、3日間の日程で天皇陛下との面会や、高市首相との初めての日米首脳会談を行う予定です。今週末あたりからは、駅や街角で警察官の姿が増えるかもしれませんね。
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