
執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年10月24日 15時50分
財政運営への期待と利上げ観測の後退で円安、ドル円155円目指す?
米ドル/円、153円台へ上昇
米ドル/円は上昇しました。自民党の高市総裁が第104代総理大臣に選出されたことで、拡張的な財政政策を巡る思惑から円売りが強まり、米ドル/円は152円台に乗せました。その後は、米中首脳会談に対する不透明感や今月の日銀会合に向けた思惑などが交錯し、152.00円付近で膠着感の強い場面もありましたが、日銀の利上げ見送り観測が高まる中で円売りの流れが引き続き優勢となり、米ドル/円は153.063円まで上昇しました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
日米の金融政策が波乱要因となる可能性も
来週は日米で金融政策会合が開催され、結果に対する期待感やその結果を受けた今後の金融政策を巡る見通しに、米ドル/円は荒い展開となる可能性があります。米FOMCでは0.25%の利下げがほぼ織り込まれているため、注目はQT(量的引き締め)と呼ばれるバランスシート縮小の停止を決めるのかどうか、または12月も利下げを行う姿勢を示すのかどうかとなります。FRBの準備預金残高が3兆ドルを割り込みつつあり、流動性が逼迫し始めていることがQT停止の背景です。実際の停止は数カ月先になることもありますが、年末年始の米ドル需要が高まる時期まで決定を遅らせるのはかえって危険とみられます。決定されれば金利には低下バイアスがかかるほか、利下げ実施の影響も加わり、米ドルは上値の重さが意識されやすくなると考えます。しかし、決定が先送りされれば、流動性の逼迫懸念から米ドル高に振れる可能性はあるものの、流動性低下懸念で金融市場が混乱するリスクも考えられます。
一方、日銀については利上げ見送りがコンセンサスです。展望レポートで成長率がわずかに引き上げられるとみられ、金融政策は依然として利上げ軌道上ではありますが、高市新政権が経済対策等をまだ発表していない段階で、利上げ実施を急ぐ必要性も乏しいとみられています。米ドル安・円安の中で米ドル/円の方向性は定まりにくいものの、高市政権が円安是正や円高誘導に消極的な姿勢を示す中で、米ドル/円は底堅い展開が見通せそうです。ただし、米国の政府機関閉鎖の長期化や米地銀の信用不安など不透明な材料もあり、徐々に高値警戒感は強まると可能性もあります。
チャネルに沿ってレジスタンスを試す展開か(テクニカル分析)
米ドル/円は、今年4月に付けた139.883円を起点とする上昇チャネルの中で底堅い展開が続いており、10月10日高値の153.272円も射程圏です。目先このレベルを突破できるかどうかがポイントとなります。この水準で上値を抑えられるようであれば、ダブルトップ形成を考える必要が出てくるかもしれません。ただ、このレジスタンスをこなせれば、その次は昨年7月3日に付けた高値161.949円からのレジスタンスラインが位置する154.25円付近が意識されます。ここも突破すれば、今度は先ほどの上昇チャネルの上限付近の155.00円が意識される展開となりそうです。
【米ドル/円チャート 日足】

出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:USD/JPY:150.500-155.000
10/27 週のイベント:

一言コメント
連日、クマの出没を報じるニュースが流れており、行楽シーズンで野山に出かける方も多いと思われますので、十分にご注意ください。要因は複数あると思いますが、クマと人間との距離が近づいた最大の要因は、クマの個体数が増加したことではないかと、個人的には考えています。
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