執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年6月27日 13時37分
積み残し課題の解消進むか注視、ドル円143.50円付近で押し目買いトライも
米ドル/円、地政学リスクを巡り振幅
日本時間22日、米国がイランの核施設3カ所を攻撃したことでホルムズ海峡封鎖への懸念が高まり、原油価格が上昇しました。これを受けて、貿易赤字の拡大懸念から円売りが強まり、米ドル/円は148.035円まで上昇しました。
しかし、ボウマンFRB副議長が「インフレ率はFRBの目標である2%に向けて持続的に低下しているように見受けられる」と述べ、7月の利下げを支持する姿勢を示したことに加え、イスラエルとイランの間で停戦が合意されたことで、米ドル高の流れは修正され、米ドル/円は143.752円まで下落しました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
市場の目線、米関税・予算案・FRB利下げへ向く
中東情勢はひとまず妥協点に達したため、投資家の視線は改めて米関税政策や、大規模な個人向け減税が盛り込まれている「大きな一つの美しい法案」、米ファンダメンタルズを見ながら、FRBの利下げ時期や今年の利下げ回数を探る展開に向かいそうです。
まず注目されるのは、7月4日までに共和党が成立を目指している予算案です。現在は下院を通過し、上院で審議されているものの、メディケイドや減税、インフレ削減法(IRA)など重要項目に修正が入り、審議は難航しています。仮に修正案が上院でまとまり通過したとしても、下院がそのまま可決する保証はなく、最終的な法案成立の時期は見通しづらくなっています。
また、関税政策についても、相互関税の上乗せ分の発動延期の期限が7月9日に迫る中、米国と合意に達したのは英国のみで、多くの国で交渉の遅延が意識されます。ホワイトハウスのレビット報道官は期限延長の可能性に言及しており、今後も交渉が続くとの見方が優勢になりつつあります。ただし、期限が延長されたとしても、トランプ米大統領が無条件で先延ばしに同意するかどうかは不明で、関税政策を巡るトランプ大統領の“口撃”が激しくなる可能性もあります。
不確実性残り、レンジプレイか
また、FRBが早期に利下げに踏み切るとの見方が一部で浮上するなか、これを米ファンダメンタルズが許すのかどうかに注目が集まります。特に、7月4日が独立記念日で米国は祝日となるため、その前日の3日に発表される雇用統計の内容は一段と重視されるでしょう。足もとの雇用指標には底打ち感を示すデータも散見されており、7月利下げの確度が高まっているとは言いがたいものの、9月利下げや年内3回の利下げ織り込みが加速するようであれば、米ドル/円は下方向を試す展開もあり得ます。
さらに、ポルトガル・シントラで開催されるECBフォーラムでは、パウエルFRB議長、植田日銀総裁、ラガルドECB総裁、ベイリー英中銀総裁がそろって発言予定です。金融政策をめぐる各国中銀の立場の違いが鮮明になれば、為替市場が振幅するリスクもあるでしょう。
以上の材料を受けて、米ドル/円は上下に振れやすい状況となりますが、米通商交渉や米予算案の行方が見通しづらいなかでは、FRBが利下げを急ぐとの観測も強まりにくく、米ドル/円は方向性が出にくいまま、しばらくはレンジでの取引が続くと考えられます。
143円半ばで押し目買いトライ(テクニカル分析)
米ドル/円は148.00円付近の上値の重さを確認して下方向を探る展開になっており、目線は下方向に傾き始めている印象です。しかし、4月の安値139.883円を起点とする下値支持線は破られていないため、上昇トレンドは継続しているとみています。来週には、同ラインは143.50~143.70円付近へ上昇してくるため、このライン付近まで下げた場面は押し目買いをトライしたいです。ただ、支持線割れが明確となれば、買いポジションは手放して短期で売りに転じ、下値模索の動きに追随したいと考えています。
【米ドル/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:USD/JPY:142.000-147.000
6/30 週のイベント:
一言コメント
カーネル・サンダース氏があの世界的に有名なチェーン店を正式に立ち上げたのは、65歳の時だった--というエピソードは有名ですよね。歳なんて関係ない。タイミングなんて人それぞれ。大事なのは「やるか、やらないか」だけ、ってことですかね。なんだかんだ理由をつけて、チキンが食べたいだけです。
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