執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年5月16日 14時05分
円安是正の圧力強まる? 米ドル/円の展開を占う
米ドル/円の上昇一時的
先週末にスイスのジュネーブで行われた米中関税協議で、4月以降に米中双方が課した追加関税34%のうち、24%分を90日間停止し、上乗せした報復関税91%分は互いに撤廃するとし、新たな経済対話の枠組みを設けることで合意しました。これを受けて、市場センチメントが改善し、米ドル/円は一時148.652円まで上昇しました。しかし、この話題の効果は短期間で薄れ、その後は戻り売りが優勢に。米国の日本に対する円安是正への要求が強まるのではないか、米国が貿易協定の見直しを視野に入れ始めているのではないかなどの思惑から、米ドル/円は145.00円割れまで下げました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
日米協議で進展あるか注目
来週は日本で全国消費者物価指数が発表されるほか、米国で製造業・サービス業PMIが発表されます。米国の関税策の行方が不透明なほか、本邦の企業業績に及ぼす影響などが明確になっておらず、日銀の追加利上げ観測は高まりにくいと考えますが、日銀に対する追加利上げ期待の持ち直しから円を押し上げることも考えられ、指標結果には一応、注目したいです。また、米中協議進展で市場の今年の米リセッション確率が40%付近(米中協議前が50%付近だった)へ低下する中、米国のPMIがこうした見方を後押しする材料となるか注目されます。ただ、米中関税交渉は一時停戦といった具合で具体的な平和交渉はこれからと言え、再び関税合戦が強まる危険は残っています。そのため、これ以上の見通し改善には、新たなポジティブ材料が必要で、その点では経済データはあまり役立たない可能性があり、それよりは米国と多くの国の関税交渉が進むのかがより重要なポイントと考えます。
来週のG7財務相・中央銀行総裁会議の開催に併せて、日米財務相会談や赤沢経済再生相の訪米が予定されています。4月の会談後に加藤財務相は「米国から為替水準の目標や管理の枠組みの話は全くなかった」としていましたが、そこから日数が経たないうちに改めて会談を行うため、今回は何かしらの具体的な提示がある可能性があり、警戒は怠れません。また、赤沢経済再生相も同時期に渡米し、日本の自動車メーカーがアメリカで生産した車を日本に逆輸入する施策を提案する予定ですが、これが有効な交渉カードとなるかは不透明で、米国から厳しい要求が突き付けられる危険もあります。いずれにしても、日米通商協議の行方が米ドル/円の主要な要因になると考えています。
144円中心の振幅なら、投資家の安堵感誘うか(テクニカル分析)
米ドル/円は、オーバーシュート気味に142.37円レベルまで下押しした後、急速に反転して148.65円付近へ到達しましたが、200日移動平均線や日足一目均衡表の雲が上値抵抗帯として意識され、そこから短時間で145円台へ下げています。21日移動平均線が目先のサポートラインと期待されるものの、一目基準線の位置が足もとの上下動の中心位置にもなっている点を踏まえると、基準線付近での振幅は、米ドル/円が落ち着いた状態にあることを示しているのかもしれません。144.268円を中心に、2円50銭の範囲で上下動しながら、次の展開を待つ形になりそうです。
【米ドル/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:USD/JPY:141.700-146.700
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一言コメント
天候の良い日が続いていますが、気温は徐々に上昇しており、夏の酷暑が心配されます。
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