
執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年10月3日 13時50分
自民総裁選の影響は一過性でメインは日米金利差、米政府機関閉鎖は2週間程度との予想
米ドル/円、下落後は下げ渋り
米ドル/円は下落。米国の金利が低下する中、9月ADP雇用者数が予想外にマイナスに落ち込んだことで、米国の連続利下げ期待が広がり、米ドル/円は149.50円付近から146.583円まで下落しました。
また、米国のつなぎ予算案がまとまらず、政府機関閉鎖が開始されたことも、米ドル/円の上値を抑制しました。
ただ、植田日銀総裁が「想定に沿って実現していけば、金融緩和の度合いを調整」との立場を維持しつつも、「緩和的な金融環境を通じて、企業の取り組みを応援したい」として利上げを急がない姿勢を示すと、米ドル/円は147.70円付近まで反発しました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
米ドル/円、金融政策の方向性の違いから上値重い
米国の一部政府機関が閉鎖されたことで、公的機関による経済指標の発表は停止しています。データの公表は政府機関の再開後となるため、まずはつなぎ予算案の議会通過に向けて、議会と政府が歩み寄れるかどうかが注目されます。
ただ、上院が動いたとしても、下院は3日まで休会しており、早くても事態の収束は週明け以降になりそうです。現時点では、市場では2週間程度との予想が中心ですが、これよりも政府機関の閉鎖が長期に及べば、関連企業の業績や雇用にも影響が広がる可能性があり、米経済成長は抑制されかねません。
政治専門サイトのポリティコは、1週間で150億ドルが失われるとの試算を示したほか、国内のシンクタンクは10〜12月期のGDPが0.6%押し下げられると試算しています。
また、9月30日と10月1日に発表された米雇用データでは、米国の雇用環境の悪化が示されており、パウエル議長が9月24日に「雇用への下振れリスクを引き続き確認」とした発言を裏付ける結果となりました。インフレが加速するなかで、FRBには慎重な判断が求められますが、弱い雇用市場を考慮すれば、米国の利下げ期待は大きく後退せず、10月の0.5%利下げの可能性も含めて、利下げ期待は継続すると見られます。政府閉鎖で指針となる指標も確認できない中で、米ドルは上値の重い展開が見通されます。

1985年以降の政府閉鎖と、その期間
一方で、円相場については日銀の追加利上げ観測や、自民党総裁選の行方が注目されています。政策の方向性は利上げ方向であることは間違いない点で、8月の毎月勤労統計には一応注意が必要ですが、植田日銀総裁が10月利上げに慎重な姿勢を示しており、10月利上げの確度は高まりにくいでしょう。
また、自民党総裁選においては小泉氏、高市氏、林氏の3人による争いになると見られていますが、この3人の中で票がやや伸び悩んでいるとされる高市氏が選出されれば、財政運営への期待から株高・円安が一気に進む可能性があります。逆に小泉氏や林氏が選出されれば、株安・円高の流れが意識されそうです。
もっとも、次期政権の大枠が固まらず、見通しが依然として不鮮明なため、総裁選の結果を受けた反応は一過性にとどまり、相場の方向性を左右する材料にはなりにくいのではないでしょうか。
以上のような点を踏まえると、米ドル/円は日米金融政策の方向性の違いから上値は抑制されるものの、その差はまだ広がりにくいとの見方から、下値も限定的になると考えられます。
200日線と100日線が拮抗、レンジ脱しづらいか(テクニカル分析)
米ドル/円は、下降中の200日移動平均線と上昇中の100日移動平均線に挟まれた146.50〜148.25円を中核レンジとして推移しています。200日線と100日線の力関係も拮抗しており、米ドル/円は方向感に乏しい展開となっています。
目先もこの状況が継続し、最大で21日を期間とするボリンジャーバンドの−3σ〜+3σの間で振幅する展開がメインシナリオと見られます。
【米ドル/円チャート 日足】

出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:USD/JPY:146.000-151.000
10/6 週のイベント:

一言コメント
日銀短観、日銀正副総裁発言などの日銀イベントは盛り上がらず、円高の動きも限定的でした。やっぱり10月は利上げ見送りなのかな~。
本サイトに掲載する情報には充分に注意を払っていますが、その内容について保証するものではありません。また本サービスは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであって、投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資方針や時期選択等の最終決定はご自身で判断されますようお願いいたします。なお、本サービスの閲覧によって生じたいかなる損害につきましても、株式会社外為どっとコムは一切の責任を負いかねますことをご了承ください。
