
中東に位置するトルコの通貨リラを取り巻く環境を分析し、トルコリラの今後の値動きを予想した。
執筆:株式会社外為どっとコム総合研究所 シニア為替アナリスト 神田卓也 X(Twitter)
リラ円、下落率最大ながら金利含めたトータル・リターンは上位5番
8月14日時点のブルームバーグのデータによると、トルコリラ/円は年初来で19.2%下落している。これは、外為どっとコムが取り扱うクロス円の中で最大の下落率となる。2番目に大きいのが香港ドル/円の-7.7%であることからも、リラ/円の下落率が際立って大きいことがわかる。
ただ、金利差調整(スワップポイント)を加味した「トータル・リターン」のランキングでは景色が大きく異なる。トルコリラ/円は+6.1%のリターンを誇り、メキシコペソ/円(+10.2%)、スウェーデンクローナ/円(+9.5%)、ノルウェークローネ/円(+7.0%)、ユーロ/円(+6.8%)に続いて第5位に入る。低金利の円を売って高金利のリラを買い持ちにした際の金利差収入が、通貨安を補う形でリターンをプラスに押し上げていることになる。
トルコリラの下落の主因は高インフレだ。トルコのインフレ率はピークから鈍化したものの依然として33.5%(7月時点)の高水準にある。物価、つまりモノの値段が上昇すれば、対価である通貨の価値はそのぶん低下することになる。通貨安を食い止め、インフレを抑え込むためにトルコ中銀は政策金利を一時50.00%まで引き上げた。その結果、インフレが落ち着き始めたことから、中銀は7月に政策金利を43.00%へと引き下げており、今後もゆっくりと利下げを続ける姿勢を示している。
なお、トルコリラ/円相場としては、金利の引き下げは金利差収入の減少要因となるが、インフレ率の鈍化は通貨安のペースも鈍らせる要因となる。このため、インフレ鈍化が続く中での利下げについてはリラ売り材料になりにくいと考えられる。
トルコリラ/円(TRY/JPY) 日足チャート

ドル/トルコリラ(USD/TRY) 日足チャート

ユーロ/トルコリラ(EUR/TRY) 日足チャート

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株式会社外為どっとコム総合研究所 シニア為替アナリスト神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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