執筆:外為どっとコム総合研究所 中村 勉
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※6月12日午前執筆※
今週の振り返り
今週の豪ドル/円は94.07円前後で、ニュージーランド(NZ)ドル/円は87.16円前後で週初を迎えました。週初は英ロンドンで開催される米中通商協議で米中関係が改善されるとの期待からリスク選好の動きとなりました。豪州とNZは中国と交易関係が強いこともあり、対円や対ドルで強含みました。11日に米中が「合意に達した」と報じられた後に、豪ドル/円は94.74円前後、NZドル/円は87.91円前後まで上値を伸ばしました。ただ、合意内容が「ジュネーブでの合意を実行する枠組みで一致した」と1カ月前の状況に戻っただけであったことから、期待先行で上昇した分を吐き出す形となりました。また12日にはトランプ米大統領の関税に関する発言を巡りリスク回避の円買いが強まると、豪ドル/円は93円台半ば、NZドル/円は86円台後半まで下落しました(6/12 午前執筆時)。
トランプ発言でリスクオフ
トランプ米大統領は12日に「2週間以内に一方的に関税率を設定する」と発言しました。4月に発表した相互関税の上乗せ分一時停止の期限が7月9日ですので、その期限よりも2週間以上前に発表することになります。現在進行中であるはずの各国(地域)との関税交渉が思うとおりに進んでいないことから、さらなる圧力をかけて早期の譲歩を引き出す狙いがあるようです。金融市場はこれに対してリスク回避の動きで反応。円が買われたほか、日経平均株価や米三大株価指数(NYダウ、S&P500、ナスダック)先物は下落しています。豪ドルやNZドルは株価の下落もあり対円、対米ドルで下落していますが、この動きが継続するかはわかりません。まず第一に、これまで米国の関税政策についてトランプ大統領が状況を悪化させる発言をした際には米ドルが売られました。その場合、豪ドルとNZドルは米ドルよりも強いが、円よりは弱いという構図になり、豪ドル/円、NZドル/円は方向感が見出せなくなりました。第二に、トランプ大統領の変心の可能性が考えられます。このところ市場ではTACOトレードという言葉がよく使われます。「Trump Always Chickens Out(トランプはいつも尻込みする)」の略語で、トランプ大統領が市場を混乱させる厳しい関税を脅しとして使い、市場が急落した後にそれを緩和したり延期したりして、その後市場が回復する。朝令暮改を繰り返すトランプ大統領を揶揄するものです。現時点では、トランプ大統領の発言を嫌気してリスク回避の動きとなっていますが、いつ反転するかわからないため、就寝時や週末などすぐに対応できないことが考えられる場面ではポジションを小さくするか手仕舞うことをお勧めします。
豪雇用統計軟化ならRBAは追加利下げ?
豪州では労働市場が強い情勢が続いています(表1参照)。また賃金上昇率に関しても豪中銀(RBA)の予想を上回っています。一方で、インフレ率はRBAの目標レンジ2~3%内に落ち着いているにも関わらず、先日発表された豪1-3月期国内総生産(GDP)では家計消費はわずかな伸びにとどまりました。景気の低迷を打破するためにRBAが7月の理事会で追加利下げに動くと市場は予想しています。来週は豪5月雇用統計が発表されます。強い結果となったとしても、RBAの判断に大きな影響を与えることはないと市場は見ています。仮に豪労働市場の軟化を示唆する結果となれば、RBAの追加利下げ期待が一段と高まることになりそうです。
【表1 豪雇用者数推移】
豪ドル/円のテクニカル分析
豪ドル/円はローソク足が雲の上で推移しています。5月23日に雲上限で下値を支えられたため目先のサポートになりそうですが、来週は週後半にかけて同線が92.90円台まで上昇してきますので、雲の上を維持できるか注目です。この水準を下抜けた場合には、雲下限がサポートとなるでしょう。一方上値では、6月11日高値の94.74円前後や5月13日高値の95.64円前後が目途として意識されそうです。
【豪ドル/円 日足・一目均衡表】
予想レンジ:AUD/JPY:91.50-95.00、NZD/JPY:85.00-88.00
6/16週のイベント:
06/16 (月) 11:00 中国 5月小売売上高
06/16 (月) 11:00 中国 5月鉱工業生産
06/18 (水) 07:45 NZ 1-3月期四半期経常収支
06/19 (木) 07:45 NZ 1-3月期四半期国内総生産(GDP)
06/19 (木) 10:30 豪 5月新規雇用者数
06/19 (木) 10:30 豪 5月失業率
一言コメント:
週末にキャンプに行ってきます。6月とはいえ、山の気温はまだ低く最高で20℃くらいになりそうです。風邪をひかないように気を付けます。
お知らせ:FX初心者向けに12時からライブ解説を配信
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中村 勉(なかむら・つとむ)
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー(株)へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
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