ランドは対ドルで上昇基調
南アフリカ・ランドの対ドル相場は、グローバルな為替市場におけるリスクセンチメント、そしてそれを大局的に反映して変動する安全通貨であるドルの名目実効為替レートと基本的に連動性が高い(第1図)。
第1図:南アフリカ・ランド対ドル相場とドル名目実効為替レート(資料)Bloomberg
5月下旬から6月にかけても、ドルの緩やかな下落基調が続き、これに沿ってランドも対ドルで上昇基調となった。米関税政策を巡っては、6月9、10日にロンドンで再び米中通商協議が開催され、中国によるレアアースの輸出許可などを巡って一定の前進があったとの発表はあったものの、包括的な合意には依然まだ多くの課題が残されているようだ。米国と主要貿易相手国との関税交渉の先行きは見通し難くなっており、関税関連の材料に対する市場の反応も以前と比べて一旦鈍くなって来た感もある。
南アランド見通し
こうした中、米経済指標は、強弱材料は混在し始めているものの、労働市場は引き続きごく緩やかな減速に止まると共に、インフレ指標も関税の影響は依然として大きく顕在化せず安定基調が続いており、米金利が緩やかに下落基調にあることが、市場のリスク選好地合いとドル安・ランド高を支える構図となっている。南アフリカでも2025年度政府予算案を巡る連立政権内の対立・連立崩壊の危機は一旦後退している他、インフレ率も安定・沈静化傾向が続いており(第2図)、南アフリカ準備銀行の利下げを可能にしていることも、同国経済の支援材料となり、結果的にランドの支援材料にもなっているとみられる。
第2図:南ア政策金利とCPI前年比(資料)Bloomberg
6月中旬以降はイスラエルとイランの戦闘激化で市場がリスク回避地合いに傾き、ランドも対ドルで下落基調に転じる場面がみられた。もっとも、本稿執筆時点ではイランの報復攻撃はこれまでのところ抑制的であり、中東の混乱拡大リスクも大きくは高まらず、ランドも持ち直しがみられている。今後もランドの底堅い推移が続くかどうかは、中東情勢や7月9日に交渉期限を迎える主要国と米国との関税交渉の行方、そして米景気・インフレ動向とFRBの利下げのタイミングなどに大きく左右されそうだ。
【南アフリカランド/円 日足】
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新興国通貨が高金利である理由について
新興国に分類される国々は概して政治リスクや財政リスクが先進国よりも高く、したがってその経済的信用度は相対的に低い水準にあります。こうした条件下では海外投資家の資金を呼び寄せられず、経済発展の支障となるため、金利を上げたり税金を安くしたりすることで、信用度の低さを補いうる投資環境を構築しようとします。そのため新興国通貨は一般に先進国通貨よりも高金利となる傾向にありますが、前述したように各種リスクが高い水準にあることから、長期的には先進国通貨に比べて価値が下がる(=通貨が下落する)条件を備えているともいえます。

橋本 将司(はしもと・まさし)氏
慶應義塾大学卒業後、三菱UFJ銀行に入行。国際通貨研究所研究員、グローバルマーケットリサーチ・シニアアナリスト、経済調査室ニューヨーク駐在などを歴任し、グローバルな為替市場やマクロ経済に加え、米国金融業界や金融規制など幅広い分野の調査業務に従事。現在国際通貨研究所において、為替市場や主要国の金融政策・マクロ経済動向の分析を担当。理論的な観点からの為替市場分析を得意とする。
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