米国株式市場は、その多様性と流動性において、世界中の投資家から高い注目を集める市場です。CFDは資産の所有権を持たずに、買ったときの価格と売ったときの価格の差額を差金決済します。このCFDを使うことで少額から米国株価指数や個別株のレバレッジ取引が可能になります。この記事では、CFDで投資可能な米国株式の種類と、世界市場を席巻するマグニフィセント・セブンについて紹介します。
世界で一番影響力のある株式市場
米国の株式市場は世界で最も大きく、影響力があります。代表的な証券取引所としては、ニューヨーク証券取引所(NYSE)とNASDAQ(ナスダック証券取引所)が知られています。これらの市場には、多くの企業が上場しており、世界中の投資家が注目しています。
1)ニューヨーク証券取引所(NYSE)
ニューヨーク証券取引所はニューヨークシティにある世界で最も古い証券取引所のひとつです。大手グローバル企業が多く上場しており、市場の総時価総額は世界最大級です。
2)NASDAQ(ナスダック証券取引所)
1971年に世界初の電子株式取引所として設立された世界最大の新興企業向け証券取引所です。この市場は企業の成長性と革新性に重点を置いており、特にテクノロジー関連のハイテク企業が多く上場しています。
CFDで投資できる米国株式指数
まずCFDで投資できる代表的な米国の株式指数を列挙してみます。
1)NYダウ(ダウ・ジョーンズ工業平均株価)
ダウ・ジョーンズ工業平均株価は、米国の主要工業会社30社の株価平均で計算される指数です。米国経済の健全性を示す代表的な指標とされており、最も古い株価指数のひとつです。
2)ナスダック総合指数
ナスダック総合指数は、ナスダック証券取引所に上場しているすべての株式を対象とした時価総額加重型の指数です。AppleやGoogleなどの大手テクノロジー企業が上場しています。成長株や革新的な企業が多く、市場の先進性を示しています。この指数は特にテクノロジー関連企業の動向を反映しており、新興のハイテク企業のパフォーマンスを追跡するのに適しています。 3)S&P 500(スタンダード・アンド・プアーズ 500指数) スタンダード・アンド・プアーズ 500指数は、米国の時価総額の大きい上場企業500社を対象とした指数のため、米国経済全体の動向を反映しており、多様な業種をカバーしています。多くの投資家にとって、アメリカ株式市場の動向を測るための基本的な指標とされています。
CFDで投資できる「マグニフィセント・セブン」
続いてCFDで投資できる代表的な米国の個別株です。ここ数年、存在感を増しているのが、マグニフィセント・セブンと呼ばれる、大きな市場価値と影響力を持つ大手テクノロジー企業7社です。
構成しているのは、「Google(アルファベット社)」「Apple」「Facebook(メタ・プラットフォームズ社)」「Amazon」「Microsoft」「Tesla」「NVIDIA」です。これらの企業は、テクノロジーとイノベーション分野の先駆者であり、株式市場の動向や経済指標に大きな影響を及ぼし、米国株式市場全体のパフォーマンスにも大きく寄与しています。
ちなみに「マグニフィセント・セブン」という呼称は、黒澤明監督の代表作「七人の侍」の舞台を西部開拓時代のメキシコに移して描いたリメイク映画「荒野の七人」の原題が由来です。
1) Google(アルファベット社)
オンライン検索エンジン「 Google」を運営するアルファベット社は、検索エンジン以外にも、デジタル広告、クラウドコンピューティング、人工知能(AI)、自動運転車などを展開しています。特に検索エンジンと広告事業は支配的な地位を占めており、AIや自動運転車などの先進技術への投資も活発です。
ただ、データプライバシーと規制の問題、広告市場での競争激化がリスクとして意識されています。米国やEU当局の規制が今後の事業拡大にブレーキをかけるおそれがあります。
2) Apple
Appleは携帯電話「iPhone」やタブレット端末「iPad」、ノートブックPC「Macbook」など、革新的で高品質な製品を製造・販売する高いブランド力を持ったIT機器大手企業です。
注意点はスマートフォン市場の飽和、競争激化、製品イノベーションの難化です。Appleといえども、革新的な製品をリリースし続けることは容易ではありません。発表された新製品が市場の期待外れだったときは、株価が下落する可能性があります。
3) Facebook(メタ・プラットフォームズ社)
メタ・プラットフォームズは「Facebook」や「Instagram」、「WhatsApp」などのプラットフォームを通じて、世界中の人々のコミュニケーションを支えています。これらのソーシャルネットワーキングサービスを基盤としたデジタル広告を中心とするビジネスモデルにより、高い収益性と利益率を保持しています。
ただ、データのプライバシーと管理に関する規制強化は、SNSを基盤とする広告事業に影響を与える可能性があるので注意が必要です。
