南アフリカランド、トランプ・ラリーの影響は限定的か
南アフリカ・ランドの対ドル相場は、グローバルな為替市場におけるリスクセンチメント、そしてそれを大局的に反映して変動する安全通貨であるドルの名目実効為替レートと基本的に連動性が高い(第1図)。
第1図:南アフリカ・ランド対ドル相場とドル名目実効為替レート
トランプ・ラリーによるドル高は年明けも続いたが、1月15日に発表された12月分米消費者物価の前月比に落ち着きの兆候がみられたことや、それを受けた翌16日のFRBウォラー理事による利下げ継続を確認するコメントなどを受け、ドルの上昇に一服感がみられて来た。その後1月20日のトランプ政権始動にあたって警戒されていた広範な貿易相手国に対する関税の発動も行われなかったことから、トランプ・ラリーの巻き戻しによるドルの反落調整はさらに進んだ。これを受けてランドも対ドルで持ち直しに転じたが、相対的には限定的に止まり(第2図)、さらに1月27日には対ドルで前日比1.8%近くの急落となった。
第2図:主要な通貨の対ドル上昇・下落率(1/10→1/28)
南アフリカランドの見通し
依然としてトランプ政権による関税発動を含めた様々な政策の先行き不透明感が強いことに加え、中国の生成AI企業DeepSeekによる新製品の報道を切っ掛けに米AI関連企業の株価が急落して市場のリスク回避地合いが強まったことが背景となった。さらに国内では、統一政府(GNU)を構成する与党第一党のアフリカ民族会議(ANC)と第二党民主同盟(DA)の間で、土地収用に関する法律を巡って対立が鮮明となったタイミングであった。昨年5月の統一政府誕生による改革進展期待が昨年のランドの好調の主因となって来ただけに、こうした情勢変化はランド固有の追加下落材料になったとみられる。民主同盟はすぐに統一政府を離脱する訳ではないようだが、こうした内外情勢が好転しない限り当面ランドの下落リスクを警戒しておく必要がありそうだ。
【南アフリカランド/円 日足】
南アフリカランド 特設サイト:
南アフリカランドのスワップポイントと見通し|初心者でも分かるFX投資|外為どっとコムのFX
チャート:
為替チャート・FXチャート | 外為どっとコムのFX | 初心者にもわかるFX投資
当社取扱通貨のうち、いわゆる新興国通貨に分類されるトルコリラ・南アフリカランドおよびメキシコペソ(MXN)はインターバンク(銀行間為替市場)における流動性が主要国通貨に比べ相対的に低く、経済指標発表のみならず金融政策変更やその他政治的要因、さらには地政学的リスク等の要因による突発的な相場急変動が起こりやすい環境下にございます。また、こうした急変動時には実勢インターバンクレートのスプレッド(BidとAskの差)も平常時に比べ大幅に拡大する傾向にあり、その場合には当社でもやむなく提示スプレッドを一時的に拡大することがございます。あわせて、相場状況により「ダイレクトカバーの対象となる注文」の基準Lot数(最低数量)を一時的に変更する場合がございますので、あらかじめご承知おきくださいますようお願いいたします。これら新興国通貨のお取引、およびこれらを対象とするキャンペーンへのご参加に際しては、以上につきあらかじめご留意のうえ、ポジション保有時、特に法人会員様の高レバレッジ取引における口座管理には十分ご注意くださいますようお願い申し上げます。以上の新興国通貨それぞれのリスク、および直近時点でのリスクレポートにつきましては、こちらのページをご参照願います。
新興国通貨が高金利である理由について
新興国に分類される国々は概して政治リスクや財政リスクが先進国よりも高く、したがってその経済的信用度は相対的に低い水準にあります。こうした条件下では海外投資家の資金を呼び寄せられず、経済発展の支障となるため、金利を上げたり税金を安くしたりすることで、信用度の低さを補いうる投資環境を構築しようとします。そのため新興国通貨は一般に先進国通貨よりも高金利となる傾向にありますが、前述したように各種リスクが高い水準にあることから、長期的には先進国通貨に比べて価値が下がる(=通貨が下落する)条件を備えているともいえます。

橋本 将司(はしもと・まさし)氏
慶應義塾大学卒業後、三菱UFJ銀行に入行。国際通貨研究所研究員、グローバルマーケットリサーチ・シニアアナリスト、経済調査室ニューヨーク駐在などを歴任し、グローバルな為替市場やマクロ経済に加え、米国金融業界や金融規制など幅広い分野の調査業務に従事。現在国際通貨研究所において、為替市場や主要国の金融政策・マクロ経済動向の分析を担当。理論的な観点からの為替市場分析を得意とする。
本サイトに掲載する情報には充分に注意を払っていますが、その内容について保証するものではありません。また本サービスは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであって、投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資方針や時期選択等の最終決定はご自身で判断されますようお願いいたします。なお、本サービスの閲覧によって生じたいかなる損害につきましても、株式会社外為どっとコムは一切の責任を負いかねますことをご了承ください。