4) Amazon
世界最大のオンラインショッピングサイト、クラウドコンピューティング(Amazon Web Services)、デジタルストリーミング、AIなどを展開しています。世界最大のオンライン小売業者であり、クラウドサービス市場でもリーダー的存在です。 注意してほしいのは、eコマースとクラウドサービス市場の競争は激化しており、また、当局の規制や監視が強まっています。また、物流インフラへの大規模な投資や、新事業領域への拡大に伴い、運営コストが増大する可能性があります。これらを潜在的なリスクとして投資しなければなりません。
5) Microsoft
ソフトウェア(「Windows」「Office」)、ハードウェア(Surface)、クラウドコンピューティング(Azure)、ゲーム(Xbox)など、幅広い分野の製品とサービスを展開しています。 Microsoftはソフトウェア市場の「巨人」です。ソフトウェア市場で築いた歴史的な地位を背景に、ビジネス向けサービスの分野、特にクラウドコンピューティングと企業向けソリューションで大きな成長を遂げています。急成長するクラウドサービス(Azure)、ビジネス向けサービスが強みです。 ただし、激しいテクノロジー競争と、新興企業の台頭で業績に大きな影響を受ける可能性があります。
6) Tesla
Tesla(テスラ)は電気自動車(EV)とクリーンエネルギーの分野で先駆者となっている企業です。Teslaが2023年に世界で販売したEV新車台数は、過去最高となる180万8,581台で、前年度に比べて37.6%増です。クリーンエネルギーとサステナブルな輸送手段に対する世界的な関心の高まりが、Teslaの株価を押し上げています。 なお、EVは充電インフラの不足や車両の高価格、バッテリーの寿命、充電時間などが課題となっており、ガソリン車以上に普及するのかといった懸念が残っています。
7)NVIDIA
NVIDIA(エヌビディア)は、グラフィックス処理ユニット(GPU)および関連テクノロジーの開発で知られる米国の半導体企業です。NVIDIAのGPUはゲーム市場のみならず、人工知能、自動運転車、クラウドコンピューティングなどの先進技術分野においても強固な地位を築いています。
ただし、GPU市場はAMDなどの競合他社も強化を図っており、市場シェアの争いが激化している点には注意が必要です。
「マグニフィセント・セブン」は、それぞれがテクノロジー業界の特定分野で支配的な地位を占め、デジタル化が進んだ現代社会や経済において重要な役割を果たしています。CFDで投資の意思決定をする際は、これらの企業の業績分析のみならず、それらの独占的な地位を有する分野を規制・監督する当局の動向にも注意が必要です。
CFDのメリットとリスク
最後にCFDを使った取引のメリットとリスクについて説明しておきます。
1)レバレッジの活用
CFDの最大の特徴はレバレッジを使った取引ができることでしょう。レバレッジを使うと、少ない資金で大きなポジションを取ることができます。これにより、利益機会を大きく増やせますが、同時に損失リスクも増大します。
2)ショートポジションも保有可能
CFDでは資産価格の下落を予測して売り注文を行い、ショート(売り)ポジションが取れるので、実際に価格が下がったときは利益を得ることができます。株価が上昇するときだけでなく、株価が下落するときでも、収益の機会を持つことができます。
3)リスク管理の重要性
CFDは高レバレッジ取引が可能なため、リスク管理が非常に重要です。損失を限定するためのストップロス注文を入れたり、ポートフォリオを多様化したり、市場動向を注意深く監視したりすることが必要です。
米国株投資の戦略とヒント
株価指数や株式投資ではテクニカル分析による投資判断が重要です。さらに株式投資では個別企業のファンダメンタルズ分析にも注意を払い、経済指標、政治的な出来事、業種ごとの最新トレンドなど、さまざまな要因が市場に影響を与えるため、常にアップデートされた情報を手に入れることが必要です。
投資家はこれらの要因を考慮に入れつつ、「買い」からも「売り」からも注文することができ、レバレッジを効かせることができるCFD取引を有効活用し、資産運用をするとよいでしょう。
マネ育Ch編集者イチオシ!初心者からプロの方まで
株式会社タートルズ代表/テクニカルアナリスト
2004年、東京工業大学から一橋大学へ編入学。専門は数理経済学。卒業後、FX会社のシステムトレードプロジェクトのリーダーになり、プラットフォーム開発および自動売買プログラムの開発に従事。その後、金融系ベンチャーの立ち上げに参画。より多くの人に金融のことを知ってほしいと思い金融教育コンテンツの制作に集中するために会社を創業。現在は、ハイリスク・ハイリターンの投資手法ではなく、初心者でも長く続けられるリスクを抑えた投資手法を研究中。